"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
不完全牧場 [探虫行]
8月16日、標本教室のアテンドはサボらせていただき、フィールドワークに出かけました。
ただ、連日の炎暑でボウソウするのはキケンと判断し、チバ近郊をパトロールすることに。
とはいえ、どこを回ろうか、いや新規開拓しようか、色々考えていると目標が定まらず・・
最近トンボづいていたこともあり、あるフィールドのトンボ事情を確認しようということにしました。
といいつつトンボじゃない理由は本編で。
前回訪れたのはいつだったっけと記事を検索してみたら、なんともう4年近く前で愕然としました。
(その時の記事はこちら)
GoogleMapの航空写真で見ると、田んぼでも林でもなく、緑一色の草っぱらにしか見えない場所。
HFからそう遠くないところなのですが、元は谷津田とその灌漑用の貯水池があったのでしょう。
前回は晩秋だったので、夏に来てみたかったのです。
今回は南側からアプローチしていくと、草原へ続く道が二手に分かれました。
車一台分のスペースがあったのでベニシジミ号を降りて身支度を整えました。
周囲を見渡すとすぐ目の前の太い木の幹を下へ歩いていく子を発見。
指でつまんでキイキイという声を聴いて満足。
これは農道というか、元々は畑へ行くための小道を徒歩で突入。
と、足元を何かが横切ろうとしました。
クツで行く手を阻みながらカメラを出し職務質問。
この後、コガシラアオゴミムシも2匹見ましたが、久しぶりのアオゴミ臭に目が覚めました。
クモの網をはらいながら抜けたところはクズジャングルと化した耕作放棄地。
これはカマキリ牧場だろうなと思った先から現れました。
ちゃんと確かめなかったですが、おそらくオオカマキリの終齢幼虫だと思います。
それともう一種。こちらもまだ幼虫。
どちらも多数いましたが、ここで昆虫学基礎の復習。
昆虫の成長パターンはおおむね完全変態と不完全変態に分かれます。
(厳密には過変態や無変態という昆虫もいます)
サナギにならないのが不完全変態で、カマキリやバッタやセミやトンボはその代表。
カマキリの幼虫は最後の脱皮をすると翅が生え揃った成虫になります。
クズには色んな虫がつくので、それらをエサにするカマキリたちも集まるのです。
でも、この子は対象外かな?
アオゴミ臭とはまた違うキョーレツな匂いを発しますからね。
ほどなく行き止まりとなったので藪漕ぎはせずにUターン。
戻る途中もカマキリをたくさん観察しましたが、こんなチョウチョもいました。
よく見るとこの個体は関西型のように後翅に白い帯紋がうっすら出ていました。チバはたまにいます。
それと、なぜか往路では気が付かなかった背中。
ちょうど目の高さの枝にとまっていたのに・・
しかもジャンボな子だったのに・・
胴の長さだけで5センチはあったと思います。
さっきの分岐を左へ進むと杉林の中を通っていきます。
今度はヒグラシ牧場で、木から飛び立ったやつが腕や胸にとまることもありました。
それと、10頭に8~9頭はセミヤドリガに寄生されていることも観察できました。
セミヤドリガについて調べてみたところ、なぜヒグラシに寄生することが多いのかは不明のようです。
たまたま先日の標本教室でアブラゼミについたのがいました。
これはサナギになるためにセミから離脱して、自分の吐いた糸で着地しようとしている幼虫。
わずかな風でゆらゆらと揺れて撮影するのが大変でした。
さらに、これはたまたまでしょうけど、着地したところがセミの抜け殻だったのでしょうか。
このように終齢の幼虫は白い蝋状物質をまとい繭も作るようですが、詳しい生態は分かっていません。
なぜヒグラシに寄生することが多いのか。
なぜこんなに目立つ真っ白な色になるのか。
ナゾだらけの虫ですが、そもそもセミに寄生する昆虫は世界的にみても珍しいそうです。
ついついセミヤドリガが気になって木の幹ばかり見ていたらこんな子もいました。
杉林を抜けると見覚えのある景色が広がりました。
まっすぐ進むと貯水池、向かって左手にはGoogleMapに「◯◯町の谷津」と表示される田んぼ。
まずは谷津の方へ行ってみました。
ここはまだ稲作がされていて、無農薬なのか、一歩進むとわっと飛び出すほどのイナゴ牧場でした。
近寄るとみんな飛んでってしまいますが、たまに鈍感な子がいます。
彼らを狙ってカマキリも繁殖しています。
エサが豊富だからかみんな馬鹿でかかった。
さっきの農道とおぼしき道を歩いていると水路の上で休んでいる子がいました。
そういえば、このフィールド(杉林を抜けてから)はチョウがほとんどいない。
疏水に沿った農道の途中に放置された栗林があり、入ってみましたが、ほとんど何もいませんでした。
ただ、林を占有するようにこの子たちが集団で鳴いていただけ。
貯水池は相変わらず葦が繁茂していましたが、シオカラトンボ以外のトンボの姿はありませんでした。
夏は虫影が濃いのではという期待は外れましたが、特定の種ごとのジャングル化していることが判明。
つまり、表面的には多様性が低いということです。
(先日の双子調整池の場所とは明らかに多様性が違いました)
市内なのにフィールドの面積は広く、森や林や草原や田んぼや調整池があるのに残念です。
カマキリとセミとイナゴそれぞれの牧場のようでした。
ここまで書いてふと気が付いたことがあります。
カマキリもセミもイナゴも、みんな不完全変態じゃないか。
何か関係があるのかしら・・トンボ牧場はなかったけれど・・
この日も炎暑で、長時間のフィールドワークは熱中症リスクが高いため、帰路につきました。
が、ちょっと不満が募ったので、目的地候補ではあったものの却下した場所へ寄り道することに。
大きな運動公園に隣接している市民の森であまり期待はしていなかったのですが。
行ってみると、適度に整備されていて、とても良い雰囲気でした。
おそらくカブト・クワガタ狙いとおぼしき家族連れが何組かいました。
クヌギの木の幹にはトラップも仕掛けられていて、実際カブトムシやノコギリクワガタの姿も。
それはさておき、はじめての地なので、外縁を一周しました。
散策路は狭いものの、歩きやすいように手入れされていて、クモの網もないので人も来ているよう。
虫影は薄かったのですが、ムラサキシジミが群れているポイントがありました。
そして、前述のフィールドにいてほしかったトンボがいてくれました。
これだけでも寄り道した甲斐があったとうれしく思ったのですが、うれしいオマケも見つけました。
カブトムシやクワガタムシがいるところにはこの子たちもいる。
カメラの電池が切れて現場では撮れなかったので、お連れしてからの写真ですが仲の良いカップル。
それとこんな子もいっしょにいました。
ではないかと思います。体長は7~8ミリ。
今日の湯加減
ただ、連日の炎暑でボウソウするのはキケンと判断し、チバ近郊をパトロールすることに。
とはいえ、どこを回ろうか、いや新規開拓しようか、色々考えていると目標が定まらず・・
最近トンボづいていたこともあり、あるフィールドのトンボ事情を確認しようということにしました。
といいつつトンボじゃない理由は本編で。
前回訪れたのはいつだったっけと記事を検索してみたら、なんともう4年近く前で愕然としました。
(その時の記事はこちら)
GoogleMapの航空写真で見ると、田んぼでも林でもなく、緑一色の草っぱらにしか見えない場所。
HFからそう遠くないところなのですが、元は谷津田とその灌漑用の貯水池があったのでしょう。
前回は晩秋だったので、夏に来てみたかったのです。
今回は南側からアプローチしていくと、草原へ続く道が二手に分かれました。
車一台分のスペースがあったのでベニシジミ号を降りて身支度を整えました。
周囲を見渡すとすぐ目の前の太い木の幹を下へ歩いていく子を発見。
ゴマダラカミキリ (カミキリムシ科)
指でつまんでキイキイという声を聴いて満足。
これは農道というか、元々は畑へ行くための小道を徒歩で突入。
と、足元を何かが横切ろうとしました。
クツで行く手を阻みながらカメラを出し職務質問。
スジアオゴミムシ (オサムシ科)
この後、コガシラアオゴミムシも2匹見ましたが、久しぶりのアオゴミ臭に目が覚めました。
クモの網をはらいながら抜けたところはクズジャングルと化した耕作放棄地。
これはカマキリ牧場だろうなと思った先から現れました。
オオカマキリ (カマキリ科)
ちゃんと確かめなかったですが、おそらくオオカマキリの終齢幼虫だと思います。
それともう一種。こちらもまだ幼虫。
ハラビロカマキリ (カマキリ科)
どちらも多数いましたが、ここで昆虫学基礎の復習。
昆虫の成長パターンはおおむね完全変態と不完全変態に分かれます。
(厳密には過変態や無変態という昆虫もいます)
サナギにならないのが不完全変態で、カマキリやバッタやセミやトンボはその代表。
カマキリの幼虫は最後の脱皮をすると翅が生え揃った成虫になります。
クズには色んな虫がつくので、それらをエサにするカマキリたちも集まるのです。
でも、この子は対象外かな?
マルカメムシ (カメムシ科)
アオゴミ臭とはまた違うキョーレツな匂いを発しますからね。
ほどなく行き止まりとなったので藪漕ぎはせずにUターン。
戻る途中もカマキリをたくさん観察しましたが、こんなチョウチョもいました。
ダイミョウセセリ (セセリチョウ科)
よく見るとこの個体は関西型のように後翅に白い帯紋がうっすら出ていました。チバはたまにいます。
それと、なぜか往路では気が付かなかった背中。
ちょうど目の高さの枝にとまっていたのに・・
しかもジャンボな子だったのに・・
胴の長さだけで5センチはあったと思います。
シュレーゲルアオガエル
さっきの分岐を左へ進むと杉林の中を通っていきます。
今度はヒグラシ牧場で、木から飛び立ったやつが腕や胸にとまることもありました。
それと、10頭に8~9頭はセミヤドリガに寄生されていることも観察できました。
ヒグラシ と セミヤドリガ
セミヤドリガについて調べてみたところ、なぜヒグラシに寄生することが多いのかは不明のようです。
たまたま先日の標本教室でアブラゼミについたのがいました。
アブラゼミ と セミヤドリガ
これはサナギになるためにセミから離脱して、自分の吐いた糸で着地しようとしている幼虫。
セミヤドリガ 幼虫
わずかな風でゆらゆらと揺れて撮影するのが大変でした。
さらに、これはたまたまでしょうけど、着地したところがセミの抜け殻だったのでしょうか。
セミヤドリガ 繭
このように終齢の幼虫は白い蝋状物質をまとい繭も作るようですが、詳しい生態は分かっていません。
なぜヒグラシに寄生することが多いのか。
なぜこんなに目立つ真っ白な色になるのか。
ナゾだらけの虫ですが、そもそもセミに寄生する昆虫は世界的にみても珍しいそうです。
ついついセミヤドリガが気になって木の幹ばかり見ていたらこんな子もいました。
コフキコガネ (コガネムシ科)
杉林を抜けると見覚えのある景色が広がりました。
まっすぐ進むと貯水池、向かって左手にはGoogleMapに「◯◯町の谷津」と表示される田んぼ。
まずは谷津の方へ行ってみました。
ここはまだ稲作がされていて、無農薬なのか、一歩進むとわっと飛び出すほどのイナゴ牧場でした。
ハネナガイナゴ (バッタ科)
近寄るとみんな飛んでってしまいますが、たまに鈍感な子がいます。
同上
彼らを狙ってカマキリも繁殖しています。
オオカマキリ (カマキリ科)
エサが豊富だからかみんな馬鹿でかかった。
同上
さっきの農道とおぼしき道を歩いていると水路の上で休んでいる子がいました。
キタテハ (タテハチョウ科)
そういえば、このフィールド(杉林を抜けてから)はチョウがほとんどいない。
疏水に沿った農道の途中に放置された栗林があり、入ってみましたが、ほとんど何もいませんでした。
ただ、林を占有するようにこの子たちが集団で鳴いていただけ。
ツクツクボウシ (セミ科)
貯水池は相変わらず葦が繁茂していましたが、シオカラトンボ以外のトンボの姿はありませんでした。
夏は虫影が濃いのではという期待は外れましたが、特定の種ごとのジャングル化していることが判明。
つまり、表面的には多様性が低いということです。
(先日の双子調整池の場所とは明らかに多様性が違いました)
市内なのにフィールドの面積は広く、森や林や草原や田んぼや調整池があるのに残念です。
カマキリとセミとイナゴそれぞれの牧場のようでした。
ここまで書いてふと気が付いたことがあります。
カマキリもセミもイナゴも、みんな不完全変態じゃないか。
何か関係があるのかしら・・トンボ牧場はなかったけれど・・
オマケ
この日も炎暑で、長時間のフィールドワークは熱中症リスクが高いため、帰路につきました。
が、ちょっと不満が募ったので、目的地候補ではあったものの却下した場所へ寄り道することに。
大きな運動公園に隣接している市民の森であまり期待はしていなかったのですが。
行ってみると、適度に整備されていて、とても良い雰囲気でした。
◯◯◯の森
おそらくカブト・クワガタ狙いとおぼしき家族連れが何組かいました。
クヌギの木の幹にはトラップも仕掛けられていて、実際カブトムシやノコギリクワガタの姿も。
それはさておき、はじめての地なので、外縁を一周しました。
散策路は狭いものの、歩きやすいように手入れされていて、クモの網もないので人も来ているよう。
虫影は薄かったのですが、ムラサキシジミが群れているポイントがありました。
そして、前述のフィールドにいてほしかったトンボがいてくれました。
オオアオイトトンボ (アオイトトンボ科)
これだけでも寄り道した甲斐があったとうれしく思ったのですが、うれしいオマケも見つけました。
カブトムシやクワガタムシがいるところにはこの子たちもいる。
カメラの電池が切れて現場では撮れなかったので、お連れしてからの写真ですが仲の良いカップル。
ヨツボシケシキスイ (ケシキスイ科)
それとこんな子もいっしょにいました。
アカマダラケシキスイ (ケシキスイ科)
ではないかと思います。体長は7~8ミリ。
今日の湯加減
ミンミンゼミの声が弱々しくなり、ツクツクボウシの声が主旋律になりはじめました。
日が暮れるとコオロギやカネタタキのセレナーデが奏でられるようになりました。
虫たちは秋が来たよと言っています。日も短くなったし。
しかし、一体何でしょうか、この日中の猛暑、いや炎暑は。
いや、もとい、朝8時で30度とはどういうことでしょうか。
今日は早起きしてボウソウしてきましたが、純情熱風セレナーデ♪でした。
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
湯加減 いいですねぇ!
それにしてもアブラゼミとセミヤドリガ幼虫の標本にはビックリしました。幼虫もそのまま標本にできるのですね!
by hirokou (2020-08-29 21:37)
キタテハさん、いいですね。
昔は空き地の常連さんでしたが、、、空き地もカナムグラも喪われ、お姿をお見かけしなくなりました。お元気そうでなによりです。秋型は翅形の切れ込みが深くなり、一段とカッコよくなりますね。
by 高和です。 (2020-08-30 03:26)
アオガエル可愛い!
なかなか見れないです。
大好きな鳴き声のヒグラシさんは
やっかいな蛾に好かれてるのですね。
by 響 (2020-09-01 13:49)
アオガエルしばし見惚れていました
ヒグラシにツクツクホーシ、、夏の終わりの合唱
街中では、すっかりご無沙汰に
カマキリを見つけただけで、嬉しくなっちゃうのですもの、、でもセレナーデは、どこからともなく聞こえてきます、心安らぐひと時になります
by engrid (2020-09-01 18:05)
>hirokouさん
熱風世代ですね♪^^
セミヤドリガの幼虫はピンで固定しなかったので・・
どうなるかが逆に楽しみですね。
>高和です。さん
たしかにカナムグラが少なくなりましたね・・
おなじく、シックな秋型がすきです^^
>響さん
シュレーゲルアオガエルは冬にも出会うので顔なじみですね^^
ヒグラシはセミヤドリガのお得意さんというところです。
なぜかはナゾですが^^;
>engridさん
背中が何か物語っていましたが、くわしくは分かりませんでした^^
秋はバッタの季節、そしてそれを狙うカマキリの季節ですね。
でも自然がある限りセレナーデが途切れることはありません。
by ぜふ (2020-09-01 20:26)
何かの草の実かと思ったらカエルの背中でした。
ナゼこんな細い茎にしがみついているのでしょう^^;。
セミに寄生虫なんているんですね。
最初、セミヤドカリと、間違って読んでました^^;。
by sakamono (2020-09-03 21:16)
>sakamonoさん
もっと安定できる場所がいくらでもあるだろうに・・ですよね^^
セミヤドカリという生き物、いそうですね♪
by ぜふ (2020-09-03 22:48)