"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
自然の驚異と余裕 [自然]
やっと夏が過ぎたと思ったら、モンスター台風"HAGIBIS"が近づいています。
10月12日、チバも午前中に避難勧告が出てしまいました。
そんなときに悠長に記事をあげるのもどうかと思いましたが、自宅に閉じこもって書いています。
この時期になるとチバでもよく目立つチョウ。
以前の記事で” ボタニカルなラテアートを翅に施した小灰蝶(シジミチョウ) ”と書きました。
このシジミちゃん、元々は南の国の子ですが、夏前から列島を北上していきます。
アサギマダラも旅をすることで有名ですが、アサギマダラは秋になると南下していきます。
それに比べてラテシジミちゃんは片道キップなのです。
ラテシジミは寒冷地では越冬できません。(房総辺りが北限のようです)
なのに片道切符を握りしめて、東北地方まで、中には北海道まで渡ってしまうのもいるのです。
それらはみな冬になると死に絶えます。
産んだ卵、運よく孵化した幼虫も低温に耐えられないため越冬できません。
北上した個体は死に絶えてしまうのに、毎年彼ら(の中の一部)はこの生態を繰り返します。
すなわち、北上個体は不適合であるはずなのになぜ自然淘汰されないのか。
ということで、ダーウィンの自然選択(自然淘汰)説に対する一つの反証例とされています。
生存していく上で常に最適なものが生き残るわけではないという反証もあるそうです。
「環境に適応しているというのは、われわれが進化の結果をみて、そういっているのであって、それだから生物は、はじめから環境に適応していた、ということにはかならずしもならないであろう。あるいは、はじめから環境に適応しているのなら、なにも進化などしなくてもよいではないか、といえるかもしれない。」(『進化とはなにか』今西錦司 1976)
前段を省略しているので分かりづらいと思いますが、進化は生物主導なのか環境主導なのかということ。
「私は、生物は進化の結果として、環境に適応しているようにみえるけれども、進化はかならずしも適応とは結びつかない。とくに大進化の問題になると、そのきっかけは、生物の側からの要請とも、環境側からの要請とも、無関係なところに起因しているのではないか、とうことを指摘しているのである。」(同)
”大進化と”はコウモリの翼とかキリンの首とかカマキリの鎌などのこと。
ダーウィンが淘汰進化論だとすると、今西先生は非淘汰進化論で、定向進化論に近いとのこと。
今西先生に同意します。
定向進化をもっと浅はかに言うと、こうと決めたらその進化は止まらないのではないかということ。
コウモリは前脚が翼になってしまったから空中生活をしなくてはならなくなったということ。
キリンはキリン、カマキリはカマキリになるしかなかったのかもしれません。
さて、最近何かで読んだのにもう出所を忘れてしまいましたが、次に共生について。
自然には余裕というものがあるというお話。
虫媒花と授粉昆虫は相利共生関係にあることは明らかですが、虫媒花でなくても蜜を出す花はある。
たとえば今が見ごろのヒガンバナ。(近くの公園にて)
ヒガンバナには実が生りません。(球根が分かれることで殖えます)
だから授粉は不要なのに花には蜜があり、アゲハたちのお気に入りの吸蜜源となっています。
花を咲かせて蜜を出すという、相当なコストを払う理由は何なのでしょうか。
チョウたちへの奉仕、自然の持つ余裕ということではないかという主旨のお話でした。
白いのはコヒガンバナとショウキズイセンの交雑種と言われています。
ちなみにヒガンバナは三倍体なので不稔ですが、コヒガンバナは二倍体なので稔性があります。
中国からの移入種なので元が一株だとしたら、日本のヒガンバナはすべてクローンかも。
最近まったくといっていいほどフィールドワークに出ることができないので近所の散歩フォトを。
実はカブリモドキたちのエサ用のカタツムリを探しにきたのですが、このときも全くみつからず。
先日も書きましたが、やはりチバというかマイフィールドでは異常にカタツムリが少ない気がします。
みなさんの周りはどうですか?
ゲンちゃんズからどアップ写真を。
体長は10ミリ弱。ちっちゃいけど吸盤のような前脚と後脚の太腿がかわゆい。
今日の湯加減
10月12日、チバも午前中に避難勧告が出てしまいました。
そんなときに悠長に記事をあげるのもどうかと思いましたが、自宅に閉じこもって書いています。
この時期になるとチバでもよく目立つチョウ。
ウラナミシジミ (シジミチョウ科)
以前の記事で” ボタニカルなラテアートを翅に施した小灰蝶(シジミチョウ) ”と書きました。
このシジミちゃん、元々は南の国の子ですが、夏前から列島を北上していきます。
アサギマダラも旅をすることで有名ですが、アサギマダラは秋になると南下していきます。
それに比べてラテシジミちゃんは片道キップなのです。
ラテシジミは寒冷地では越冬できません。(房総辺りが北限のようです)
なのに片道切符を握りしめて、東北地方まで、中には北海道まで渡ってしまうのもいるのです。
それらはみな冬になると死に絶えます。
産んだ卵、運よく孵化した幼虫も低温に耐えられないため越冬できません。
北上した個体は死に絶えてしまうのに、毎年彼ら(の中の一部)はこの生態を繰り返します。
すなわち、北上個体は不適合であるはずなのになぜ自然淘汰されないのか。
ということで、ダーウィンの自然選択(自然淘汰)説に対する一つの反証例とされています。
生存していく上で常に最適なものが生き残るわけではないという反証もあるそうです。
「環境に適応しているというのは、われわれが進化の結果をみて、そういっているのであって、それだから生物は、はじめから環境に適応していた、ということにはかならずしもならないであろう。あるいは、はじめから環境に適応しているのなら、なにも進化などしなくてもよいではないか、といえるかもしれない。」(『進化とはなにか』今西錦司 1976)
前段を省略しているので分かりづらいと思いますが、進化は生物主導なのか環境主導なのかということ。
「私は、生物は進化の結果として、環境に適応しているようにみえるけれども、進化はかならずしも適応とは結びつかない。とくに大進化の問題になると、そのきっかけは、生物の側からの要請とも、環境側からの要請とも、無関係なところに起因しているのではないか、とうことを指摘しているのである。」(同)
”大進化と”はコウモリの翼とかキリンの首とかカマキリの鎌などのこと。
ダーウィンが淘汰進化論だとすると、今西先生は非淘汰進化論で、定向進化論に近いとのこと。
今西先生に同意します。
定向進化をもっと浅はかに言うと、こうと決めたらその進化は止まらないのではないかということ。
コウモリは前脚が翼になってしまったから空中生活をしなくてはならなくなったということ。
キリンはキリン、カマキリはカマキリになるしかなかったのかもしれません。
さて、最近何かで読んだのにもう出所を忘れてしまいましたが、次に共生について。
自然には余裕というものがあるというお話。
虫媒花と授粉昆虫は相利共生関係にあることは明らかですが、虫媒花でなくても蜜を出す花はある。
たとえば今が見ごろのヒガンバナ。(近くの公園にて)
クロアゲハ (アゲハチョウ科)
ヒガンバナには実が生りません。(球根が分かれることで殖えます)
だから授粉は不要なのに花には蜜があり、アゲハたちのお気に入りの吸蜜源となっています。
花を咲かせて蜜を出すという、相当なコストを払う理由は何なのでしょうか。
チョウたちへの奉仕、自然の持つ余裕ということではないかという主旨のお話でした。
白いのはコヒガンバナとショウキズイセンの交雑種と言われています。
シロバナマンジュシャゲ
ちなみにヒガンバナは三倍体なので不稔ですが、コヒガンバナは二倍体なので稔性があります。
中国からの移入種なので元が一株だとしたら、日本のヒガンバナはすべてクローンかも。
最近まったくといっていいほどフィールドワークに出ることができないので近所の散歩フォトを。
トノサマバッタ (バッタ科)
実はカブリモドキたちのエサ用のカタツムリを探しにきたのですが、このときも全くみつからず。
ヒメクダマキモドキ (ツユムシ科)
先日も書きましたが、やはりチバというかマイフィールドでは異常にカタツムリが少ない気がします。
みなさんの周りはどうですか?
オマケ
ゲンちゃんズからどアップ写真を。
コシマゲンゴロウ(ゲンゴロウ科)
体長は10ミリ弱。ちっちゃいけど吸盤のような前脚と後脚の太腿がかわゆい。
今日の湯加減
台風接近のため家に閉じこもっています。
関東各地に特別警戒警報が発令されました。1都6県に大雨特別警報も。
自宅エリアも午前中に避難準備指示が出ましたが、近くに大きな川や崖などはありません。
幸い指定避難場所は目と鼻の先なので、当面じっと自宅内避難ということにしています。
それにしてもとてつもない台風のようです。ゴジラの来襲が現実になったような気が・・
どうかみなさんご無事でありますように。そして虫たちも。
参考文献: 池田清彦著 『さよならダーウィニズム』
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
自然淘汰説に対する一つの反証、という話おもしろかったです。
自然の持つ余裕、という考え方も。
定向進化論という言葉、初めて耳にしました。
そうなるしかなかった、って妙に説得力があるような^^;。
by sakamono (2019-10-18 00:10)
興味深いお話、、
あさはかに言うと、、なるほど、でも深淵がありますね
余裕、、ふむふむと読みました、実利主義ではね、、と。
by engrid (2019-10-18 18:10)
なんと吸盤になってるなんて知りませんでした。
これはビックリ。
アサギマダラの南下は九州をちょうど通過してる時ですね。
by 響 (2019-10-19 09:36)
>sakamonoさん
ひょっとしたらウラナミシジミも自然の余裕によって命を繋いでいるのかもしれませんね。
自然淘汰説では説明できないことは色々ありますね。
>engridさん
急には羽は生えないけれど、行きつ戻りつではいつまでも形質獲得できないかもしれません。
利害だけでは説明できないことが確かにあります。
>響さん
正確に言うと細かい毛が生えているということでしょうけど・・
エトランゼたちを見かけたらよろしくお伝えください♪
by ぜふ (2019-10-19 13:20)
彼岸花のおはなし面白いです。
余裕か〜
わたしも余裕をもって暮らしたいものです。
えっとですね、FBのメッセージ送りました。
宜しくお願いします。
by リュカ (2019-10-24 07:58)