"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
ラテアート小灰 [蝶]
久しぶりにチョウチョの記事です。
先日、佐倉方面に偵察に行ったとき、あまりに地味で、飛んでいると蛾と間違われそうな目立たない蝶ですが、
偵察している虫屋にしてみると、観察する個体数が多いという意味でとても目に付いたのでした。
名前の由来はわかりやすいですね。
見ての通り、裏翅に波型の模様があるからですが、あまりに素気なく気の毒なので別の表現をと考えると、
” ボタニカルなラテアートを翅に施した小灰蝶(シジミチョウ) ”
とも言えるのではないでしょうか。
実はこのチョウ、ダーウィンの進化論の反証材料として有名な子なのです。
はなはだ即席的ではありますが、まずは進化論について。
現在の進化論は”ネオダーウィニズム”または”総合説”などと呼ばれていて、ダーウィンの進化論を基礎とはしつつも少し違うのだそうです。
ネオダーウィニズムとは、ダーウィンの自然選択説とメンデルの遺伝の法則を融合してできた学説で、その基本的な考え方は(乱暴に言うと)、
「進化とは、偶然起こる遺伝子の突然変異が自然選択され、その種の中で徐々に定着する」
(適合しなかったものは自然淘汰される)
ということですが、この説はすでに(なんとなく)一般に浸透していると思います。
この中の”自然選択説”の反証例のひとつがウラナミシジミの生態なのです。
このチョウは元々南方系のようで、寒冷地では越冬できません。温暖化とはいえ房総辺りが北限のようです。
ちょうど今頃、関東近辺でよく見られると思いますが、これから彼らは食草であるマメ科の植物を求めてさらに北上します。(すべてではありません)
東北地方まで、中には北海道まで渡ってしまうのもいるそうですが、それらはみな冬になると死に絶えます。
産んだ卵、運よく孵化した幼虫も低温に耐えられないため越冬できないのです。
北上した個体は死に絶えてしまうのに、毎年彼ら(の中の一部)はこの生態を繰り返します。
すなわち、北上個体は不適合であるはずなのになぜ自然淘汰されないのか。
というのが反証なわけで、このような生態は自然選択説に合致しないということです。
自然選択説に従えば、寒冷地に移動する個体は淘汰されるはずということです。
生存していく上で常に最適なものが生き残るわけではないという反証もあるそうです。
つまり、生き物の生態というのは、常に合理的というわけではないし、人知の及ばないことも数多あるということかと。
そう、最適でないものは必ず淘汰される・・というわけではない。ニンゲン社会にも当てはまるような気がします。
ということで、
みなさんも身近でラテシジミをみつけたら、無理して北上しなくていいんだよ と声をかけてあげてください。
この子は反証材料ではありませんが、同じくこの時期になると目立ち始めます。
(アゲハやタテハがいなくなるから相対的に目立つということもあるかも)
バッタ採集会を開催した河川敷でもたくさん観察できました。
オスの表翅はまさしく秋の青空。ライト・スカイ・ブルー。
メスは正反対に暗い落ち葉色。フォールド・リーフ・ブラウン。
この子たちはカタバミに卵を産みます。
以下も先日のバッタ採集会で観察したチョウたち。
ヒメアカタテハとアキアカネのツーショット。
この子は秋型。
しつこく追っかけて顔も撮りました。
次はテントウムシ。
日の丸がふたつ。
これはナナホシテントウの赤黒が反転したようなというか亀甲模様というか。
この子はイチゴ模様?
実はこの3匹は同一種。ナミテントウといいます。
このように翅の模様に個体変異があって、もっともっと様々なパターンがみられます。
これらもそれぞれが突然変異であり、これから淘汰・収れんしていくのでしょうか。
斑紋がちょっと違うだけで別種の虫もいれば、模様の大きさも数もまるで違うのに同一種もいる。
やはり生態や形態はまだまだ人知の及ばない部分が多いと言わざるを得ないですね。
採集会終了後、原っぱでおにぎり食べていたら、トートバッグにとまった子。
幼虫かもしれませんが、3~4ミリしかありません。
形はセミに似ていますが、カメムシと近縁種。(セミもカメムシの仲間ですが)
今日の湯加減
先日、佐倉方面に偵察に行ったとき、あまりに地味で、飛んでいると蛾と間違われそうな目立たない蝶ですが、
偵察している虫屋にしてみると、観察する個体数が多いという意味でとても目に付いたのでした。
ウラナミシジミ (シジミチョウ科)
名前の由来はわかりやすいですね。
見ての通り、裏翅に波型の模様があるからですが、あまりに素気なく気の毒なので別の表現をと考えると、
” ボタニカルなラテアートを翅に施した小灰蝶(シジミチョウ) ”
とも言えるのではないでしょうか。
実はこのチョウ、ダーウィンの進化論の反証材料として有名な子なのです。
はなはだ即席的ではありますが、まずは進化論について。
現在の進化論は”ネオダーウィニズム”または”総合説”などと呼ばれていて、ダーウィンの進化論を基礎とはしつつも少し違うのだそうです。
ネオダーウィニズムとは、ダーウィンの自然選択説とメンデルの遺伝の法則を融合してできた学説で、その基本的な考え方は(乱暴に言うと)、
「進化とは、偶然起こる遺伝子の突然変異が自然選択され、その種の中で徐々に定着する」
(適合しなかったものは自然淘汰される)
ということですが、この説はすでに(なんとなく)一般に浸透していると思います。
この中の”自然選択説”の反証例のひとつがウラナミシジミの生態なのです。
このチョウは元々南方系のようで、寒冷地では越冬できません。温暖化とはいえ房総辺りが北限のようです。
ウラナミシジミ ♂
ちょうど今頃、関東近辺でよく見られると思いますが、これから彼らは食草であるマメ科の植物を求めてさらに北上します。(すべてではありません)
東北地方まで、中には北海道まで渡ってしまうのもいるそうですが、それらはみな冬になると死に絶えます。
産んだ卵、運よく孵化した幼虫も低温に耐えられないため越冬できないのです。
北上した個体は死に絶えてしまうのに、毎年彼ら(の中の一部)はこの生態を繰り返します。
すなわち、北上個体は不適合であるはずなのになぜ自然淘汰されないのか。
というのが反証なわけで、このような生態は自然選択説に合致しないということです。
自然選択説に従えば、寒冷地に移動する個体は淘汰されるはずということです。
生存していく上で常に最適なものが生き残るわけではないという反証もあるそうです。
ウラナミシジミ ♀
つまり、生き物の生態というのは、常に合理的というわけではないし、人知の及ばないことも数多あるということかと。
そう、最適でないものは必ず淘汰される・・というわけではない。ニンゲン社会にも当てはまるような気がします。
ということで、
みなさんも身近でラテシジミをみつけたら、無理して北上しなくていいんだよ と声をかけてあげてください。
この子は反証材料ではありませんが、同じくこの時期になると目立ち始めます。
(アゲハやタテハがいなくなるから相対的に目立つということもあるかも)
ヤマトシジミ (シジミチョウ科)
バッタ採集会を開催した河川敷でもたくさん観察できました。
オスの表翅はまさしく秋の青空。ライト・スカイ・ブルー。
ヤマトシジミ ♂ (シジミチョウ科)
メスは正反対に暗い落ち葉色。フォールド・リーフ・ブラウン。
ヤマトシジミ ♀ (シジミチョウ科)
この子たちはカタバミに卵を産みます。
以下も先日のバッタ採集会で観察したチョウたち。
ヒメアカタテハとアキアカネのツーショット。
ヒメアカタテハ (タテハチョウ科)
この子は秋型。
キタテハ (タテハチョウ科)
しつこく追っかけて顔も撮りました。
次はテントウムシ。
日の丸がふたつ。
これはナナホシテントウの赤黒が反転したようなというか亀甲模様というか。
この子はイチゴ模様?
実はこの3匹は同一種。ナミテントウといいます。
このように翅の模様に個体変異があって、もっともっと様々なパターンがみられます。
これらもそれぞれが突然変異であり、これから淘汰・収れんしていくのでしょうか。
斑紋がちょっと違うだけで別種の虫もいれば、模様の大きさも数もまるで違うのに同一種もいる。
やはり生態や形態はまだまだ人知の及ばない部分が多いと言わざるを得ないですね。
オマケ
採集会終了後、原っぱでおにぎり食べていたら、トートバッグにとまった子。
アワフキの仲間
幼虫かもしれませんが、3~4ミリしかありません。
形はセミに似ていますが、カメムシと近縁種。(セミもカメムシの仲間ですが)
今日の湯加減
今日は特に用事があったわけではないですが、ファーブル館に来ています。
展示している生き虫たち、ハンミョウに水とエサをやり、ゲンゴロウにエサをやり。
カブトムシの幼虫たちの様子を見て、外国産のクワガタムシたちのゼリーを交換し・・・
用事は色々ありますね。
秋の夜長、家に帰ったらまた虫たちの世話をしなければ。
ただその前に先生たちと寄り道するかな・・
参考文献: 池田清彦著 「さよならダーウィニズム」
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
私も淘汰されずに隅っこで生きのびてる人種かも(笑)
ヤマトシジミのブルー美しいですね♪
by shino* (2016-10-22 20:53)
とても興味深く読まさせていただきました
淘汰されない、合理的でない、だから面白いそう思います
ナミテントウの個体変異、だから楽しい、、
人知なんて、小さくて狭いものにすぎないものなんですね
by engrid (2016-10-23 00:19)
おはようございます^^
ダーウィンの節が必ずしもすべてではないと言う話は、以前夫がテレビか本で見たのかわたくしの話をしていたことがあります。
ぜふさんにそういう説明をしていただくと分かりやすいですね。
by mimimomo (2016-10-23 06:42)
先日八千穂高原で会ったウラナミシジミちゃんたちは越冬できないのですね・・・
「無理しないでね」声をかけてあげたいと思います^^
by よしころん (2016-10-23 07:23)
ウラナミシジミのお話を聞くと切なくなりますね。
こちらで見かけたとしたら、それは冬越えられないけど、頑張って北上してきた子と言うことなのですね。
by sasasa (2016-10-23 15:21)
シジミ類当地でも見られると思いますが越冬できないのですか
何時も撮らしてくれない蝶ばかりです、と言うのもじっくり待っていられません・・・
ナミテントウ、気をつけて見ていないので気づきませんでした。
by g_g (2016-10-23 19:49)
こんばんは。
小さいシジミチョウのファンです。ヤマトシジミは以前はよく見かけました。以前はルリシジミもいたんですが・・・いろいろな蝶、テントウムシにも会えましたね。シジミチョウは冬を越せないんですね。
by yakko (2016-10-23 20:40)
ナミテントウの反転色はなかなか
見ないです。
ナナホシより赤が鮮やかですよね。
by 響 (2016-10-24 00:24)
>shino*さん
たくましくいきましょう!^^
ヤマトシジミは身近な美麗種です♪
>engridさん
合理的とはしょせんニンゲンの考えに合致するということですから、人知の及ばぬことはすべて非合理ですよね。
昆虫の生態はわからないことだらけですし、だからおもしろい^^
>mimimomoさん
ダーウィンの進化論は画期的でしたが、そのときすでにファーブルは一部異を唱えていたようです。
逆にダーウィンもファーブルに一目置いていたそうで、交流があったようですよ。
>よしころんさん
そうなんです。今頃下山してくれていればいいですね^^;
近所の子にも声をかけてあげてください♪
>sasasaさん
ご存知でしたか。
決して本人はがんばっているつもりはないと思いますが・・^^;
>g_gさん
シジミチョウの中ではこの子だけです。
ナミテントウもそうですがいろんな花にくると思うのでぜひ観察してください。
>yakkoさん
シジミチョウすべてが越冬できないわけではありません。
ルリシジミはそろそろ姿を消すと思いますが、ウラナミは11月でも見られると思います。
>響さん
トホシテントウの色違いにも見えますね^^
黒い部分が多いのでコントラストが強く感じられるのかもしれません。
by ぜふ (2016-10-24 21:53)
ラテアートという記事タイトルが、こんなふうにつながるとは、思いも
よりませんでした。
「常に合理的というわけではないし」
「最適でないものは必ず淘汰される・・というわけでもない」
う~ん、深いです^^;。
by sakamono (2016-10-27 21:56)
>sakamonoさん
ウラナミシジミの生態はどこか惹かれるものがあります。
本題がやや堅苦しかったので記事タイトルはやわらかくしました^^
by ぜふ (2016-10-29 11:07)