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エゾオサ遠征 2023 Day0-1 [探虫行]
エゾ遠征から帰ってきました。
6日間があっという間に過ぎてしまいましたが、濃厚で思い出深い探虫行。
とても一気には書けないので何回かに分けて掲載します。
これは湿原の中の長い砂利道。
虫以外にも意外な出会いが多くありました。
4月29日、西から迫る低気圧から逃げるように、夕方の便で千歳空港へ。
離陸時にかなり揺れると覚悟していたのに、拍子抜けするように快適でした。
空港からJRに乗り千歳駅に降り立つと、日中は雨が降っていたようで道路が濡れていて寒い。
今年は全国的に早かったとはいえ、エゾはまだ桜が咲いていて早春という印象もありました。
初日は千歳駅前のホテルで他のメンバーと集合し、食事をしながらブリーフィングして泊まるだけ。
ちなみに今回のチーム名は後日、TNS(チーム・ニュー・サトウ)に決まりました。
翌30日、空港近くのレンタカー屋さんで車を借りて、いざ出発。
苫小牧方面へ向かうのですが、小雨が降っていて気温は10℃くらいと肌寒い。
しかし、1時間足らずで目的地の湿原に到着すると、現地の雨は上がっていました。
さて、今回の本命虫はタイトルのとおりエゾオサですが、その中でもオオルリオサムシが狙い。
その採集ポイント(トラップの設置場所)へと、この水路に沿って林の中を進んでいきます。
林内にはシカ糞があちこちに落ちていて、ひっくり返していきたくなりますがガマンガマン。
30分ほど歩くと芦原に出ましたが、その外縁には意外にも砂利道が通っていて見晴らしがよい。
遠くの丘の上にはシカの群れ。
丘の方の様子を見に行こうと、砂利道を歩いていってみると、意外にも道は水路で分断されていた。
かなり深くてダンプやトラックは通行できなさそうでした。
他のメンバーは芦原の中にトラップを仕掛けましたが、へそ曲がりなのでこの砂利道の脇を選択。
その後周辺を歩いてみたらシラカバ林があったのでそちらにも仕掛けてみました。
車へと戻る途中、倒木などの朽木崩しをしていくメンバーたち。
オサホリは想定外だったのでバチツルがないため、クマデでシカ糞をひっくり返しながら歩きました。
朽ちた切り株を掘っていたら運よくエゾオサを掘り当てました。
本命ではありませんが予想外の、今回の旅で初めて出会った北海道特産オサムシ。
まだ目覚める前だったようで集団越冬態でした。
新鮮なシカ糞の下からはこの子が。
もっとも馴染み深い虫ではありますが、エゾ産は鞘翅のグリーンが強くて美しい。
車まで辿り着くと、Tさんが近くに腰を下ろして収穫物の整理をしていました。
何か採ったなと、近寄っていたら偶然道の上を歩いていたのが扉の写真のセンチコガネでした。
さて成果は何なのか見せてもらうと、なんと朽木崩しでこんなのを出してた。
いわゆるエゾマイマイですが前胸が赤いタイプで美しい。これも本命ではないけどちょっと悔しい。
と、Tさんの目の前の地面に、じっと休んでいる虫を見つけました。
道路の両側に広がる林でマイマイが採れるかもしれないと、みんなでトラップを追加することに。
全員設置し終わり、再集合したら移動開始。
次に向かったのは苫小牧の隣の厚真町。
実は厚真はオプションで、採集場所は未定だったため、ポイント探しからしなくてはならない。
しかしエゾの大地は広いし、森や林や丘や草原など選択肢が多すぎる。
でも厳密に調べる時間はないので丘陵地に向かう道を辿り、現場合わせで場所を選び、車を停めました。
周辺を探索したり写真を撮ったりしているヒマもなく、さっさとトラップを仕掛けて再出発。
無料の日高自動車道に乗って日高町の終点まで南下していき、R235で新冠へ。
途中、いくつも牧場がつながり広がっていますが、横目で見るだけ。
日高地方は新冠川に沿って”サラブレッド銀座”なる通りがあるほど競走馬の産地。
牧場の中も走っていきますが、探すのは名馬ではなく名虫。
新冠川からは丘陵地へ上がる道が見当たらなかったので、少し西へ戻ってアプローチを探しました。
GoogleMapで見ると、いくつかの牧場を抜けた先に林道があることが判明。
突入してみると未舗装路が延々と続き、水たまりの泥水を跳ね上げながら進むプチアドベンチャー。
森林伐採をしているようで、平らに均された土場もあり、その奥の沢沿いの少し開けた所に停車。
もう夕方4時を過ぎていたこともあり、気温も下がってきて陽射しがほとんどない。
陽射しはないけれど、春の草花は暖かい。
東北北部にも分布するようですが、水辺や湿地に咲くスプリング・エフェメラル。
これも湿地に春咲くようです。
緑色の外花披片が透けて見えるのが面白い。
ちなみに北大の校章はこの花がモチーフなのだそう。
エゾの花はどれも大きく咲くようですが、丘の斜面にトラップを仕掛けていると、可憐な春の花も。
ところで林や森に入るときは、ホイッスルを鳴らしたり大声を出したりしながら歩きます。
そう、エゾでの探虫の最大リスクはクマに遭遇すること。
もう夕刻、つまりクマちゃんアワーであれば猶のことキケン度が高まるので、ゆっくり花見はできません。
仕掛け終わって、同じ斜面に仕掛けていたHくんと合流すると、手の中に想定外の獲物が。
これも馴染み深い虫ですが羨ましかった。歩いているのを見つけたというからなおさら。
見る角度によってグリーンからピンクにグラデーションする個体。
オオセンチ図説では道東はグリーンで、道央(空知、広尾)はピンクにグラデーションする個体が掲載。
日高地方も道央の一部ですが、襟裳は函館とほぼ同緯度なので道南と気候が似ているかと思いきや。
今回の旅で体感したのは、襟裳や浦河は緯度の割に気温が低く、最高気温が稚内と変わらないということ。
ちなみに天気予報では日高地方や十勝地方南部は”道央”ではなく”太平洋側”と呼んでいました。
仕掛け終わった頃には気温が下がり陽も暮れてきたので、探虫第一日目は試合終了。
今回のベースキャンプの宿へと向かいました。
チーム名TNSはこのホテル名に由来しています。
晩御飯を食べに行った、地元民と思しき客で混雑していたレストランの本シシャモがおいしかった。
第二日目以降はまた次回。
これも想定外でしたが、この旅でオオセンチも採れたので、ついに飼育実験を開始できました。
オオセンチタワー(ミニ)の中の様子です。
がんばってほしい、エゾオオセンチ。
もう一つ、遠征の前日にHFで見つけたテントウムシ。
普通種で街中でも観察することがあるようですが、久しぶりに見たので記録として。
今日の湯加減
6日間があっという間に過ぎてしまいましたが、濃厚で思い出深い探虫行。
とても一気には書けないので何回かに分けて掲載します。
これは湿原の中の長い砂利道。
虫以外にも意外な出会いが多くありました。
4月29日、西から迫る低気圧から逃げるように、夕方の便で千歳空港へ。
離陸時にかなり揺れると覚悟していたのに、拍子抜けするように快適でした。
空港からJRに乗り千歳駅に降り立つと、日中は雨が降っていたようで道路が濡れていて寒い。
今年は全国的に早かったとはいえ、エゾはまだ桜が咲いていて早春という印象もありました。
初日は千歳駅前のホテルで他のメンバーと集合し、食事をしながらブリーフィングして泊まるだけ。
ちなみに今回のチーム名は後日、TNS(チーム・ニュー・サトウ)に決まりました。
翌30日、空港近くのレンタカー屋さんで車を借りて、いざ出発。
苫小牧方面へ向かうのですが、小雨が降っていて気温は10℃くらいと肌寒い。
しかし、1時間足らずで目的地の湿原に到着すると、現地の雨は上がっていました。
さて、今回の本命虫はタイトルのとおりエゾオサですが、その中でもオオルリオサムシが狙い。
その採集ポイント(トラップの設置場所)へと、この水路に沿って林の中を進んでいきます。
林内にはシカ糞があちこちに落ちていて、ひっくり返していきたくなりますがガマンガマン。
30分ほど歩くと芦原に出ましたが、その外縁には意外にも砂利道が通っていて見晴らしがよい。
遠くの丘の上にはシカの群れ。
丘の方の様子を見に行こうと、砂利道を歩いていってみると、意外にも道は水路で分断されていた。
かなり深くてダンプやトラックは通行できなさそうでした。
他のメンバーは芦原の中にトラップを仕掛けましたが、へそ曲がりなのでこの砂利道の脇を選択。
その後周辺を歩いてみたらシラカバ林があったのでそちらにも仕掛けてみました。
車へと戻る途中、倒木などの朽木崩しをしていくメンバーたち。
オサホリは想定外だったのでバチツルがないため、クマデでシカ糞をひっくり返しながら歩きました。
朽ちた切り株を掘っていたら運よくエゾオサを掘り当てました。
セダカオサムシ (オサムシ科)
本命ではありませんが予想外の、今回の旅で初めて出会った北海道特産オサムシ。
まだ目覚める前だったようで集団越冬態でした。
同上
新鮮なシカ糞の下からはこの子が。
センチコガネ (センチコガネ科)
もっとも馴染み深い虫ではありますが、エゾ産は鞘翅のグリーンが強くて美しい。
車まで辿り着くと、Tさんが近くに腰を下ろして収穫物の整理をしていました。
何か採ったなと、近寄っていたら偶然道の上を歩いていたのが扉の写真のセンチコガネでした。
さて成果は何なのか見せてもらうと、なんと朽木崩しでこんなのを出してた。
マイマイカブリ (オサムシ科)
いわゆるエゾマイマイですが前胸が赤いタイプで美しい。これも本命ではないけどちょっと悔しい。
と、Tさんの目の前の地面に、じっと休んでいる虫を見つけました。
マルクビツチハンミョウ (ツチハンミョウ科)
道路の両側に広がる林でマイマイが採れるかもしれないと、みんなでトラップを追加することに。
全員設置し終わり、再集合したら移動開始。
次に向かったのは苫小牧の隣の厚真町。
実は厚真はオプションで、採集場所は未定だったため、ポイント探しからしなくてはならない。
しかしエゾの大地は広いし、森や林や丘や草原など選択肢が多すぎる。
でも厳密に調べる時間はないので丘陵地に向かう道を辿り、現場合わせで場所を選び、車を停めました。
周辺を探索したり写真を撮ったりしているヒマもなく、さっさとトラップを仕掛けて再出発。
無料の日高自動車道に乗って日高町の終点まで南下していき、R235で新冠へ。
途中、いくつも牧場がつながり広がっていますが、横目で見るだけ。
日高地方は新冠川に沿って”サラブレッド銀座”なる通りがあるほど競走馬の産地。
牧場の中も走っていきますが、探すのは名馬ではなく名虫。
新冠川からは丘陵地へ上がる道が見当たらなかったので、少し西へ戻ってアプローチを探しました。
GoogleMapで見ると、いくつかの牧場を抜けた先に林道があることが判明。
突入してみると未舗装路が延々と続き、水たまりの泥水を跳ね上げながら進むプチアドベンチャー。
森林伐採をしているようで、平らに均された土場もあり、その奥の沢沿いの少し開けた所に停車。
もう夕方4時を過ぎていたこともあり、気温も下がってきて陽射しがほとんどない。
陽射しはないけれど、春の草花は暖かい。
エゾノリュウキンカ
東北北部にも分布するようですが、水辺や湿地に咲くスプリング・エフェメラル。
同上
これも湿地に春咲くようです。
オオバナノエンレイソウ
緑色の外花披片が透けて見えるのが面白い。
ちなみに北大の校章はこの花がモチーフなのだそう。
同上
エゾの花はどれも大きく咲くようですが、丘の斜面にトラップを仕掛けていると、可憐な春の花も。
エゾエンゴサク
ところで林や森に入るときは、ホイッスルを鳴らしたり大声を出したりしながら歩きます。
そう、エゾでの探虫の最大リスクはクマに遭遇すること。
もう夕刻、つまりクマちゃんアワーであれば猶のことキケン度が高まるので、ゆっくり花見はできません。
同上
仕掛け終わって、同じ斜面に仕掛けていたHくんと合流すると、手の中に想定外の獲物が。
オオセンチコガネ (センチコガネ科)
これも馴染み深い虫ですが羨ましかった。歩いているのを見つけたというからなおさら。
見る角度によってグリーンからピンクにグラデーションする個体。
オオセンチ図説では道東はグリーンで、道央(空知、広尾)はピンクにグラデーションする個体が掲載。
日高地方も道央の一部ですが、襟裳は函館とほぼ同緯度なので道南と気候が似ているかと思いきや。
今回の旅で体感したのは、襟裳や浦河は緯度の割に気温が低く、最高気温が稚内と変わらないということ。
ちなみに天気予報では日高地方や十勝地方南部は”道央”ではなく”太平洋側”と呼んでいました。
仕掛け終わった頃には気温が下がり陽も暮れてきたので、探虫第一日目は試合終了。
今回のベースキャンプの宿へと向かいました。
チーム名TNSはこのホテル名に由来しています。
晩御飯を食べに行った、地元民と思しき客で混雑していたレストランの本シシャモがおいしかった。
第二日目以降はまた次回。
オマケ
これも想定外でしたが、この旅でオオセンチも採れたので、ついに飼育実験を開始できました。
オオセンチタワー(ミニ)の中の様子です。
がんばってほしい、エゾオオセンチ。
もう一つ、遠征の前日にHFで見つけたテントウムシ。
ベニヘリテントウ (テントウムシ科)
普通種で街中でも観察することがあるようですが、久しぶりに見たので記録として。
今日の湯加減
ほんとに6日間があっという間で、まだその余韻が続いています。
全員無事帰ってきましたが、野生生物の洗礼を受けたメンバーも。
それはともかくとしても、一言で総括すると、動物たちとの闘いに敗れた探虫行でした。
詳細や少なかった戦果については追々と。
ところで昨日と今日と、チバはものすごい強風です。洗濯物が干せないほど。
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
緑色のセンチコガネ、まあ綺麗^^
マイマイカブリも、黒ではないのがいるのですね。
by アヨアン・イゴカー (2023-05-06 23:06)
北大の校章はオオバナノエンレイソウがモチーフだったのですね。
野生生物の洗礼。。。想像すると大変そうです。
by リュカ (2023-05-07 10:43)
エゾの地は虫影も獣影も内地とはケタ違いに濃いみたいですね。次号が待ち遠しい!
by 高和です。 (2023-05-07 13:25)
エゾ遠征お疲れ様です。
ツーリングの聖地ですが生き物も
ここでしか出会えないものもあって
有意義な遠征旅でしたね。
by 響 (2023-05-07 16:02)
こんにちは^^
センチコガネ、緑が美しく光っていますね♪
エゾリュウキンカが綺麗です。
オオバナエンレイソウは普通のエンレイソウよりお花が大きい感じですね。
エゾエンゴサクは大好きなお花なのです^^
よく山野草のお店で買うのですが、上手く育ちません。
本シシャモ、美味しいでしょうね。羨ましいです。
by いろは (2023-05-07 17:53)
>アヨアン・イゴカーさん
マイマイカブリも多様な色変異があります。
センチのグリーンが美しいのはまた別途紹介する予定です
>リュカさん
モチーフにしやすい形かもしれませんね。
こちらが生息地にお邪魔しているので仕方がないですね
>高和です。さん
虫は少し時期が早かったですね
>響さん
北の特産種は植物も多いことを学べて勉強になりました
>いろはさん
北の草花はどれも大きく咲く印象でした。
エゾエンゴサクも大きく見えました
by kon(昆) (2023-05-07 18:25)
セダカオサムシは、いつも拝見しているオサムシより丸っこくて、
ずんぐりしている印象です。オオセンチコガネも緑がかって美しい
ですが、ピンクにグラデーションするものもいる? ピンクって、
何かすごいです^^;。
by sakamono (2023-05-11 21:31)
>sakamonoさん
セダカはゴミムシダマシのような感じがします。
エゾのオオセンチの色合いは独特でした♪
by kon(昆) (2023-05-13 23:56)