"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
オオトラボウズ、ダイコクGO! [探虫行]
夏休みの遠征レポートです。
今夏は、採集会のアテンドで一度だけ山梨へ行ったきりで、その後のイベントは中止になりました。
県外への移動もしづらいので、もう遠征はしないで終わるかなと思っていました。
ところが、7月に虫合宿を打診していたTさんからお盆過ぎなら時間ができるかもと連絡があり。
結局、日程は8月末ということになりました。
この写真の解説はしません。(本文を読んでいただければ分かると思いますので)
日程が決まってから、ダメモトで虫友のHくんも誘ってみたら、運よく行けるとのこと。
8月30日の朝、神奈川県の某所で集合し、Tさんの車でいざ出発。
まず目指すのは、Tさんのホームフィールドである丹沢方面。
そして狙うのは、オオトラカミキリという、ちょっとレアなカミキリムシ。
採集実績があるというポイントまで連れて行ってもらいました。
7時に某公園の駐車場に到着。そこからハイキングコースをしばらく歩くとあっけなく目的地。
こういう樅ノ木が林立する場所が採集ポイントなのです。
狙いが何であれ、はじめてのフィールドはワクワクします。
採り方というか、探し方は、とにかく樅ノ木の幹や枝をなめ回すようにチェックするだけ。
でも、どの木も巨木で、見上げるはるか高い梢や幹は遠すぎてよく見えない。
双眼鏡を持ってくるべきだったと悔やみつつも、一本一本じっと見上げて探します。
でもすぐに首が痛くなってくるので、たまには洞や樹皮の隙間を見ることで目も休める。
すると、こんな虫が目の前に。
翅の模様は変異があって、同定がむずかしいのですが、いわゆる”カトカラ”です。
洞の中にもう一頭いて、裏翅が少し見えました。
登りルート沿いの木を三人で、こちら側からあちら側からと見上げていきます。
カミキリムシどころか虫が出てこない。
ふと見降ろした花は、とても目を惹く形と色。
ハチが飛んできたのでカメラを向けたものの、ピントが合いませんでした。
花の同定に自信がありません。(お花の先生、間違っていたら教えてください)
見上げるだけなのに、なかなかキツイ探虫が続きます。
「ご苦労さん」と声をかけられたように目線を感じたのは、とてもお久しぶりの子でした。
チバではここ数年遭遇してなくて、しかもツマグロ型とはラッキーでした。
と喜んでいる場合ではなく、本命を探しますが、まだ朝の8時だというのに凄まじい暑さでした。
暑いというより、谷から吹きあがってくる風が猛烈な湿気を含んでいて、まさに蒸し風呂のよう。
水分補給が欠かせませんが、ちょっと休憩もしつつ、いきなりクイズです。
本命発見、と言いたいところですが、何か虫がいますので探してください。
写真を撮っていたら、向こうに気付かれてしまい、舞い上がったのですがまた着地してくれました。
なので位置が変わって、少し分かりやすくなりましたね。
翅の色や模様は個体変異があるようで、これも同定するのが大変でした。
ただ体色(翅色)をダイナミックに変えることはできないので、自分に合った樹皮を選んでいるはず。
とはいえ、よく溶け込むものです。
同定が大変なので蛾は滅多には撮らないのですが・・他に何もいないとつい。
採集ポイントのモミは一通りチェックしたので、三人それぞれ好きな場所に陣取って待ち伏せすることに。
つまり、数本の木だけに絞って、現れる(または降りてくる)のをひたすら待つという作戦。
オオトラの脱出口のある木の下で、あんぐりと口を開いて梢を見上げたり、他の木の裏側を見たり。
1時間以上粘りましたが、棚から牡丹餅は落ちてきませんでした。
足元に甲虫を発見しただけでうれしくなってしまう。
ハイキングコースを下って行って戻ってきたTさんが手にしていたのはお馴染みの子たち。
どちらも新成虫のようでピカピカでした。
待ち伏せにも飽きてしまったので、Hくんと下まで行ってみることに。
その途中、やっとカミキリムシを発見。
しかし幹につかまったまま★になっていました。
つかまっていたのは、まさにセンノキ(ハリギリ)でした。
その後もしばらく粘りましたが、あまりに暑いこともあり、違う場所へ行くことにしました。
時刻は11時。コンビニに寄ってお昼を調達しつつ、外環道に乗って北へ。
次に連れて行ってもらったのは飯能。
採集実績はないとのことでしたが、いる可能性がある環境、というか樅ノ木がある林。
(でも、とあるレアな甲虫のポイントでもあるのでした)
道中、車内で昼食はすませたので、到着するなり山の中へ・・と、道路脇からいきなり突入するTさん。
そこは全く道がなく、かなり急な斜面を直登していくのでした。
道路から樹種と環境を見極められる識別眼がなくては見つけられないポイントです。
ここも小さな尾根にそって樅ノ木が林立していました。
レアな昆虫というのは、実は○○タマムシで、この林の中の立ち枯れに集まるのだそうです。
Tさんはピンポイントで場所を知っていて、そこにも案内してもらいましたが、今は時期ではない。
これはその木ではありませんが、モミの巨木の立ち枯れもありました。
午前中と同様に散開して木を見上げて回ります。
獣道さえない森の中なので、迷子にならないように二人の居場所を気にしながら。
1時間ほど樅ノ木を見上げたり、足元に何かいないか見下ろしたりしていたら、黒い物体発見。
本命ではないですが、Tさんがフィールドの説明をしているときに”いるよ”と言っていた子。
普通のノコギリカミキリとの相違点の説明は割愛しますが、同定ポイントは触覚の節の長さなど。
見た目で分かりやすいのはお腹が赤っぽいことです。(それだけで断定はできません)
午前中のポイントよりは少し標高があり、湿度もやや低いものの、暑さはきびしいまま。
またトンボに慰められました。
ちゃんと同定しようと思いつつも、網を出すのが面倒だったので、下からあおって撮影。
もう少し涼しくなったら里へ下りるでしょう。
その後1時間ほど粘りましたが、本命はおろか何も見つからないので移動しましょうと提案。
全会一致で森を後にすることにしました。
予定外でしたが、もう一か所実績ありポイントがあるとのことで其方へ。(何だ、あるんじゃん)
しかも、ものの5分ほどで着きました。
そこは道路沿いにある、とても小さな丘の上。
二人に続いて、お社への階段を登って行こうとしたとき。コンチューターがピクリと反応しました。
石段の上にあったのは、半分埋もれたカミキリムシ。
子供がいたずらしたのかと思いましたが、どうやらアリの仕業のようでした。
でも、触角も足も欠損がなかったので、記念の標本にするべく、チャック袋に入れました。
さて本日3か所目のポイントは、樅ノ木の数は少ないものの何かいそうな気配が。
小さな祠の奥の尾根の端には御神木の風情をまき散らせている(樅ノ木ではない)木も。
しかし、洞の中まで覗き込んでみたものの何もいませんでした。
散開した二人も黙ったまま、何も声を発しません。
やっと見つけたのは、木陰の葉の上で休む子。
相変わらずの暑さで、こちらも休憩してお茶を飲んでいると、そのペットボトルに飛び移りました。
あ、面白いと思いながらも、空いている左手ではカメラを出せず。
そのうちに舞い上がってしまいましたが、もしかして汗に誘因されているのかもと思いもう一度。
今度は右手にカメラを持ち、左手でペットボトルを握って飲み始めると・・
来た。
できれば正面顔を撮りたかったですが、止まってくれたのは一瞬だけでした。
さて、見上げるのに疲れたというよりも、暑さに耐えかねてきました。
ふと丘の下を見下ろすと、本殿と思われる神社があり、その前に水飲み場がある。
誘惑にあらがえず、丘を降りて水道で顔と手を洗い、水分補給もして生き返りました。
どうやら境内でキャンプができるようでしたが、時節柄お客さんの姿はなし。
近くの河原で遊ぶ高校生たちのグループの楽しそうな声を聞きながら丘を上がっていきました。
以上がこの日のオオトラボウズに至る経緯です。
そんなに苦労していないように読めるかもしれませんが、汗だくになったりヒルにキスされたりと。
三人それなりにがんばりました。
さて、この日の探虫は終了し、次の目的地へと移動を開始しました。
二つ目のターゲット、ダイコクコガネを求めてGO!です。
向かうは東信なのですが、秩父越えで向かうことにしました。
ひたすらR299を辿っていきます。
秩父の街を抜け、志賀坂峠を越え、群馬の上野村に入ってしばらく進むと「この先通行止め」の看板。
ただ、通せんぼはされなかったのでそのまま進行したものの、不安になり第一村人に確認。
やはりR299では行けないとのことで、少し戻ってK45を北上しました。
下仁田まで出てR254で佐久に出るルートもありますが、かなり遠回りなので臼田へ抜けるK93を選択。
南牧村を西へ下っていく途中、「蝉の渓谷」を過ぎた先だったと思いますが、絶景ポイントを通過。
実は、日が暮れる前に採集ポイントの下見をしようということにしたので寄り道する余裕はなし。
やっとK93の終点の臼田にたどり着いたときはもう夕暮れ時。
ルートは書けませんがその後もひた走り、ちょっと道に迷いつつも山の中へ突入。
なんとか無事にポイントに着けましたが、とっぷりと陽が暮れていました。
そこからまた山を下りて宿まで・・と、その前に夕食をとるために以前訪れたお蕎麦屋さんへ。
閉店時刻ぎりぎりでしたが入らせてもらいました。
メニューを開いたら、前回食べた品を思い出したのでリピート。
特大盛りかと思うほどの量で、サービスでトマトや漬物もいただき大満足。
宿で汗を洗い流し、今日の反省会と翌日の期待会をして早目に寝ました。
翌朝は6時に出発。
素泊まりだったので、コンビニで朝食と昼食を買い出しして再び山へ。
ダイコクGO!
採集ポイントというのは、実は3年前にも訪れた牧場です。
カウボーイはまだ出勤してなかったので、まずは牛たちに挨拶。
朝もやに包まれる広い牧場を眺めながら、三人で周囲を散策しました。
しばらくすると馬ではなく軽自動車に乗ったカウボーイが現れたのでご挨拶。
前回訪れたときと同じ方でした。
7月から8月の大雨はどうでしたか?と聞くと、ここら辺りは影響はなかったとのことで安心。
入場の許可をいただき、早速探虫開始です。
まずはTさんのために、模範演技というか、採集の仕方を説明。
以前の記事にも書きましたが、目印はこのような土のマウンド。
ドーム状になっていれば、その中に坑道の入り口があります。
その穴の径が2センチくらいあれば、それはダイコクコガネのもの。
小さかったり、穴が見つからない場合は、他の糞虫かアリの巣。
穴に指を突っ込んで、坑道の方向を確認したら、その周囲の土を塊ごと掘り返します。
マウンドの土が乾いている場合は古い巣で、留守の場合がありますが、そうでなければこの通り。
実は、今回は案内役という重責があったわけで。一発目でその重圧から解放されて心から安堵。
まもなくオスも出すことができました。
久しぶりに会えましたが、やはり他の虫とは違う存在感と希少感があって神々しくも見えます。
あ、この採集でもっとも大事なことは、掘ったあとを丁寧に平坦に埋め戻すこと。
そうしないと、牛たちが足を取られて転倒する原因になりかねないからです。
散開して採集を続けましたが、勘のいいTさんは次々と宝を掘り当てているようでした。
しかも連続してオスを出して気勢を上げている様子。(経験上、雌雄比は良くて1:2なのに)
内心(かなり)頭に来つつも、プレッシャーから解放された嬉しさで気持ちには余裕がありました。
薄日が射してきたので、腰を伸ばしながら牧場を見渡すと、一面の緑の中に差し色が。
かなり遠かったけど、近づくと逃げられると思い、証拠写真だけ。(しかもトリミング)
近寄らなくてもすぐに舞い上がり、それっきりでした。
1時間ほど空振りばかりでしたが、やっと2頭目のオスの発掘に成功。
こんな感じで出てきます。(土隗をひっくり返したところ)
置きなおしたわけではありません。
「でもこれは”Jack”なんだよなー、前回出せなかった”King”を今回は出したいんだよなー」
と、もう欲をかき始めるのでした。
これはツノが長いですが、Kingではありません。
もしも体長が同じくらいあれば王様ですが、残念ながら半分くらいしかありません。
その後はあまり成果がなく、お昼になったので一度集合して休憩がてらランチタイムとしました。
それぞれの収獲の報告をしあうと、やはりTさんがダントツでした。
なので俄然お弁当を食べるスピードが上がってしまう。
ただ、午後はサブターゲットも探したいので、探虫パワーの配分も気を付けようと決意しつつ再開。
サブターゲットとは、シナノエンマコガネという糞虫で、他の小さな糞虫たちと紛れて探しづらいのです。
探し方もダイコクとは違います。
扉の写真のような新鮮な糞を見つけ、丁寧にひっくり返し、目を凝らして探します。
砂金堀りに似ていると言いたいところ。
砂礫の中ではなくて糞の中にあるというのが決定的な違いですが、虫屋はそんなことは気にしません。
跪いて、糞の中に潜っていないかチェックしていると、背後からフォーフォーという音が。
ハッと振り返ると・・立派な角のウシキング。
たまにニンゲンに興味のあるやつが寄ってきますが、ウシキングはさすがにコワイ。
そばに置いてあったリュックが気になるようで、フォーフォー言いながらヨダレまみれにされました。
でも、おかげで砂金の発掘に成功しました。
絵面が悪すぎるので現場写真は割愛し、標本にする前の仮展足の写真を。
何頭か採るうちにメスもすぐわかるようになりました。
これで前回のリベンジも成功。(前回は目が肥えていなかったので見つけられなかったのです)
なかなか本命のキングが出ないので、少し作戦を変えました。
それが功を奏したのか、ついに、これぞ King。
これでメインもサブも採れ、目標は達成できました。
さらに幸運は続き・・King2頭目。
さらに30分後、ちょっと面白い出方をしたので、見えるところにいたTさんを呼びました。
「坑道の中に糞を詰めて、ペアで居食いをしているようです」
「ほお、仲睦まじいですね」
「しかも、キング!」
まだKingを出していないTさんの顔に一瞬だけ浮かんだ悔しそうな表情を見逃しませんでした。
それでも十分採れたので満足し、遠くの丘で一人粘っていたHくんに身振り手振りとヤッホーで合図。
Tさんと二人でスコップを網に持ち替えてチョウチョ探しをすることにしました。
谷を下り、牧場内にわずかに咲くアザミや沢沿いの灌木の梢を見て回りました。
しかし、あいにく日も陰り、ガスってもきてしまい、見かけたのはヒカゲチョウくらい。
とぼとぼと歩いていると牧場の北側の一番奥のエリアに湿地がありました。
水生昆虫がいそうでしたが、水網は車の中だし、取りに行ってくる気力と体力はありません。
湿地の中にはこの花がたくさん咲いていました。
その中にひっそりと咲いていたのをTさんが見つけてくれた花。
周辺の散策もし終わったところで探虫終了。
二人で丘を上がり、Hくんと合流し、撤収しましょうと伝えると、ちょっと待ってと言う。
最後にと、大事にとっておいた怪しい穴を掘って終わりにしたいとのこと。
果たして・・
出た。9回ウラの大ホームラン。
まだキングは出していなかったHくんもこれで成仏し試合終了となりました。
車に戻って服を着替え(そのままで乗車したらエライことになります)最終成果報告。
ツバナレしないよう、♂×4と♀×5を残して、残りはリリースしました。
シナノは3ペア、あとは記念にゴホンダイコクとツノコガネを2ペアづつ。
記録のため、キングの展足前の写真も載せておきます。
オスの角の長さと太さ、それとカブトムシにもあるような前胸の隆起の大きさと形状は個体差が大きい。
実は他の個体は現在飼育中です。
今日の湯加減
今夏は、採集会のアテンドで一度だけ山梨へ行ったきりで、その後のイベントは中止になりました。
県外への移動もしづらいので、もう遠征はしないで終わるかなと思っていました。
ところが、7月に虫合宿を打診していたTさんからお盆過ぎなら時間ができるかもと連絡があり。
結局、日程は8月末ということになりました。
この写真の解説はしません。(本文を読んでいただければ分かると思いますので)
日程が決まってから、ダメモトで虫友のHくんも誘ってみたら、運よく行けるとのこと。
8月30日の朝、神奈川県の某所で集合し、Tさんの車でいざ出発。
まず目指すのは、Tさんのホームフィールドである丹沢方面。
そして狙うのは、オオトラカミキリという、ちょっとレアなカミキリムシ。
採集実績があるというポイントまで連れて行ってもらいました。
7時に某公園の駐車場に到着。そこからハイキングコースをしばらく歩くとあっけなく目的地。
こういう樅ノ木が林立する場所が採集ポイントなのです。
狙いが何であれ、はじめてのフィールドはワクワクします。
採り方というか、探し方は、とにかく樅ノ木の幹や枝をなめ回すようにチェックするだけ。
でも、どの木も巨木で、見上げるはるか高い梢や幹は遠すぎてよく見えない。
双眼鏡を持ってくるべきだったと悔やみつつも、一本一本じっと見上げて探します。
でもすぐに首が痛くなってくるので、たまには洞や樹皮の隙間を見ることで目も休める。
すると、こんな虫が目の前に。
オニベニシタバ (ヤガ科)
翅の模様は変異があって、同定がむずかしいのですが、いわゆる”カトカラ”です。
洞の中にもう一頭いて、裏翅が少し見えました。
同上
登りルート沿いの木を三人で、こちら側からあちら側からと見上げていきます。
カミキリムシどころか虫が出てこない。
ふと見降ろした花は、とても目を惹く形と色。
ハチが飛んできたのでカメラを向けたものの、ピントが合いませんでした。
ナガバノコウヤボウキ ?
花の同定に自信がありません。(お花の先生、間違っていたら教えてください)
見上げるだけなのに、なかなかキツイ探虫が続きます。
「ご苦労さん」と声をかけられたように目線を感じたのは、とてもお久しぶりの子でした。
マユタテアカネ ♀ ツマグロ型 (トンボ科)
チバではここ数年遭遇してなくて、しかもツマグロ型とはラッキーでした。
と喜んでいる場合ではなく、本命を探しますが、まだ朝の8時だというのに凄まじい暑さでした。
暑いというより、谷から吹きあがってくる風が猛烈な湿気を含んでいて、まさに蒸し風呂のよう。
水分補給が欠かせませんが、ちょっと休憩もしつつ、いきなりクイズです。
本命発見、と言いたいところですが、何か虫がいますので探してください。
写真を撮っていたら、向こうに気付かれてしまい、舞い上がったのですがまた着地してくれました。
なので位置が変わって、少し分かりやすくなりましたね。
翅の色や模様は個体変異があるようで、これも同定するのが大変でした。
ただ体色(翅色)をダイナミックに変えることはできないので、自分に合った樹皮を選んでいるはず。
とはいえ、よく溶け込むものです。
ハミスジエダシャク (ヤガ科)
同定が大変なので蛾は滅多には撮らないのですが・・他に何もいないとつい。
採集ポイントのモミは一通りチェックしたので、三人それぞれ好きな場所に陣取って待ち伏せすることに。
つまり、数本の木だけに絞って、現れる(または降りてくる)のをひたすら待つという作戦。
オオトラの脱出口のある木の下で、あんぐりと口を開いて梢を見上げたり、他の木の裏側を見たり。
1時間以上粘りましたが、棚から牡丹餅は落ちてきませんでした。
足元に甲虫を発見しただけでうれしくなってしまう。
オオスジコガネ (コガネムシ科)
ハイキングコースを下って行って戻ってきたTさんが手にしていたのはお馴染みの子たち。
オオセンチコガネとセンチコガネ (センチコガネ科)
どちらも新成虫のようでピカピカでした。
待ち伏せにも飽きてしまったので、Hくんと下まで行ってみることに。
その途中、やっとカミキリムシを発見。
しかし幹につかまったまま★になっていました。
センノカミキリ (カミキリムシ科)
つかまっていたのは、まさにセンノキ(ハリギリ)でした。
その後もしばらく粘りましたが、あまりに暑いこともあり、違う場所へ行くことにしました。
時刻は11時。コンビニに寄ってお昼を調達しつつ、外環道に乗って北へ。
次に連れて行ってもらったのは飯能。
採集実績はないとのことでしたが、いる可能性がある環境、というか樅ノ木がある林。
(でも、とあるレアな甲虫のポイントでもあるのでした)
道中、車内で昼食はすませたので、到着するなり山の中へ・・と、道路脇からいきなり突入するTさん。
そこは全く道がなく、かなり急な斜面を直登していくのでした。
道路から樹種と環境を見極められる識別眼がなくては見つけられないポイントです。
ここも小さな尾根にそって樅ノ木が林立していました。
レアな昆虫というのは、実は○○タマムシで、この林の中の立ち枯れに集まるのだそうです。
Tさんはピンポイントで場所を知っていて、そこにも案内してもらいましたが、今は時期ではない。
これはその木ではありませんが、モミの巨木の立ち枯れもありました。
午前中と同様に散開して木を見上げて回ります。
獣道さえない森の中なので、迷子にならないように二人の居場所を気にしながら。
1時間ほど樅ノ木を見上げたり、足元に何かいないか見下ろしたりしていたら、黒い物体発見。
本命ではないですが、Tさんがフィールドの説明をしているときに”いるよ”と言っていた子。
ニセノコギリカミキリ (カミキリムシ科)
普通のノコギリカミキリとの相違点の説明は割愛しますが、同定ポイントは触覚の節の長さなど。
見た目で分かりやすいのはお腹が赤っぽいことです。(それだけで断定はできません)
午前中のポイントよりは少し標高があり、湿度もやや低いものの、暑さはきびしいまま。
またトンボに慰められました。
アキアカネ ♂(トンボ科)
ちゃんと同定しようと思いつつも、網を出すのが面倒だったので、下からあおって撮影。
同上 ♀
もう少し涼しくなったら里へ下りるでしょう。
その後1時間ほど粘りましたが、本命はおろか何も見つからないので移動しましょうと提案。
全会一致で森を後にすることにしました。
予定外でしたが、もう一か所実績ありポイントがあるとのことで其方へ。(何だ、あるんじゃん)
しかも、ものの5分ほどで着きました。
そこは道路沿いにある、とても小さな丘の上。
二人に続いて、お社への階段を登って行こうとしたとき。コンチューターがピクリと反応しました。
石段の上にあったのは、半分埋もれたカミキリムシ。
シロスジカミキリ (カミキリムシ科)
子供がいたずらしたのかと思いましたが、どうやらアリの仕業のようでした。
でも、触角も足も欠損がなかったので、記念の標本にするべく、チャック袋に入れました。
さて本日3か所目のポイントは、樅ノ木の数は少ないものの何かいそうな気配が。
小さな祠の奥の尾根の端には御神木の風情をまき散らせている(樅ノ木ではない)木も。
しかし、洞の中まで覗き込んでみたものの何もいませんでした。
散開した二人も黙ったまま、何も声を発しません。
やっと見つけたのは、木陰の葉の上で休む子。
ヒカゲチョウ (タテハチョウ科)
相変わらずの暑さで、こちらも休憩してお茶を飲んでいると、そのペットボトルに飛び移りました。
あ、面白いと思いながらも、空いている左手ではカメラを出せず。
そのうちに舞い上がってしまいましたが、もしかして汗に誘因されているのかもと思いもう一度。
今度は右手にカメラを持ち、左手でペットボトルを握って飲み始めると・・
来た。
同上
できれば正面顔を撮りたかったですが、止まってくれたのは一瞬だけでした。
さて、見上げるのに疲れたというよりも、暑さに耐えかねてきました。
ふと丘の下を見下ろすと、本殿と思われる神社があり、その前に水飲み場がある。
誘惑にあらがえず、丘を降りて水道で顔と手を洗い、水分補給もして生き返りました。
どうやら境内でキャンプができるようでしたが、時節柄お客さんの姿はなし。
近くの河原で遊ぶ高校生たちのグループの楽しそうな声を聞きながら丘を上がっていきました。
以上がこの日のオオトラボウズに至る経緯です。
そんなに苦労していないように読めるかもしれませんが、汗だくになったりヒルにキスされたりと。
三人それなりにがんばりました。
さて、この日の探虫は終了し、次の目的地へと移動を開始しました。
二つ目のターゲット、ダイコクコガネを求めてGO!です。
向かうは東信なのですが、秩父越えで向かうことにしました。
ひたすらR299を辿っていきます。
秩父の街を抜け、志賀坂峠を越え、群馬の上野村に入ってしばらく進むと「この先通行止め」の看板。
ただ、通せんぼはされなかったのでそのまま進行したものの、不安になり第一村人に確認。
やはりR299では行けないとのことで、少し戻ってK45を北上しました。
下仁田まで出てR254で佐久に出るルートもありますが、かなり遠回りなので臼田へ抜けるK93を選択。
南牧村を西へ下っていく途中、「蝉の渓谷」を過ぎた先だったと思いますが、絶景ポイントを通過。
実は、日が暮れる前に採集ポイントの下見をしようということにしたので寄り道する余裕はなし。
やっとK93の終点の臼田にたどり着いたときはもう夕暮れ時。
ルートは書けませんがその後もひた走り、ちょっと道に迷いつつも山の中へ突入。
なんとか無事にポイントに着けましたが、とっぷりと陽が暮れていました。
そこからまた山を下りて宿まで・・と、その前に夕食をとるために以前訪れたお蕎麦屋さんへ。
閉店時刻ぎりぎりでしたが入らせてもらいました。
メニューを開いたら、前回食べた品を思い出したのでリピート。
おろし蕎麦
特大盛りかと思うほどの量で、サービスでトマトや漬物もいただき大満足。
宿で汗を洗い流し、今日の反省会と翌日の期待会をして早目に寝ました。
翌朝は6時に出発。
素泊まりだったので、コンビニで朝食と昼食を買い出しして再び山へ。
ダイコクGO!
採集ポイントというのは、実は3年前にも訪れた牧場です。
カウボーイはまだ出勤してなかったので、まずは牛たちに挨拶。
朝もやに包まれる広い牧場を眺めながら、三人で周囲を散策しました。
しばらくすると馬ではなく軽自動車に乗ったカウボーイが現れたのでご挨拶。
前回訪れたときと同じ方でした。
7月から8月の大雨はどうでしたか?と聞くと、ここら辺りは影響はなかったとのことで安心。
入場の許可をいただき、早速探虫開始です。
まずはTさんのために、模範演技というか、採集の仕方を説明。
以前の記事にも書きましたが、目印はこのような土のマウンド。
ドーム状になっていれば、その中に坑道の入り口があります。
その穴の径が2センチくらいあれば、それはダイコクコガネのもの。
小さかったり、穴が見つからない場合は、他の糞虫かアリの巣。
穴に指を突っ込んで、坑道の方向を確認したら、その周囲の土を塊ごと掘り返します。
マウンドの土が乾いている場合は古い巣で、留守の場合がありますが、そうでなければこの通り。
ダイコクコガネ ♀ (コガネムシ科)
実は、今回は案内役という重責があったわけで。一発目でその重圧から解放されて心から安堵。
まもなくオスも出すことができました。
同上 ♂
久しぶりに会えましたが、やはり他の虫とは違う存在感と希少感があって神々しくも見えます。
あ、この採集でもっとも大事なことは、掘ったあとを丁寧に平坦に埋め戻すこと。
そうしないと、牛たちが足を取られて転倒する原因になりかねないからです。
散開して採集を続けましたが、勘のいいTさんは次々と宝を掘り当てているようでした。
しかも連続してオスを出して気勢を上げている様子。(経験上、雌雄比は良くて1:2なのに)
内心(かなり)頭に来つつも、プレッシャーから解放された嬉しさで気持ちには余裕がありました。
薄日が射してきたので、腰を伸ばしながら牧場を見渡すと、一面の緑の中に差し色が。
かなり遠かったけど、近づくと逃げられると思い、証拠写真だけ。(しかもトリミング)
クジャクチョウ (タテハチョウ科)
近寄らなくてもすぐに舞い上がり、それっきりでした。
1時間ほど空振りばかりでしたが、やっと2頭目のオスの発掘に成功。
こんな感じで出てきます。(土隗をひっくり返したところ)
置きなおしたわけではありません。
ダイコクコガネ ♂ (コガネムシ科)
「でもこれは”Jack”なんだよなー、前回出せなかった”King”を今回は出したいんだよなー」
と、もう欲をかき始めるのでした。
これはツノが長いですが、Kingではありません。
ゴホンダイコク ♂(コガネムシ科)
もしも体長が同じくらいあれば王様ですが、残念ながら半分くらいしかありません。
その後はあまり成果がなく、お昼になったので一度集合して休憩がてらランチタイムとしました。
それぞれの収獲の報告をしあうと、やはりTさんがダントツでした。
なので俄然お弁当を食べるスピードが上がってしまう。
ただ、午後はサブターゲットも探したいので、探虫パワーの配分も気を付けようと決意しつつ再開。
サブターゲットとは、シナノエンマコガネという糞虫で、他の小さな糞虫たちと紛れて探しづらいのです。
探し方もダイコクとは違います。
扉の写真のような新鮮な糞を見つけ、丁寧にひっくり返し、目を凝らして探します。
砂金堀りに似ていると言いたいところ。
砂礫の中ではなくて糞の中にあるというのが決定的な違いですが、虫屋はそんなことは気にしません。
跪いて、糞の中に潜っていないかチェックしていると、背後からフォーフォーという音が。
ハッと振り返ると・・立派な角のウシキング。
たまにニンゲンに興味のあるやつが寄ってきますが、ウシキングはさすがにコワイ。
そばに置いてあったリュックが気になるようで、フォーフォー言いながらヨダレまみれにされました。
でも、おかげで砂金の発掘に成功しました。
絵面が悪すぎるので現場写真は割愛し、標本にする前の仮展足の写真を。
シナノエンマコガネ ♂ (コガネムシ科)
何頭か採るうちにメスもすぐわかるようになりました。
同上 ペア
これで前回のリベンジも成功。(前回は目が肥えていなかったので見つけられなかったのです)
なかなか本命のキングが出ないので、少し作戦を変えました。
それが功を奏したのか、ついに、これぞ King。
ダイコクコガネ ♂ (コガネムシ科)
これでメインもサブも採れ、目標は達成できました。
さらに幸運は続き・・King2頭目。
さらに30分後、ちょっと面白い出方をしたので、見えるところにいたTさんを呼びました。
「坑道の中に糞を詰めて、ペアで居食いをしているようです」
「ほお、仲睦まじいですね」
「しかも、キング!」
まだKingを出していないTさんの顔に一瞬だけ浮かんだ悔しそうな表情を見逃しませんでした。
それでも十分採れたので満足し、遠くの丘で一人粘っていたHくんに身振り手振りとヤッホーで合図。
Tさんと二人でスコップを網に持ち替えてチョウチョ探しをすることにしました。
谷を下り、牧場内にわずかに咲くアザミや沢沿いの灌木の梢を見て回りました。
しかし、あいにく日も陰り、ガスってもきてしまい、見かけたのはヒカゲチョウくらい。
とぼとぼと歩いていると牧場の北側の一番奥のエリアに湿地がありました。
水生昆虫がいそうでしたが、水網は車の中だし、取りに行ってくる気力と体力はありません。
湿地の中にはこの花がたくさん咲いていました。
オタカラコウ
その中にひっそりと咲いていたのをTさんが見つけてくれた花。
ツリフネソウ
周辺の散策もし終わったところで探虫終了。
二人で丘を上がり、Hくんと合流し、撤収しましょうと伝えると、ちょっと待ってと言う。
最後にと、大事にとっておいた怪しい穴を掘って終わりにしたいとのこと。
果たして・・
出た。9回ウラの大ホームラン。
まだキングは出していなかったHくんもこれで成仏し試合終了となりました。
オマケ
車に戻って服を着替え(そのままで乗車したらエライことになります)最終成果報告。
ツバナレしないよう、♂×4と♀×5を残して、残りはリリースしました。
シナノは3ペア、あとは記念にゴホンダイコクとツノコガネを2ペアづつ。
記録のため、キングの展足前の写真も載せておきます。
ダイコクコガネ ♂ (コガネムシ科)
オスの角の長さと太さ、それとカブトムシにもあるような前胸の隆起の大きさと形状は個体差が大きい。
同上
実は他の個体は現在飼育中です。
今日の湯加減
今日は虫の師匠と闇取り引きをするためにお江戸の某所で待ち合わせしました。
台風14号は一体どこへ行ったやら。午前中は降っていたのですが、お昼頃には上がりました。
さて、取り引きするのはもちろん虫。
師匠の息子さんが採ってきたというヒメオオクワガタをいただいたのです。
交換品は本編で紹介したシナノエンマのペア。
ついでに少し買い物をしてそそくさと帰ってきました。
結局、傘を差すこともなく。
ザ・クロマニヨンズ「ドライブ GO!」
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
ハミスジエダシャク、ほんとに見事に溶け込んでやすね。
まさに、砂底のカレイでやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2021-09-19 13:00)
こんにちは^^
オオスジコガネ、とても綺麗ですね♪
このグリーンがとても素敵です。
カミキリムシも種類が多いのですね。
タマムシ、見たかったです^^
私も先日カメラを向けていた時に、セセリチョウがカメラにとまりました。パニック状態になりましたが、逃げられてしまいました。
ダイコクコガネの♂ 立派ですね。
カブトムシより貴重な存在なのでしょうね。
by いろは (2021-09-19 16:03)
ダイコクコガネ、素晴らしい、凛々しい姿です
そう、カブトムシより、、初めてみる姿です
さすがキングですね
by engrid (2021-09-19 19:50)
>ぼんぼちぼちぼちさん
どうして自分の模様がわかるのでしょうね・・
カレイもヒラメもガも。
>いろはさん
オオスジコガネに注目していただけるとは・・実は好きな虫です^^
セセリがカメラにとまったのは何に誘われたのか不思議ですね。
ダイコクコガネとカブトムシは希少さでいうと異次元です^^
>engridさん
凛々しくてカワイイです。
キングも^^
by ぜふ (2021-09-19 22:21)
オオトラ、残念でしたね。高和が使っている図鑑(PHPのハンドブックサイズ)には☆印の稀少度があり、オオトラは最難関の6ツ星?ほかにはベニボシ、ヨコヤマがラインアップされてました。
センノカミキリ、サビイロが渋いですね。件の図鑑では三ツ星です。カミキリ屋になりたてだった長女が大船の家の玄関先で見つけ、標本を研究大賞に出品したところずいぶんお褒めにあずかりました。
ヒカゲチョウは止まったまま方向転換しますよね、旧ジャノメチョウ科の特徴かも。
ダイコクさまは、先般の例会でおめにかかりました。存在感に圧倒されました。
残暑らしい残暑がないまま秋になりそうです。21年高和の標本はゼフさんの師匠経由のミヤマと先週のムラツバで終わりました。
by 高和です。 (2021-09-20 09:17)
牛の落し物の下には宝ありですね。
しかし草原だと違和感ないけど
森の中に牛がいるのは珍しい光景です。
カミキリムシってたまたま遭遇する以外では
なかなか見つけきれないです。
by 響 (2021-09-21 13:04)
ダイコクコガネ、外国産カブトムシが気軽に手に入らなかった幼少の頃、ツノの感じが外国産カブトに似ているというので、採ってみたいと思っていました。
by 山健父 (2021-09-23 08:19)
JackとKingの違いは何だろう、と思って読み進めましたが、Kingを
見て納得。なるほど、これはKingですね。土隗をひっくり返したところ
の写真で、どんなふうに採集しているのか、よく分かりました。
シナノエンマコガネは、赤べこみたいに、首がひょこっり出てるなぁ、
と思いました^^;。
by sakamono (2021-09-23 22:25)
>高和です。さん
虫屋の世評からレアさは認識してはいるもののカミキリに疎いのであまりピンとこないという体質です。
それよりもヒカゲチョウとの見つめあいの方がピンとくるという^^;
残暑も戻ったし、今年もこれからですよ♪
>響さん
完全放牧ですからね。いろんな場所に自由にいます^^
カミキリムシはいる場所を特定するのがむずかしいです。
>山健父さん
ダイコクはもはや外国産カブトムシよりはるかに希少ですね。
本州では特に。
>sakamonoさん
図鑑にはキングしか載っていないんです。
ダイコク掘りは元に戻すことが大事です。
シナノエンマは小さな水牛ですね^^
by ぜふ (2021-09-24 20:09)