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"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。

コブとチョッキリ [探虫行]

秋はバッタ類は増えてくるものの、チョウやトンボや甲虫類は姿を消し始めます。

オサゴミもトラップ採集の時期としてはピークを過ぎ、オサ掘りするにはまだ早過ぎる。

つまり昆虫採集の端境期というところで、どこで何を狙うか虫友三人で悩みました。

水生昆虫という案もありましたが、Tさんの案内でコブ叩き(注)に行くことに。

これは本命の虫ではなく、オトシブミ(チョッキリ)の仲間。

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実はナゾだらけなのですが詳しくは本編で説明します。

注:コブヤハズカミキリというカミキリムシの仲間を叩いて採集すること

前乗りした翌日の10月1日の朝、某駅前でHくんをピックアップしてTさんの車で出発。

例によって途中で食料を買い込みつつ南富士方面へ移動。

御殿場から富士山スカイラインをひた走り、標高が1000mを超えたところで停車して試し叩き。

環境が今一つという判断で、すぐに移動開始して標高を上げていきました。

ここは良さそうということで選んだフィールドはこんな様子。

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樹海のようですが道路のすぐ傍。でも奥は延々と林が続きます。

ところで、叩いて採集すると書きましたが、それはビーティング採集といいます。

灌木の枝葉やそこに乗って(ひっかかって)いる枯葉を棒でつついて、中にいる虫を落とすということ。

落ちてくる枝葉はビーティングネットや広げた布などで受け止めます。(傘で代用することも)

なので虫を目で見つけるというわけではなく、当たりをつけて叩くわけで、運と勘が大事になります。

ただ、ここは叩きたくなるような物件が少なくて、ほとんど歩き回るだけでした。

オサ掘りやクワガタ探しなら、こんな朽ち果てた倒木は優良物件なのですが。

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朽木崩しはしませんでしたが、腐りかけのキノコがあったのでめくってみると何かいました。

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中央やや上にいます。じっとしていたので接写。

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このバットマン模様はまさにキノコムシの仲間ですが、判別がむずかしい。

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エグリデオキノコムシ ?(ハネカクシ科)


以前はデオキノコムシ科というのが存在していましたが、ハネカクシ科にマージされたようです。

ちなみに名前にある”デオ”は、腹端が飛び出しているという意味の”出尾”です。

これは4年前にHF方面で撮影した別種。

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ヤマトデオキノコムシ (ハネカクシ科)


色違いですが、やっぱりバットマン模様が付いてますね。

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実は、コブヤハズはトラップ採集もできるようで。

枯葉に集まる生態を利用して、枯れ枝をブーケのようにして木の股に置いておくというやり方。

これは誰かが設置したまま回収されなかったものでしょう。

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物件を探してしばらく歩き回っているうちに、Tさんの姿が見えなくなったままということに気が付いた。

Hくんと二人で「オーイ!」と叫びながら、さらに奥へと進みましたがまったく返事なし。

機動力と体力があるので行動範囲が広いのは承知しているものの段々と心配になってきた。

これは林の奥ではなく、横へ展開しているのではないかと判断し、踵を返して沢伝いに戻りました。
(沢へ滑落しているかもしれないと思い)

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スカイラインを通過する車の音が聞こえるところまで戻ってきたら、Tさんの姿が見えて一安心。

どうやら、林の奥どころか、引き返して道路の反対側の林に入っていたよう。道理で返事がないわけだ。
(ちなみにTさんは反対側で一頭採集)

その時、近くの立ち枯れの幹から何かが飛び立ち、眼で後を追うと近くの地面に着地しました。

本命ではないですが、やっとこの日2匹目の甲虫らしい虫。体長は14.5mm。

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モンキナガクチキムシ (キノコムシダマシ科)


ゴミが付いているのかと思いましたが、翅の付け根の部分が黄色いのと触角の先が白いのが特徴です。

名前にクチキムシとあるのにクチキムシ科でもクチキムシダマシ科でもはない。

キノコを食べるのにキノコムシの仲間でもないし、ゴミムシダマシ科でもないという不思議な種です。

物件が少ないので河岸を変えようと提案し、再び移動開始。さらに標高を上げました。

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次のポイントも物件が少ないのがすぐわかったので、三人で道路の縁石に腰かけてお弁当タイム。

休憩もそこそこにさっさと移動し、気合を入れ直してビーティング開始。

と、道路から入ってすぐの腰の高さの植群にからんだノブドウの葉っぱを叩いたら美麗なゴミが落下。

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ヤホシゴミムシ (オサムシ科)


体長は11mm。過去に何度か紹介しているお気に入り。(ゴミムシらしくない色とデザインが好き)

オサ掘りでも出てくるのですが、めずらしく樹上で生活するゴミムシなので落ちてきたということ。

赤いシートのようなものはビーティングネットの代わりに使用した傘です。

ただ、この後は特に何も落ちてこず、物件も少ないので、道路の反対側へ突入してみました。

しかし、このような倒木や朽木は多数あるものの、コブがいそうな物件が全然見当たらない。

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ここも見切りをつけて次へ。

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さらに標高を上げたところに広い駐車場がありました。

どこから林に突入するか、三人でうろうろ歩いていると、藪の中からネコが現れた。

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ここは標高1500mを超えているので”山猫”といっていいと思います。(あるいはフジネコか)

ここは1時間勝負ということにし、三人三様に散開して突入。10分に1頭採るぞと意気込みました。

そしたら最初の10分でついに。

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フジコブヤハズカミキリ ♀ (カミキリムシ科)


体長18.5mm。枝先にひっかかっていたイタヤカエデの葉にいたようです。

まだたくさん葉っぱが乗っかっていたので、近くにいたHくんを呼び、叩いてもらいましたが追加なし。

でも俄然テンション上昇したので、あと50分で5頭採るぞとギアを上げました。

ところが、物件はかなりあったにもかかわらず、追加できませんでした。

代わりにこのゴミムシはいくつか採れました。

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ホソヒラタゴミムシ (オサムシ科)


体長14.5mm。すべて梢から落ちてきたので、ヤホシと同様に樹上性なのだと思います。

物件はまだありましたが1時間経ったので車へ戻ると、Tさんが2頭目を採ってました。

さらに登るかどうか、話し合いの結果、降ることに。

登ってくる途中、マルバダケブキが道路沿いに茂っているエリアがあったのでそこへ向かいました。

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最寄りの駐車場へ停車して、今度は30分勝負。

枯れたマルバダケブキの群落を攻めていきましたが、さすがに道路脇なのでいそうな感じではない。

早々に見切って林の中へ入りましたが、今度は物件がない。

でも枯葉の乗っている枝を叩いていると、意外なのが落ちてきました。それが扉の写真の種。

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ドロハマキチョッキリ ♀(オトシブミ科)


体長約6mm。写真では分かりにくいですが、鞘翅の肩と後方に赤班がありました。

そのような斑紋があるものは以前、ベニモンハマキチョッキリと呼ばれていたようです。

いずれにしても、オトシブミがこの時期にいるというのが不思議でなりません。

オトシブミの仲間は初夏(5~6月)に観察するものだという固定観念を覆されました。

ちょっと調べてみると、ドロハマキは生態の全容がまだよく分かっていないようです。

ちなみに名前の由来はドロノキにつくからですが、コナラ、カエデ、ノブドウ、イタドリなどにも。

何の葉を利用するにしても、枯れる前に揺籃を作る必要があるから、この標高では時期的に限界かと。

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結局、誰も追加することができないまま、陽が傾いてきたので最後のトライをすべくさらに降りました。

地図で目星を付けた場所へ到着すると、なんと道端に剪定されて枯れたヤマハンノキの枝が山積み。

しかも多数。

「先にここに来ればよかったー」と叫ぶ三人。

しかしこれはボーナスステージの大チャンスだと思い、遮二無二枯れ木の山へ取り付きました。

もう叩く必要はないので、素手で枯葉の中を探っていきましたが、コブどころか何も出てこない。

誰も何も採れない。

少し移動したところにも同様に剪定木が野積みになっていたので、三人でかじりつきましたが・・

やはり何も出ないまま、とうとうタイムアップ。

遠く愛鷹山塊の影がうら寂しく見えました。

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道端に狂い咲きしていた花を眺めながら、がっくりと腰を下ろす三人でした。

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ヤマホタルブクロ


ちなみにコブヤハズは飛べないので、利用できる材が多数あったとしてもすぐに集まることはできません。

なので、元々この場所には分布していないのではないかということにしておきました。(負け惜しみ)

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御殿場まで戻ってファミレスで反省会。

この日唯一採れたコブヤハズのオスを三人で眺めながら、悔しさと両腕の筋肉痛をかみしめました。

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フジコブヤハズカミキリ ♂ (カミキリムシ科)


ある意味コブ叩きはオサ掘りよりもきびしいかも。




オマケ


連れて帰った翌日までは生きていたのですが、霧吹きしたら水滴で溺れてしまいました。

元気に歩いていたのに弱っていたのかな・・標本にするために仮展肢。

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コブ叩きもいいけど、あらためてチョッキリ叩きをしたい。




今日の湯加減

今週、泌尿器科を再受診したところ、石は尿管から腎臓へ帰宅してました。
おかげで痛みは全くないものの、また落ちてくるのではないかと心配なのに経過観察になった。
しかも投薬も不要とのこと。(どうして?)
リンパの方の診断が優先されるようだけど、シロクロ付けるには手術が必要。
セカンドオピニオンを得るべく、もう一度血液内科の医師に相談してみようと思っています。


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コメント 9

高和です。

コブというと、今の小生はコブナナフシで決まりですが、コブヤハズというのもいましたね。飛べないカミキリですが、ゼフさんは飛べない虫にご縁がありますね。イシの件はおもやみですね、お察しします。お大事に・・・
by 高和です。 (2022-10-16 15:06) 

響

山ではぐれると心配になりますね。
虫探ししてると知らない間にどんどん進んじゃうの
判ります。
by (2022-10-16 16:51) 

ぜふ

>高和です。さん
なので宝の山に見えた場所にはいなかったのだということにしました^^
やはりコブよりもオサの方が向いているかも・・

>響さん
大丈夫とは思っていても、もしやと考えてしまいますね。
電波ない場合が多いし・・^^;
by ぜふ (2022-10-16 18:51) 

engrid

確かに山猫です、厳しい環境で自立しているのでしょうから、、ヤホシゴミムシ、色鮮やかです   フジコブヤハズカミキリ、すっかり葉に同化していますね、堂々とした構えの姿で、皆さんに注目されてるのね
by engrid (2022-10-17 21:35) 

ぼんぼちぼちぼち

ヤマトデオキノコムシ、ちょっとテントウムシみたいな色と柄でやすね!
by ぼんぼちぼちぼち (2022-10-18 09:46) 

ぜふ

>engridさん
元々は飼い猫だったのでしょうけど逞しく生きているようでした。
フジコブはひっそりと生きているのだと思いますが、逆にそれ故に人気があるのかもしれません。

>ぼんぼちぼちぼちさん
たしかに、テントウムシは水玉模様が多いですが、ナミテントウはまれにバットマン模様がありますね!^^
by ぜふ (2022-10-19 21:56) 

sakamono

誰かの仕掛けたトラップがそのままに。私なら見過ごしてしまうと
思いますが、今後、林の中でこういうものを見かけたら、トラップ
なんだと分かります^^;。ドロハマキチョッキリ、とてもキレイです。
by sakamono (2022-10-20 11:53) 

ぜふ

>sakamonoさん
特殊なトラップで場所も特殊なので見つけたらラッキーかもしれません。
秋に活動するのはドロハマキだけなのか、それとも・・・興味津々です。
by ぜふ (2022-10-21 22:07) 

アヨアン・イゴカー

綺麗な虫たちですね。
ドロハマキチョッキリ、それにしても何と面白い名前^^
by アヨアン・イゴカー (2022-10-23 13:36) 

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