"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
巡礼山行 [遠征]
前記事の湯加減で触れたとおり、先週末から二泊三日で道南へ遠征してきました。
山行の途中でも虫は採り、オプションで別ポイントでもトラップ採集したのですが主目的は登山。
正確には、Tさんの作品制作のための取材山行に紛れ込ませていただいたというところです。

後で知りましたが、選んだルートは上級者コースで初心者にはかなり過酷でした。
当初は6月の予定だったのが天候不良により何度か延期された末、ついに実行されることになりました。
某出版社が主催する取材山行にどうして参加することになったかの説明は割愛します。
ただ、延期されてこの日に催行されることになったので同行することができました。
さて、9月16日の朝、東京発の新幹線はやぶさに乗り、一路終点の新函館北斗駅へ。
山行への期待と初めての北海道新幹線という高揚感で4時間はまさにあっという間でした。
ちなみに乗車率は、区間によっては100%(全車両指定席なのですが立席もある)。

駅前でレンタカーを借り、Tさんの運転でいきなりオプションツアーに向けて移動開始。
(実は山行よりむしろオプションツアーが楽しみだったことは追々バレるかと)
昼食は途中のコンビニで調達し、松前半島を目指して南下。
木古内町~知内町~福島町と進み、山へ向けて突入したルートは作業路のような細いガタゴト道でした。
幸い泥濘んでいる箇所はほとんどなく、対向車が来ることもなく、無事に山頂付近に到着。

と、一台のバンが停車していて、何かの調査をしているのではないかと思われました。
作業着姿の方が二人立っていたので、Tさんが声を掛けると、どうやら風力発電関係の環境調査のよう。
さて、オプションというのはオサトラで、この広いフィールドが採集ポイントです。
(ここが採集禁止エリアでないことは事前に確認済み)

さっそくTさんと二手に分かれ、それぞれのトラップをそれぞれのやり方でセットしていきました。
植林場所ですがシカも多いようで、あちこちに糞が落ちていて、新しそうなのをほじほじすると。

糞虫さがしもしたいところですが、後発隊との待ち合わせもあり、設置し終わったところで下山。
トラップの回収は山行の翌日のお楽しみ。

木古内のホテルで別の出版社の方や取材メンバーと合流し、一緒に夕食を食べに出かけて一旦解散。
翌早朝、いよいよ山行に向けて出発。
朝ぼらけの駐車場で一匹のバッタが見送ってくれました。

また途中のコンビニで朝食と昼食を調達し、松前半島へ向かいます。
国道からはずれて、山道を6キロほど進むと登山口に着きました。

それぞれ装備を整えつつ、ばらけて朝食を食べていると、一台の車がやってきました。
苫小牧ナンバーのジムニーを運転していたのは若い女性で同行者はなし。
この山は初めてとのことでしたが、装備などを見る限り相当なベテランのようでした。

さあ、いよいよ山登りスタート。
いきなり渡渉の連続でしたが、幸い増水はしてないようで、長靴に履き替えなくてもなんとかなる。
こんな急な沢越えも繰り返すので、むしろトレッキングシューズの方が安心できました。

山登りは素人なのでメンバーに迷惑にならない様、道草は食えませんが、道中に観察したものを少し。
ぽつんと咲いていました。

北海道らしい虫はどうしても無視できない。
じっくり撮影する余裕はないので証拠写真だけ。

ハッカハムシ オオヨモギハムシ(ハムシ科)
(追記)ハッカハムシだと思ってたらTさんが教えてくれました。道理でフキの葉の上にいたわけだ。
これも北海道らしい生物のようです。(東北地方北部にも生息)

これも”らしい”ものかと思って、Tさんに確認したら普通のショウマでした。

この花にカメラを向けていると、その数メートル先の地面の何かが揺れたのにコンチューターが反応。
反射的に藪の中へ足が進んでしまい、動いた落ち葉の周辺を探ると・・意外な生物を見つけました。

北海道らしい虫たちのおかげで、ここまでの疲れは吹っ飛びました。

この後も渡渉や崖歩きを繰り返し、また森の中へ入り、出発から2時間余りで着いた番所で休憩。

ここはTさんにとっては聖地。周りはこんな様子です。

この後もしばらく、モイスチャーで満たされた森の中の登山道を進みました。
ずっと遅れ気味なので周辺の様子を眺める余裕などなく、帽子の廂から汗を滴らせながら登ります。
でも、こういう山野草を足元に見つけると、歩きながらでも撮りたくなってしまいます。
これはカモメヅルの仲間でしょうか。

これを見つけたときは、ギンリョウソウだと声が出てしまいましたが、Tさんが教えてくれました。

まさに秋に咲くギンリョウソウということでしょう。別名ギンリョウソウモドキ。
これは道中所々で見かけましたが正確な同定は不能。

ここまで約3時間、すぐにまた河原に出ました。

広いガレ場という感じでもありますが、ここを登っていくと沢が二又になりました。
そこからはもう渡渉がないということで、メンバーは長靴などをデポジットしつつ休憩タイム。

結局トレッキングシューズのまま、ここまで来てしまったので、荷物はそのままで再出発しました。
ところが、ここから急登の連続で、ほぼ垂直なロープ場もあり、険しさが格段にアップ。
すぐに息が上がってきて、同行者の勧めもあり、長靴を置いて行くことに。
おそらく長靴の重さは2キロもないでしょうけど、身軽になったことがはっきりと分かる。
それだけ足にきていたのだと思いますが、なんとか難所の途中の休憩場所まで辿り着きました。
水分補給はもちろん、飴をなめて糖分も補給。
足に溜まった乳酸は減らないし、笑顔も苦笑いになるけれど、気持ちはリフレッシュして再出発。
この野草は小さく笑顔で励ましてくれているように見えました。

ここからは笹藪の斜面で、右へ左へとゆるく巻いていくのですが、巻いても巻いても先が見えない。
あの先を巻けば、開けると思いきや、延々と同じ状況を繰り返す「山登りあるある」の連続。
しかも、ここに来て左腿が攣りそうになってきてスピードダウンしてしまいました。
これも小さな花ですが、はじめて見たので現地同定できず。後で調べたところこれかなと。

殿を務めるメンバーに迷惑をかけたくないと思いつつも、無理してはいけないと思い、休憩を申請。
笹藪の中の細い坂道の地べたに座って水分補給しました。
糖分補給にもらった黒糖が効いたのか、少し元気が出たので立ち上がろうとしたときでした。
すぐ後ろに座っていたメンバーが上体を起こそうとして体のバランスを崩して後ろに傾いた。
しかし、背後の笹の向こうはまるでボブスレーのコースのような、細くて深い涸れ沢でした。
2メートルほどの落差がありましたが、笹の枯葉が堆積していたのとリュックを背負っていたのが幸い。
笹に遮られて上から姿は見えませんでしたが、声を掛けると大丈夫との返事。
少し登れば手が届きそうだったので、なんとかそこまで這い上がってもらいました。
伸ばした手を掴んで引き上げようとしましたが、今度は足元が柔らかすぎて足が踏ん張れない。
落ち着いて踏ん張りなおし、もう一度、殿のメンバーの手も借りて無事に引き上げることができました。
頭を打ってないか、手足の可動に問題はないか確認し、ほっと一安心して皆で心を落ち着けました。
と、その時、すそ野を見下ろすと、それまでガスで真っ白だった視界がみるみるうちにクリアに。
即興でこの現象を”H川効果”と名付けました。

ちょうどタイミングよく、遅れていることを心配した先行メンバーから安否確認があり状況報告。
心配ないことを告げて再出発しましたが、そこからまさに胸突き八丁でした。
酸欠も気になったので、大きく息を吐くことに集中してゆっくり進んでいきました。
でも、ほどなく傾斜がゆるくなり、しばらく進むと山頂が見えてきた。

先行隊は奥のピークに向かっていましたが、こちらは無理をせず、というか無理なのでここでゴール。
北側はこんな様子でした。

夏は一面お花畑になるとのことですが、ぽつぽつと可憐なギフトが白く彩っていました。

山頂部は冷たい北風が吹きすさび、あっという間に汗が冷えてきたので防寒具を着つつしばし休息。
風をよけるためにこの標識の前に陣取っておにぎりを食べていました。

何気なく(ホントは期待を込めて)、足元の下草を掻き分けると、おや怪しい穴が。

これはセンチの巣穴に違いないと判断し、ここに文字通り腰を据えて見張ることに。
ザンネンながら結局、穴の主は現れることなく、山頂での取材も終わり下山の時間となりました。
記念の集合写真を撮って出発した途端、後方からオサムシがいたという声が。
こういう時は何故か足が動いて坂を引き返すと、岩陰にじっとする小さな黒い個体。

弱っていたのでじっと動かなかったようです。

笹藪を通過中、今度は同道していたカメラマンが足を踏み外して涸れ沢に落ちました。
幸い、また段差は2メートルほどだったこともあり、自力で這い上がることができました。
笹藪を抜けるところで見晴らしが開けて、やっと下界を望めました。

お昼休憩でリカバリーできたのと、下りは足の筋が反対に伸びるので、どうにか遅れずに進めました。
ただ、踏ん張りがきかないので、急斜面はお尻も使って四点支持で。
ロープ場もクリアし、ヘンゼルの長靴も回収して、河原まで降りてきました。
せっかくなので長靴に履き替え、小休止したあと、ガレ場を進むことしばし。
先行していたTさんが河原で砂金採りをしているのを横目に岩の下や水際をちょっと探虫。
岸辺の岩陰にこの日はじめてのバッタを発見。

それを撮っていると目の前の岩の上にコオロギの仲間。

やっと虫を探す余裕が出てきたと思いきや。

復路の行程としてはまだ半ば。
長靴を履いたおかげで渡渉は楽でしたが、急な沢を巻いて行くのは逆に辛くなりました。
実は河原の岩につま先をぶつけて両足の親指が詰まってたこともあり。
同行の若いメンバーさえぼやいていたほど、急な沢渡の連続は無限ループのように感じるほど。
(往路はまだ元気があったので、ほとんど苦ではなかったのでしょうね)
とにかく復路の後半は、またも周辺の様子を観察する余裕もなくなるほどヨレヨレに。
最後の渡渉のあと、普通の林道に入り、もう間もなく登山口というところの地面にご苦労さん虫がいた。

疲れが吹っ飛んだとは言えないまでも、やっぱり虫を見つけると気分は晴れやかに。
全員無事に下山できたことを喜びながら、取材山行は終了となりました。

さて、その翌日はホテルで朝食を摂ってからトラップ回収に出発。
足がパンパンなので、運転代わりましょうかとTさんに言うことができないまま現地着。

GoogleMapと見比べると、昨日登った山と思しきピークも遠望できました。

曇っていますが一昨日とは打って変わって気温と湿度が高い。
ちょっとした坂道を下るのも辛いほどで、コップを取るために屈伸運動をするたびに呻いてしまう。
でも、クロオサムシとコクロナガオサムシは大漁。

この姿を見たときは来た甲斐があったと感じました。
マイマイカブリの北海道亜種、エゾマイマイです。

昨日、穴から出てこなかった子も2頭見られました。

これもトラップにかかっていたのではなく、匂いにつられて近くに着地した子。

大本命は採れませんでしたが、とてもいい経験と思い出になりました。

今度はオプションではなく、一週間くらいかけてオサムシ採りに来ましょうとTさん。
望むところです。
新函館北斗駅へ向かう途中、とうとう雨が降ってきましたが、おかげで車の泥が落ちました。
新幹線の乗車まであまり余裕なかったので、何かのイベントで集結していたキッチンカーで昼食仕入れ。
最後に見送ってくれたのは(到着時も気になっていた)ご当地キャラ。

いわゆるキモカワのタイプだと思いますが、北寄貝の寿司がモチーフなのだそう。
そうだ、今度来たときは寿司を食べなきゃ。(イカは食べた)
今日の湯加減
山行の途中でも虫は採り、オプションで別ポイントでもトラップ採集したのですが主目的は登山。
正確には、Tさんの作品制作のための取材山行に紛れ込ませていただいたというところです。

目指すは左奥に見えるピーク
後で知りましたが、選んだルートは上級者コースで初心者にはかなり過酷でした。
当初は6月の予定だったのが天候不良により何度か延期された末、ついに実行されることになりました。
某出版社が主催する取材山行にどうして参加することになったかの説明は割愛します。
ただ、延期されてこの日に催行されることになったので同行することができました。
さて、9月16日の朝、東京発の新幹線はやぶさに乗り、一路終点の新函館北斗駅へ。
山行への期待と初めての北海道新幹線という高揚感で4時間はまさにあっという間でした。
ちなみに乗車率は、区間によっては100%(全車両指定席なのですが立席もある)。

駅前でレンタカーを借り、Tさんの運転でいきなりオプションツアーに向けて移動開始。
(実は山行よりむしろオプションツアーが楽しみだったことは追々バレるかと)
昼食は途中のコンビニで調達し、松前半島を目指して南下。
木古内町~知内町~福島町と進み、山へ向けて突入したルートは作業路のような細いガタゴト道でした。
幸い泥濘んでいる箇所はほとんどなく、対向車が来ることもなく、無事に山頂付近に到着。

と、一台のバンが停車していて、何かの調査をしているのではないかと思われました。
作業着姿の方が二人立っていたので、Tさんが声を掛けると、どうやら風力発電関係の環境調査のよう。
さて、オプションというのはオサトラで、この広いフィールドが採集ポイントです。
(ここが採集禁止エリアでないことは事前に確認済み)

さっそくTさんと二手に分かれ、それぞれのトラップをそれぞれのやり方でセットしていきました。
植林場所ですがシカも多いようで、あちこちに糞が落ちていて、新しそうなのをほじほじすると。

ツノコガネ ペア (コガネムシ科)
糞虫さがしもしたいところですが、後発隊との待ち合わせもあり、設置し終わったところで下山。
トラップの回収は山行の翌日のお楽しみ。

木古内のホテルで別の出版社の方や取材メンバーと合流し、一緒に夕食を食べに出かけて一旦解散。
翌早朝、いよいよ山行に向けて出発。
朝ぼらけの駐車場で一匹のバッタが見送ってくれました。

クサキリ (バッタ科)
また途中のコンビニで朝食と昼食を調達し、松前半島へ向かいます。
国道からはずれて、山道を6キロほど進むと登山口に着きました。

それぞれ装備を整えつつ、ばらけて朝食を食べていると、一台の車がやってきました。
苫小牧ナンバーのジムニーを運転していたのは若い女性で同行者はなし。
この山は初めてとのことでしたが、装備などを見る限り相当なベテランのようでした。

さあ、いよいよ山登りスタート。
いきなり渡渉の連続でしたが、幸い増水はしてないようで、長靴に履き替えなくてもなんとかなる。
こんな急な沢越えも繰り返すので、むしろトレッキングシューズの方が安心できました。

山登りは素人なのでメンバーに迷惑にならない様、道草は食えませんが、道中に観察したものを少し。
ぽつんと咲いていました。

ジャコウソウ
北海道らしい虫はどうしても無視できない。
じっくり撮影する余裕はないので証拠写真だけ。

(追記)ハッカハムシだと思ってたらTさんが教えてくれました。道理でフキの葉の上にいたわけだ。
これも北海道らしい生物のようです。(東北地方北部にも生息)

ブドウマイマイ
これも”らしい”ものかと思って、Tさんに確認したら普通のショウマでした。

サラシナショウマ
この花にカメラを向けていると、その数メートル先の地面の何かが揺れたのにコンチューターが反応。
反射的に藪の中へ足が進んでしまい、動いた落ち葉の周辺を探ると・・意外な生物を見つけました。

コエゾゼミ (セミ科)
北海道らしい虫たちのおかげで、ここまでの疲れは吹っ飛びました。

この後も渡渉や崖歩きを繰り返し、また森の中へ入り、出発から2時間余りで着いた番所で休憩。

ここはTさんにとっては聖地。周りはこんな様子です。

この後もしばらく、モイスチャーで満たされた森の中の登山道を進みました。
ずっと遅れ気味なので周辺の様子を眺める余裕などなく、帽子の廂から汗を滴らせながら登ります。
でも、こういう山野草を足元に見つけると、歩きながらでも撮りたくなってしまいます。
これはカモメヅルの仲間でしょうか。

未同定
これを見つけたときは、ギンリョウソウだと声が出てしまいましたが、Tさんが教えてくれました。

アキノギンリョウソウ
まさに秋に咲くギンリョウソウということでしょう。別名ギンリョウソウモドキ。
これは道中所々で見かけましたが正確な同定は不能。

トリカブトの仲間
ここまで約3時間、すぐにまた河原に出ました。

広いガレ場という感じでもありますが、ここを登っていくと沢が二又になりました。
そこからはもう渡渉がないということで、メンバーは長靴などをデポジットしつつ休憩タイム。

結局トレッキングシューズのまま、ここまで来てしまったので、荷物はそのままで再出発しました。
ところが、ここから急登の連続で、ほぼ垂直なロープ場もあり、険しさが格段にアップ。
すぐに息が上がってきて、同行者の勧めもあり、長靴を置いて行くことに。
おそらく長靴の重さは2キロもないでしょうけど、身軽になったことがはっきりと分かる。
それだけ足にきていたのだと思いますが、なんとか難所の途中の休憩場所まで辿り着きました。
水分補給はもちろん、飴をなめて糖分も補給。
足に溜まった乳酸は減らないし、笑顔も苦笑いになるけれど、気持ちはリフレッシュして再出発。
この野草は小さく笑顔で励ましてくれているように見えました。

ダイモンジソウ
ここからは笹藪の斜面で、右へ左へとゆるく巻いていくのですが、巻いても巻いても先が見えない。
あの先を巻けば、開けると思いきや、延々と同じ状況を繰り返す「山登りあるある」の連続。
しかも、ここに来て左腿が攣りそうになってきてスピードダウンしてしまいました。
これも小さな花ですが、はじめて見たので現地同定できず。後で調べたところこれかなと。

クロバナヒキオコシ
殿を務めるメンバーに迷惑をかけたくないと思いつつも、無理してはいけないと思い、休憩を申請。
笹藪の中の細い坂道の地べたに座って水分補給しました。
糖分補給にもらった黒糖が効いたのか、少し元気が出たので立ち上がろうとしたときでした。
すぐ後ろに座っていたメンバーが上体を起こそうとして体のバランスを崩して後ろに傾いた。
しかし、背後の笹の向こうはまるでボブスレーのコースのような、細くて深い涸れ沢でした。
2メートルほどの落差がありましたが、笹の枯葉が堆積していたのとリュックを背負っていたのが幸い。
笹に遮られて上から姿は見えませんでしたが、声を掛けると大丈夫との返事。
少し登れば手が届きそうだったので、なんとかそこまで這い上がってもらいました。
伸ばした手を掴んで引き上げようとしましたが、今度は足元が柔らかすぎて足が踏ん張れない。
落ち着いて踏ん張りなおし、もう一度、殿のメンバーの手も借りて無事に引き上げることができました。
頭を打ってないか、手足の可動に問題はないか確認し、ほっと一安心して皆で心を落ち着けました。
と、その時、すそ野を見下ろすと、それまでガスで真っ白だった視界がみるみるうちにクリアに。
即興でこの現象を”H川効果”と名付けました。

ちょうどタイミングよく、遅れていることを心配した先行メンバーから安否確認があり状況報告。
心配ないことを告げて再出発しましたが、そこからまさに胸突き八丁でした。
酸欠も気になったので、大きく息を吐くことに集中してゆっくり進んでいきました。
でも、ほどなく傾斜がゆるくなり、しばらく進むと山頂が見えてきた。

先行隊は奥のピークに向かっていましたが、こちらは無理をせず、というか無理なのでここでゴール。
北側はこんな様子でした。

夏は一面お花畑になるとのことですが、ぽつぽつと可憐なギフトが白く彩っていました。

ウメバチソウ
山頂部は冷たい北風が吹きすさび、あっという間に汗が冷えてきたので防寒具を着つつしばし休息。
風をよけるためにこの標識の前に陣取っておにぎりを食べていました。

何気なく(ホントは期待を込めて)、足元の下草を掻き分けると、おや怪しい穴が。

これはセンチの巣穴に違いないと判断し、ここに文字通り腰を据えて見張ることに。
ザンネンながら結局、穴の主は現れることなく、山頂での取材も終わり下山の時間となりました。
記念の集合写真を撮って出発した途端、後方からオサムシがいたという声が。
こういう時は何故か足が動いて坂を引き返すと、岩陰にじっとする小さな黒い個体。

ヒメクロオサムシ (オサムシ科)
弱っていたのでじっと動かなかったようです。

笹藪を通過中、今度は同道していたカメラマンが足を踏み外して涸れ沢に落ちました。
幸い、また段差は2メートルほどだったこともあり、自力で這い上がることができました。
笹藪を抜けるところで見晴らしが開けて、やっと下界を望めました。

お昼休憩でリカバリーできたのと、下りは足の筋が反対に伸びるので、どうにか遅れずに進めました。
ただ、踏ん張りがきかないので、急斜面はお尻も使って四点支持で。
ロープ場もクリアし、ヘンゼルの長靴も回収して、河原まで降りてきました。
せっかくなので長靴に履き替え、小休止したあと、ガレ場を進むことしばし。
先行していたTさんが河原で砂金採りをしているのを横目に岩の下や水際をちょっと探虫。
岸辺の岩陰にこの日はじめてのバッタを発見。

ハネナガフキバッタ (バッタ科)
それを撮っていると目の前の岩の上にコオロギの仲間。

未同定
やっと虫を探す余裕が出てきたと思いきや。

復路の行程としてはまだ半ば。
長靴を履いたおかげで渡渉は楽でしたが、急な沢を巻いて行くのは逆に辛くなりました。
実は河原の岩につま先をぶつけて両足の親指が詰まってたこともあり。
同行の若いメンバーさえぼやいていたほど、急な沢渡の連続は無限ループのように感じるほど。
(往路はまだ元気があったので、ほとんど苦ではなかったのでしょうね)
とにかく復路の後半は、またも周辺の様子を観察する余裕もなくなるほどヨレヨレに。
最後の渡渉のあと、普通の林道に入り、もう間もなく登山口というところの地面にご苦労さん虫がいた。

ミヤマクワガタ ♀ (クワガタムシ科)
疲れが吹っ飛んだとは言えないまでも、やっぱり虫を見つけると気分は晴れやかに。
全員無事に下山できたことを喜びながら、取材山行は終了となりました。

さて、その翌日はホテルで朝食を摂ってからトラップ回収に出発。
足がパンパンなので、運転代わりましょうかとTさんに言うことができないまま現地着。

GoogleMapと見比べると、昨日登った山と思しきピークも遠望できました。

曇っていますが一昨日とは打って変わって気温と湿度が高い。
ちょっとした坂道を下るのも辛いほどで、コップを取るために屈伸運動をするたびに呻いてしまう。
でも、クロオサムシとコクロナガオサムシは大漁。

クロオサムシ 基亜種 (オサムシ科)
この姿を見たときは来た甲斐があったと感じました。
マイマイカブリの北海道亜種、エゾマイマイです。

昨日、穴から出てこなかった子も2頭見られました。

センチコガネ (センチコガネ科)
これもトラップにかかっていたのではなく、匂いにつられて近くに着地した子。

エンマコガネの仲間
大本命は採れませんでしたが、とてもいい経験と思い出になりました。

今度はオプションではなく、一週間くらいかけてオサムシ採りに来ましょうとTさん。
望むところです。
オマケ
新函館北斗駅へ向かう途中、とうとう雨が降ってきましたが、おかげで車の泥が落ちました。
新幹線の乗車まであまり余裕なかったので、何かのイベントで集結していたキッチンカーで昼食仕入れ。
最後に見送ってくれたのは(到着時も気になっていた)ご当地キャラ。

ずーしーほっきー
いわゆるキモカワのタイプだと思いますが、北寄貝の寿司がモチーフなのだそう。
そうだ、今度来たときは寿司を食べなきゃ。(イカは食べた)
今日の湯加減
今日、精密検査の結果を聞きに行ってきました。
シロかクロが心配だったのですが、結果はまさかのグレー。つまり診断つかず。
紹介状を書いてもらい、別の病院を受診することになりました。
一方で石の方は幸いずっと落ち着いていますが、こっちは再来週に再検査。
ということで、まだ検査地獄は続きます。やれやれ。
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
遠征お疲れさまでした。山登りのついでにしてはかなりの手応えでしたね、おめでとうございます。エゾマイマイ、よいですね。以前、長女が大当たりした大沼のホテルに行こうとしたら、コロナ禍で閉館してました。
by お名前(必須) (2022-09-27 11:27)
先ほど操作を誤り、名無しのまま送信に触れてしまいました。ホテル閉管は残念の極みです。敷地内に虫道があって、エゾミヤマクワガタベア、エゾマイマイカブリ、セダカオサなどがつぎつぎにやってきた、と興奮冷めやらぬ報告でした。
by 高和です。 (2022-09-27 19:10)
ちょっとしたアクシデントがあったり、文章を読むだけでもハードな
山行だったように感じられます。私も昔、ハードな山行の翌日、足が
がくがくになった経験があります^^;。
コエゾゼミのくっきりした模様のコントラストが、とてもキレイです。
by sakamono (2022-09-29 21:18)
なかなかにハードな遠征、お疲れ様です、でもつい撮りたくなる、探したくなる、その心情わかります、そうなんですよね、疲れた、しんどいな、なんて思っても、やはり出かけたくなるのです、
by engrid (2022-09-30 00:16)
>高和です。さん
ホテル閉館はざんねんですが環境がそのままだといいですね。
その虫道がそのままあれば^^
>sakamonoさん
復路を無事に踏破できたことは不思議なくらいです。
コエゾゼミの薄黄色は爽やかでした♪
>engridさん
余裕はないのにほぼ反射的に写真を撮ってました。
でかけることができるなら、でかけるべきですね^^
by ぜふ (2022-10-01 23:33)