"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
梅雨と虫たちの消長 [探虫行]
房総横断の旅の後半の前に、今年前半のオサ・ゴミ・イトトンボ探しの記事をまた書いておきます。
春に行きそびれた外房のポイントと、ご無沙汰しているHFへ行くのが目的で。
結果的にオサ・ゴミ・イトトンボ観察になったというだけです。
ごく普通種でもイトトンボはどうしても撮りたくなります。
梅雨が明けた7月1日の午後、春から通っていた外房の谷津田の見納めに行くことにしました。
見納めと言っても、きっとまた(少なくとも年内には)行くと思いますが。
ささっと準備して玄関のドアを開けると、自宅でははじめての来客がありました。
平日で道はそこそこ混んでいるし、下道は幹線道路をあまり通らないので、時間距離が遠い。
脇目も振らず1時間半ほど走り、ピンポイントで小さな小さな湿地に到着。
何かいないかな、いや何がいるかなぁと、縁に沿って歩いていたら、想定外の群れがいました。
湿地の水が少し減っているようで、そのために水辺に集まっていたのだと思います。
小さいのでヒメハンミョウかと思いながら、忍び足で湿地の内側から近づいて観察すると。
ニワやコニワの群れは見たことがありますが、コハンミョウははじめて。
大群だったので新成虫の発生時期なのでしょう。ちゃんと同定しようと、1ペアだけ採集しました。
ほぼ這いつくばって撮影していたので、ゴミムシが目の前を走っていくのにも気が付きました。
眼で追っていると土塊の陰に入ったので、這いつくばったまま地面の高さから覗きました。
先日トラップを仕掛けた地点も見て回りましたが、もうすっかり草ぼうぼうでした。
たった半月程度で足を踏み入れづらくなるとは、植物の成長速度には驚かされます。
もう一つの谷津田にもまわりました。
こっちの方が人里離れているのに生き物の気配がしませんが、ここでもさっきの子を発見。
とても広い耕作放棄地なのに、トンボ類がいないのが寂しい限り。長居はせずに離脱しました。
そう、この日の主たる目的は、多分今年前半最後となるオサゴミトラップを設置すること。
その目的地は時間が足りなくて行きそびれていた場所。
一度だけ行ったことのある、外房方面の谷津田ではなく、郊外の森の中の廃道。
外房では珍しいと思われる、広域な森林で、山道の長さも数キロにわたります。
南側の入口はこんな様子。
薄暗い未舗装の山道(といってもほぼ平らな道)が延々と続きます。
周囲の植生などを見ながら、3か所に数個ずつベイトトラップを仕掛けました。
歩いている途中でハグロトンボも見かけたのですが、撮らせてくれたのはこの子だけでした。
なぜ前半最後になるかというと、こういう場所はそろそろヤブ蚊たちが大勢出てくるから。
成果については後述します。
翌日は早起きして、外房へ向かいつつ、まずは途中のHFへ。
この時期はアプローチの道の途中に毎年この花が咲きます。
田んぼに着いてみると、もう畔で作業をしている人影が。
HFの谷津田の保全活動をしている、見覚えのあるボランティアの方でした。
早朝からお疲れさまですと挨拶すると、覚えてくれていたようで。
「今週と来週、ホタル観察会があるのでよかったら来てください」
とお誘いされました。(どちらも平日だったこともあり参加できませんでした)
ハンノキ林に行ってみると、こんな花が咲いていました。
ひょっとしたらゼフたちを撮影できるかもと期待していたのですが、結果的には観察すらできず。
いつも見られるカワトンボの姿もなくて首を傾げながら散策していると、林縁の日陰に。
そうか、もうカワトンボたちのシーズンは終わって、ハグロトンボの季節なんだなと納得。
一旦舞い上がってもらって、御開帳ショットも撮影。
止まって落ち着くまでの数秒間だけ、何度か翅を開閉する習性があるのです。
せっかくなのでオスも。
開いたままで静止するわけではないので、リズムをとりながらタイミングを計ってパチリ。
前日メスは観察しましたが、このトンボはこの数年、各地で増えている印象があります。
前記事のイトトンボ湿地でも、紹介はしませんでしたがたくさんいました。
それと、これからはこの子たちのシーズンでもあります。
トンボに限らず、羽化直後で体色や翅の色が薄くて、ごく未熟な状態をテネラルといいます。
体が固まっていないし、見た目からして弱々しくて妖精のようです。
そろそろ撤収しようかと、田んぼの中の畔をトレースしながらベニシジミ号へと向かっていると。
見つけたのが扉の写真のペアでした。
彼らはもちろん成熟した個体ですが、イトトンボはいつまでも繊細で儚く見えます。
シオカラトンボもいましたが、オオシオカラの方が多かったような気がします。
せっかく一眼レフも持ってきたけど出番がなかったなとキャリアにしまいながら出発準備をしていると。
すぐ傍の林床の葉の上に黄色いトンボがいるのに気が付きました。
アカネの仲間だろうとは思ったのですが、コンチューターの針がピコンと振れている。
どれどれと、静かに近寄ってみると、黄色いのは2頭いて片方はアキアカネですがもう片方は違う。
しかし、これがかなり敏感な個体で、なかなか撮影許可が降りませんでした。
やっとこさ撮れたのがこの写真。
だと思いますが、そうだとするとHFでは初観察。
正面からも撮りたかったのですが、とうとう舞い上がり、逃げられてしまいました。
この後、前述の外房の森の中へ仕掛けたトラップ回収に行きました。
とても報告しやすい成果で、この種だけが多数採れました。
体長は個体差がありますが、だいたい11~14mm。
オオクロツヤとコクロツヤとの見極めが難しいのですが、前者は鞘翅に虹光沢があり、後者は山地性。
この他には、センチがいくつかと小型のゴミムシ類とエンマコガネ類が少し入っていただけ。
実はアオオサが掛かってくれないかなと、期待していたのですが・・・また秋にでも。
オサ・ゴミの成果が芳しくなかったこともあるので、先月キサラヅで採集した子を紹介します。
体長わずか6mm弱。これも図鑑では鞘翅に虹光沢ありと書かれていて自信がなかったのですが・・
T大のK先生に見ていただいたところ、そうだろうということでした。
特に珍しい種ではないのに、お手を煩わせて恐縮至極。K先生、ありがとうございました。
昨日の湯加減
(追記)9月初めに気象庁は梅雨明け時期の訂正をし、関東地方は7月23日とされました。やっぱりね。
春に行きそびれた外房のポイントと、ご無沙汰しているHFへ行くのが目的で。
結果的にオサ・ゴミ・イトトンボ観察になったというだけです。
アジアイトトンボ(イトトンボ科)
ごく普通種でもイトトンボはどうしても撮りたくなります。
梅雨が明けた7月1日の午後、春から通っていた外房の谷津田の見納めに行くことにしました。
見納めと言っても、きっとまた(少なくとも年内には)行くと思いますが。
ささっと準備して玄関のドアを開けると、自宅でははじめての来客がありました。
ツマグロヒョウモン ♂ (タテハチョウ科)
平日で道はそこそこ混んでいるし、下道は幹線道路をあまり通らないので、時間距離が遠い。
脇目も振らず1時間半ほど走り、ピンポイントで小さな小さな湿地に到着。
何かいないかな、いや何がいるかなぁと、縁に沿って歩いていたら、想定外の群れがいました。
湿地の水が少し減っているようで、そのために水辺に集まっていたのだと思います。
小さいのでヒメハンミョウかと思いながら、忍び足で湿地の内側から近づいて観察すると。
コハンミョウ ペア (オサムシ科)
ニワやコニワの群れは見たことがありますが、コハンミョウははじめて。
大群だったので新成虫の発生時期なのでしょう。ちゃんと同定しようと、1ペアだけ採集しました。
ほぼ這いつくばって撮影していたので、ゴミムシが目の前を走っていくのにも気が付きました。
眼で追っていると土塊の陰に入ったので、這いつくばったまま地面の高さから覗きました。
コガシラアオゴミムシ (オサムシ科)
先日トラップを仕掛けた地点も見て回りましたが、もうすっかり草ぼうぼうでした。
たった半月程度で足を踏み入れづらくなるとは、植物の成長速度には驚かされます。
もう一つの谷津田にもまわりました。
こっちの方が人里離れているのに生き物の気配がしませんが、ここでもさっきの子を発見。
コハンミョウ (オサムシ科)
とても広い耕作放棄地なのに、トンボ類がいないのが寂しい限り。長居はせずに離脱しました。
そう、この日の主たる目的は、多分今年前半最後となるオサゴミトラップを設置すること。
その目的地は時間が足りなくて行きそびれていた場所。
一度だけ行ったことのある、外房方面の谷津田ではなく、郊外の森の中の廃道。
外房では珍しいと思われる、広域な森林で、山道の長さも数キロにわたります。
南側の入口はこんな様子。
薄暗い未舗装の山道(といってもほぼ平らな道)が延々と続きます。
周囲の植生などを見ながら、3か所に数個ずつベイトトラップを仕掛けました。
歩いている途中でハグロトンボも見かけたのですが、撮らせてくれたのはこの子だけでした。
オオシオカラトンボ ♀ (トンボ科)
なぜ前半最後になるかというと、こういう場所はそろそろヤブ蚊たちが大勢出てくるから。
成果については後述します。
翌日は早起きして、外房へ向かいつつ、まずは途中のHFへ。
この時期はアプローチの道の途中に毎年この花が咲きます。
アガパンサス
田んぼに着いてみると、もう畔で作業をしている人影が。
HFの谷津田の保全活動をしている、見覚えのあるボランティアの方でした。
早朝からお疲れさまですと挨拶すると、覚えてくれていたようで。
「今週と来週、ホタル観察会があるのでよかったら来てください」
とお誘いされました。(どちらも平日だったこともあり参加できませんでした)
ハンノキ林に行ってみると、こんな花が咲いていました。
チダケサシ ?
ひょっとしたらゼフたちを撮影できるかもと期待していたのですが、結果的には観察すらできず。
いつも見られるカワトンボの姿もなくて首を傾げながら散策していると、林縁の日陰に。
ハグロトンボ ♀ (カワトンボ科)
そうか、もうカワトンボたちのシーズンは終わって、ハグロトンボの季節なんだなと納得。
一旦舞い上がってもらって、御開帳ショットも撮影。
同上
止まって落ち着くまでの数秒間だけ、何度か翅を開閉する習性があるのです。
せっかくなのでオスも。
同上 ♂
開いたままで静止するわけではないので、リズムをとりながらタイミングを計ってパチリ。
同上
前日メスは観察しましたが、このトンボはこの数年、各地で増えている印象があります。
オオシオカラトンボ ♂ (トンボ科)
前記事のイトトンボ湿地でも、紹介はしませんでしたがたくさんいました。
それと、これからはこの子たちのシーズンでもあります。
オオアオイトトンボ ♀ テネラル
トンボに限らず、羽化直後で体色や翅の色が薄くて、ごく未熟な状態をテネラルといいます。
体が固まっていないし、見た目からして弱々しくて妖精のようです。
そろそろ撤収しようかと、田んぼの中の畔をトレースしながらベニシジミ号へと向かっていると。
見つけたのが扉の写真のペアでした。
アジアイトトンボ ペア (イトトンボ科)
彼らはもちろん成熟した個体ですが、イトトンボはいつまでも繊細で儚く見えます。
同上
シオカラトンボもいましたが、オオシオカラの方が多かったような気がします。
せっかく一眼レフも持ってきたけど出番がなかったなとキャリアにしまいながら出発準備をしていると。
すぐ傍の林床の葉の上に黄色いトンボがいるのに気が付きました。
アカネの仲間だろうとは思ったのですが、コンチューターの針がピコンと振れている。
どれどれと、静かに近寄ってみると、黄色いのは2頭いて片方はアキアカネですがもう片方は違う。
しかし、これがかなり敏感な個体で、なかなか撮影許可が降りませんでした。
やっとこさ撮れたのがこの写真。
ヒメアカネ ♂ 未成熟(トンボ科)
だと思いますが、そうだとするとHFでは初観察。
正面からも撮りたかったのですが、とうとう舞い上がり、逃げられてしまいました。
この後、前述の外房の森の中へ仕掛けたトラップ回収に行きました。
とても報告しやすい成果で、この種だけが多数採れました。
クロツヤヒラタゴミムシ (オサムシ科)
体長は個体差がありますが、だいたい11~14mm。
オオクロツヤとコクロツヤとの見極めが難しいのですが、前者は鞘翅に虹光沢があり、後者は山地性。
この他には、センチがいくつかと小型のゴミムシ類とエンマコガネ類が少し入っていただけ。
実はアオオサが掛かってくれないかなと、期待していたのですが・・・また秋にでも。
オマケ
オサ・ゴミの成果が芳しくなかったこともあるので、先月キサラヅで採集した子を紹介します。
ムネアカマメゴモクムシ (オサムシ科)
体長わずか6mm弱。これも図鑑では鞘翅に虹光沢ありと書かれていて自信がなかったのですが・・
T大のK先生に見ていただいたところ、そうだろうということでした。
特に珍しい種ではないのに、お手を煩わせて恐縮至極。K先生、ありがとうございました。
昨日の湯加減
今年は記録的に短くかつ早い梅雨明けをしてしまった関東地方。
開けた途端に猛暑というか酷暑の連続。と思ったら今度は雨の日が続いています。
二度目の梅雨入りでしょうか。
7月1日に自宅に居ながらにしてミンミン蝉の初鳴きを聞きましたが、それっきり聞こえません。
ニイニイ蝉も雨が続いて鳴くのをやめたようです。(今日は雨なのに鳴いていましたが)
梅雨明けで選手交代していた虫たちも調子が狂っているのでしょうね。
(追記)9月初めに気象庁は梅雨明け時期の訂正をし、関東地方は7月23日とされました。やっぱりね。
2022-07-16 20:00
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コメント(5)
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
こんにちは^^
オオシオカラトンボのメスはトラ模様なのですね。
先日、関西の方がトラ模様のトンボを見つけたと、
アップされていました。
大好きで、思い入れのあるハグロトンボ。
拝見できて嬉しいです♪
体がグリーンなのですね。
飛んでいるところを又見てみたいものです。
by いろは (2022-07-17 15:33)
武蔵野は16日が初ミンミン、先ほど拙宅周辺に幼虫の脱出孔を見つけました(高和確認のみ)。夏至から早一か月近く、初電シフトの小生は、夜明が遅くなり出したと感じます。ゼフの頃はすでに明けきった空、オオムラサキでは明け始め、キベリの季節ではまだ夜は開けず、ですね。
by 高和です。 (2022-07-18 11:26)
>いろはさん
文字通り、”トラフトンボ”という種もいます。
これからお盆あたりまで、ハグロトンボの季節ですね。
>高和です。さん
蝉たちは梅雨明けと認定していないのでしょうね。
昼間の短縮は秋になるまで気が付かないことにします。
by ぜふ (2022-07-18 22:34)
コハンミョウの群れの写真、パッと見アメンボかと思いました。
ずい分とたくさん群れていましたね。おもしろいです。
テネラルって何だろうと思ったら、すぐ下に説明が。
羽化直後の状態を指す用語があるとは思いもよりませんでした。
by sakamono (2022-07-21 21:58)
>sakamonoさん
こんな光景は以前はあちこちで見られたのだと思います。
珍しい光景でなくなってほしいですが・・もう望むべくもないでしょうか・・
せめてこの湿地は残ってほしいと思います。
by ぜふ (2022-07-22 22:48)