"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
乱心カマキリ [探虫行]
チバも急に秋が深まってきました。
昆虫採集というパラダイムとしては端境期ともいえる季節。
前記事でロケハンした場所へさっそくゴミムシトラップを仕掛けに行ってきました。
でも訳あってカマキリの写真を冒頭にあげておきます。
10月15日、午後から出発してまずはこの湿地へ一目散。
トラップを設置できる範囲は狭いので、湿地の縁のシカ柵に沿って10個ほど。
周囲の探索はせずに次の地点へ行こうと思いましたが、隣の小さな谷津田も気になったので突入。
民家の脇を通って、休耕田のガタゴトあぜ道をしばらく進むと行き止まりました。
足元の地面すれすれにセンチコガネが飛んでいたので、すぐバイクを降りたけど見失いました。
次は湿地化した灌漑用の堰。
堰の奥へと続く荒れた道の上に、トラップを設置していると地面をセアカヒラタゴミムシが走ってた。
これはセアカ祭りになるかなと思いつつも、15個ほど並べていきました。
その間、アオイトトンボの姿がちらほらと見えましたが、カメラは出さずにスルーしました。
もう一か所、前回立ち寄らなかった谷津田の様子を見に行きたかったのです。
谷津田の入口から軽トラがやっと通れるような道をたどり、一軒の民家を過ぎると休耕田が続くだけ。
周囲の様子を確認しながらゆっくり走っていると、左手奥にグッドな景色が見えました。
小崖があるのが分かると思います。
これはチェックしない訳にはいかないと、ベニシジミ号を降りて歩を進めていると。
細い農道の地面に敷かれた稲わらの隙間にコンチューターがピクリと反応。
足元に不審な、いやワクワクする痕跡がありました。
ベニシジミ号まで戻ってミニ熊手を取ってきてほじほじすると・・
オスでしたが、初訪の地なのでお連れしました。
で、小崖の様子はこんな感じ。
幅は広くはないものの、オサホリしたくなる良い状態でした。
内房方面にオサホリに来るときにまた寄ってみようと思います。
ということで、ここは湿地でないけれど3個ほどトラップをかけてみました。
さて、その翌日、お楽しみのトラップ回収をしに戻りました。
前日と同様、まずは小さな湿地へ。
一つ目のトラップを覗いてみると・・幸先よくゴミムシがカップイン。
地面に放してゴミムシ第一号の記念撮影をしました。
まさに銅色の艶々した鞘翅が美しい。
これは大漁かと、束の間膨らんだ胸はすぐに呆気なくしぼみました。
その他のトラップは全部空っぽだったのです。
逆に、上記のアカガネオオゴミムシは貴重な一頭となりました。
次は前日最後に見つけたセンチコガネポイントへ。
しかし成果なしでした。
ここにかけたトラップは全部引っこ抜かれていたのです。周囲を探しても見つからず。
ただ、せっかくなので谷津田のもう少し奥まで行ってみました。
この先は少し道が荒れていそうだったので、ここにベニシジミ号をとめてさらに歩いて突入。
少し進むと視界が開け、なんと湿地が現れました。
それほど泥濘んではないものの、粗く耕されたように泥や土がでこぼこしています。
きっとイノシシたちの大浴場なのでしょう。
でも地面を観察していると、小さな黒いゴミムシが走っているのも見えます。
半日陰の林縁にはこの子たちが群れていました。
両方オスです。
湿地の先へも道が続いていたので、行ってみると、林道へ出ました。
ここは前回通った、畑地で行き止まりになった丘の上へと通じる道でした。
前日ここを見つけてればと後悔しながらベニシジミ号へと戻っているとこんな子も。
まあ、また来ようということにして、次の回収地点へ。
それぞれのポイントは10分ほどのエリア内にあり、堰にもほどなく到着。
さっそくトラップを回収し始めると案の定。
セアカ祭りが開幕していました。
ただ、それは2~3個だけで、もう一つ想定外のお祭りが。
これも3個ほどで計7頭カップイン。
しかし全部オスだったという、偶然とは思えないけれど、理由を調べるのは大変なので忘れることに。
その他は定番の獲物(外道)。
いい匂いの子。
それと、ここでもこのような事件が。
ということで、入ってほしかった獲物はボウスでしたが、センチコガネの棲息地が確認できました。
実はこの日は回収のあとに久しぶりに鴨川までラーメンを食べに行くつもりでした。
そそくさとベニシジミ号へ戻り、トラップを袋に詰め、出発の準備をしていると近くの草むらに。
見送りありがとうと挨拶しつつも、最後に堰の様子を撮影しようと土手の上へ。
堰の中を見下ろしたとき、コンチューターがまたピクリと反応してしまったのです。
何かがいますが、分かりますか?
そうです。横たえてある木の上に。
そう、カマキリは普通、草むらや草木の上にいるもので、こんな開けたところにはまずいません。
虫屋の方はもうピンとくるものがあるでしょうけど、明らかに挙動不審なカマキリ。
これは近くで観察しなくてはと、水門から堰の中へ降りました。
気取られないように静かにゆっくり近づき、しゃがんでじっと見つめていると・・おおお。
もちろん水の中に獲物がいるわけではなく。
何かに吸い寄せられる、まるで夢遊病者のようにカマで水の上の空を掻くカマキリ。
とうとう顔を水に浸けました。(このあたりから動画も撮りました)
しかし、期待していた場面が現れない。
この後、水から顔を出し、また木の上へ戻ってしまいました。
もうこれは結末を見届けるしかないと、腰を据えることに。(ラーメンはあきらめた)
文字通り地面に腰を下ろして、30分以上観察を続けていると、今度は杭を登り始めたカマキリ。
それでもやはり流れをみつめるカマキリ。
しばらくすると、杭を伝って降りていき、また水をカマで掻く。
でも飛び込むことはせず、決断しきれない様子。
しかしさらに場所を移動し、ついにダイブ。水泳をはじめるカマキリ。(イヌカキならぬカマカキか)
ところが、それでも期待していた結末は訪れず。
とうとう岸へ戻ってきてしまいました。
結局、2時間以上夢遊病カマキリを観察したけれど、決定的瞬間は見られないままついに根負け。
でも、あれに寄生されているかどうかは、どうしても知りたかったのでお連れすることにしました。
街まで戻ってずいぶん遅いお昼を食べて、暗くなる前にちょっと様子を確認したい場所へ。
そこはとても久しぶりに訪れる小櫃川の河口干潟。
入口の場所を忘れてましたが、何となく見覚えのある道をたどると着いてしまいました。
バリケードはされていますが、徒歩なら入ることができます。
海に向かって歩いて行くと、見覚えのある遺構が。
何の遺構かは不明ですが、上に登ることができます。
海上に浮かぶカラフルなのはパラセーリングのパラシュートでしょう。
そして湿地が左右に広がります。
彼方に見えるのは京葉工業地帯の南端エリア。
環境はほぼ保全されていることが確認できたので、また今度、海浜性ゴミムシを探しに来よう。
行く手の地面を左右に逃げ隠れるアカテガニを見ながらゲートに向けて戻りました。
そして帰路の途中、黄昏のアクアラインのビューポイントを通過。
いろんな意味で不発の連続の二日間でした。
カマキリ堰ではこんな光景も観察しました。
こんなに伸びるとは。
よっぽど美味しい草なのでしょうね。
今日の湯加減
※ 詳しい生態を知りたい方は”ハリガネムシ”でネット検索してみてください
昆虫採集というパラダイムとしては端境期ともいえる季節。
前記事でロケハンした場所へさっそくゴミムシトラップを仕掛けに行ってきました。
でも訳あってカマキリの写真を冒頭にあげておきます。
10月15日、午後から出発してまずはこの湿地へ一目散。
トラップを設置できる範囲は狭いので、湿地の縁のシカ柵に沿って10個ほど。
周囲の探索はせずに次の地点へ行こうと思いましたが、隣の小さな谷津田も気になったので突入。
民家の脇を通って、休耕田のガタゴトあぜ道をしばらく進むと行き止まりました。
足元の地面すれすれにセンチコガネが飛んでいたので、すぐバイクを降りたけど見失いました。
次は湿地化した灌漑用の堰。
堰の奥へと続く荒れた道の上に、トラップを設置していると地面をセアカヒラタゴミムシが走ってた。
これはセアカ祭りになるかなと思いつつも、15個ほど並べていきました。
その間、アオイトトンボの姿がちらほらと見えましたが、カメラは出さずにスルーしました。
もう一か所、前回立ち寄らなかった谷津田の様子を見に行きたかったのです。
谷津田の入口から軽トラがやっと通れるような道をたどり、一軒の民家を過ぎると休耕田が続くだけ。
周囲の様子を確認しながらゆっくり走っていると、左手奥にグッドな景色が見えました。
小崖があるのが分かると思います。
これはチェックしない訳にはいかないと、ベニシジミ号を降りて歩を進めていると。
細い農道の地面に敷かれた稲わらの隙間にコンチューターがピクリと反応。
足元に不審な、いやワクワクする痕跡がありました。
ベニシジミ号まで戻ってミニ熊手を取ってきてほじほじすると・・
センチコガネ ♂ (センチコガネ科)
オスでしたが、初訪の地なのでお連れしました。
で、小崖の様子はこんな感じ。
幅は広くはないものの、オサホリしたくなる良い状態でした。
内房方面にオサホリに来るときにまた寄ってみようと思います。
ということで、ここは湿地でないけれど3個ほどトラップをかけてみました。
さて、その翌日、お楽しみのトラップ回収をしに戻りました。
前日と同様、まずは小さな湿地へ。
一つ目のトラップを覗いてみると・・幸先よくゴミムシがカップイン。
地面に放してゴミムシ第一号の記念撮影をしました。
まさに銅色の艶々した鞘翅が美しい。
アカガネオオゴミムシ (オサムシ科)
これは大漁かと、束の間膨らんだ胸はすぐに呆気なくしぼみました。
その他のトラップは全部空っぽだったのです。
逆に、上記のアカガネオオゴミムシは貴重な一頭となりました。
次は前日最後に見つけたセンチコガネポイントへ。
しかし成果なしでした。
ここにかけたトラップは全部引っこ抜かれていたのです。周囲を探しても見つからず。
ただ、せっかくなので谷津田のもう少し奥まで行ってみました。
この先は少し道が荒れていそうだったので、ここにベニシジミ号をとめてさらに歩いて突入。
少し進むと視界が開け、なんと湿地が現れました。
それほど泥濘んではないものの、粗く耕されたように泥や土がでこぼこしています。
きっとイノシシたちの大浴場なのでしょう。
でも地面を観察していると、小さな黒いゴミムシが走っているのも見えます。
半日陰の林縁にはこの子たちが群れていました。
オオアオイトトンボ (アオイトトンボ科)
両方オスです。
湿地の先へも道が続いていたので、行ってみると、林道へ出ました。
ここは前回通った、畑地で行き止まりになった丘の上へと通じる道でした。
前日ここを見つけてればと後悔しながらベニシジミ号へと戻っているとこんな子も。
コカマキリ (カマキリ科)
まあ、また来ようということにして、次の回収地点へ。
それぞれのポイントは10分ほどのエリア内にあり、堰にもほどなく到着。
さっそくトラップを回収し始めると案の定。
セアカ祭りが開幕していました。
ただ、それは2~3個だけで、もう一つ想定外のお祭りが。
センチコガネ (センチコガネ科)
これも3個ほどで計7頭カップイン。
しかし全部オスだったという、偶然とは思えないけれど、理由を調べるのは大変なので忘れることに。
その他は定番の獲物(外道)。
エンマコオロギ (コオロギ科)
いい匂いの子。
アオゴミムシ (オサムシ科)
それと、ここでもこのような事件が。
ということで、入ってほしかった獲物はボウスでしたが、センチコガネの棲息地が確認できました。
実はこの日は回収のあとに久しぶりに鴨川までラーメンを食べに行くつもりでした。
そそくさとベニシジミ号へ戻り、トラップを袋に詰め、出発の準備をしていると近くの草むらに。
ヒメクダマキモドキ (ツユムシ科)
見送りありがとうと挨拶しつつも、最後に堰の様子を撮影しようと土手の上へ。
堰の中を見下ろしたとき、コンチューターがまたピクリと反応してしまったのです。
何かがいますが、分かりますか?
そうです。横たえてある木の上に。
そう、カマキリは普通、草むらや草木の上にいるもので、こんな開けたところにはまずいません。
虫屋の方はもうピンとくるものがあるでしょうけど、明らかに挙動不審なカマキリ。
これは近くで観察しなくてはと、水門から堰の中へ降りました。
気取られないように静かにゆっくり近づき、しゃがんでじっと見つめていると・・おおお。
もちろん水の中に獲物がいるわけではなく。
何かに吸い寄せられる、まるで夢遊病者のようにカマで水の上の空を掻くカマキリ。
とうとう顔を水に浸けました。(このあたりから動画も撮りました)
しかし、期待していた場面が現れない。
この後、水から顔を出し、また木の上へ戻ってしまいました。
もうこれは結末を見届けるしかないと、腰を据えることに。(ラーメンはあきらめた)
文字通り地面に腰を下ろして、30分以上観察を続けていると、今度は杭を登り始めたカマキリ。
それでもやはり流れをみつめるカマキリ。
しばらくすると、杭を伝って降りていき、また水をカマで掻く。
でも飛び込むことはせず、決断しきれない様子。
しかしさらに場所を移動し、ついにダイブ。水泳をはじめるカマキリ。(イヌカキならぬカマカキか)
ところが、それでも期待していた結末は訪れず。
とうとう岸へ戻ってきてしまいました。
結局、2時間以上夢遊病カマキリを観察したけれど、決定的瞬間は見られないままついに根負け。
でも、あれに寄生されているかどうかは、どうしても知りたかったのでお連れすることにしました。
街まで戻ってずいぶん遅いお昼を食べて、暗くなる前にちょっと様子を確認したい場所へ。
そこはとても久しぶりに訪れる小櫃川の河口干潟。
入口の場所を忘れてましたが、何となく見覚えのある道をたどると着いてしまいました。
バリケードはされていますが、徒歩なら入ることができます。
海に向かって歩いて行くと、見覚えのある遺構が。
何の遺構かは不明ですが、上に登ることができます。
海上に浮かぶカラフルなのはパラセーリングのパラシュートでしょう。
そして湿地が左右に広がります。
彼方に見えるのは京葉工業地帯の南端エリア。
環境はほぼ保全されていることが確認できたので、また今度、海浜性ゴミムシを探しに来よう。
行く手の地面を左右に逃げ隠れるアカテガニを見ながらゲートに向けて戻りました。
そして帰路の途中、黄昏のアクアラインのビューポイントを通過。
いろんな意味で不発の連続の二日間でした。
オマケ
カマキリ堰ではこんな光景も観察しました。
こんなに伸びるとは。
よっぽど美味しい草なのでしょうね。
今日の湯加減
お連れしたオオカマキリにはバッタやコオロギを与えてまだ元気に生きています。
生きたまま解剖するのはちょっと気の毒なので、★になったら確認しようと。
一応説明しておきますと、カマキリはハリガネムシという寄生虫がついていることがあります。
寄生したハリガネムシはカマキリの体内で成虫になると、寄主を洗脳するたんぱく質を分泌します。
洗脳されたカマキリは水辺に誘導され、カマキリが水に入ると体内から脱出するのです。(※)
でも本編のカマキリは水中に何度も入ったにもかかわらず、ハリガネムシは出てきませんでした。
その理由は色々考えられますが確かなことは分かりません。
ただ、このカマキリが本当に寄生されているのかどうかは確かめたいと思います。
※ 詳しい生態を知りたい方は”ハリガネムシ”でネット検索してみてください
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
知り合いにハリガネムシラブの小学生女子がいます。彼女のお蔭でハリガネムシの生存戦略の巧さを知りました。生涯二度も天敵に捕食されてようやく狙った宿主の体内に入り込むと知ったときは、驚くよりも呆れました(笑)。
by 高和です。 (2021-11-08 09:55)
決定的瞬間まであと一息ですね。
しかしハリガネムシ、恐ろしい&面白いです。
オオセンチコガネ、修善寺でたくさん見ました。
横には鹿たち。
鹿の大繁殖でエサが豊富で増えてるとかありますかね。
by 山健父 (2021-11-09 07:38)
>高和です。さん
寄生虫推しの女の子がいますよね。
男の子よりも多いと思うのは気のせいでしょうか^^
>山健父さん
期待を裏切られたというか、ほっとしたというか・・複雑でした^^;
オオセンチはシカの分布や増減と相関があるという研究報告があります。
修善寺もシカが増えているのでしょうね。(行きたい^^)
by ぜふ (2021-11-09 19:28)
わたしもてっきりあの長ーーいやつがお尻から出てくるものと思ってました。
最後のカタツムリの伸び方も衝撃的(笑)
by 響 (2021-11-11 09:40)
寄生虫に操られてしまうなんて怖いですね。私はてっきり水に映る
自分の姿を敵とみなして攻撃しようとしているのかと^^;。
たくさんのイノシシたちが泥浴びする様子も見てみたいです。
by sakamono (2021-11-11 22:45)
>響さん
アクアラインの橋のようなやつですね^^
でも出たら出たで、カマキリにとっては迷惑なので複雑な思いでした。
>sakamonoさん
ナルシスみたいにですね^^
イノシシ運動会は見てみたいですね。観覧席があれば^^;
by ぜふ (2021-11-12 21:23)
へええ〜〜、引き込まれるようにして泳いだカマキリ、何の為なんでやしょうね?
ほんとに奇行でやすね〜
by ぼんぼちぼちぼち (2021-11-13 14:05)
>ぼんぼちぼちぼちさん
本人の意思ではないので”何の為”に対しての答えはありません。
”誰の為”との問いには、”寄生虫の為”という答えになります。
by ぜふ (2021-11-13 22:19)