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"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。

ヒグラシとウナギ [探虫行]

青メダルを目指して再チャレンジしてきた日のことです。

トラップを設置する夕方まで、どこか未踏の地でフィールドワークしようと思いました。

設置場所は北総なので、その周辺に適当なところはないかなと例によってGoogleMapとにらめっこ。

あまり深く考えず、久しぶりに成田方面のとある場所へ行こうと決めました。

その理由は、翌日の採集会のオミヤゲ用のクワガタを追加調達できないかという安い胸算用。

ところが、結果的には全くお安くなく、見事にボウズ。

この子たちを見に(聴きに)行ったようなものでした。

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ヒグラシ (セミ科)


ちょっと写真に難があるの分かりますか?

真ん中に薄い紫色の丸い影のようなものが写っています。

これは、”ゴースト”と云われる心霊写真に写る影に由来するもの。

とはいえ、これはホラーではなくてカメラの特性によるもので、撮影条件によって出るオバケ。

TGは逆光または近くに明るい光源がある場合に起きるようです。

ただ、それは必要条件であり、十分条件が何なのかは未だ不明。

とにかく、出てしまうと多少アングルやディスタンスを変えただけでは解消されません。

相手が昆虫の場合、立ち位置を変えるのも困難なときは、フレーミングを変えることも一つの手段。

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同上 (中央にゴースト)


とはいえ、これは普通ボツですね。

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さて、7月末の晴れた朝、成田方面へ向けて出発したのですが、手前の佐倉に寄り道することに。

成田街道を佐倉に向かって進んでいると、どうしてもこのランドマークが目に付いてしまいます。

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印旛沼の畔にある、ふるさと広場のオランダ風車ですが、寄り道せずにショット&ゴー。

間もなく目的地の周辺には着いたものの、アプローチが分かりませんでした。

野生の勘で少し彷徨っていると、偶然よさそうな森が見えました。

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歩いて耕作放棄地を横切り、様子を見に行きましたが、段差と藪に阻まれ森には入れませんでした。

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GoogleMapで目的地周辺を再確認すると、エリアへ入る分岐道を間違えていたことが判明。

分岐まで戻って正しいアプローチを進みましたが、しばらく進むと森を抜けてしまいました。

おかしいなと思いつつUターンし、森の外縁の道を辿っていると田んぼに出てしまいました。

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途方に暮れながら立ち尽くしていると、足元に地元の方がいらしたので、道をたずねてみました。

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戻った方がいいよということでした。

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カメの案内に従ってUターンすると、森にぶつかったところで、細い道があるのでした。

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段々細くなっているように見えたので、ベニシジミ号を降りて歩いて行ってみることにしました。

案の定、すぐに道は軽四も通れないくらいになった、と思ったら突然、開けた空間が目の前に。

フィールドアスレチックではないようです。森の学校でしょうか。

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時刻は9時過ぎ。

森の中はニイニイゼミの”チーーー”というロングトーンに、アブラゼミの”ジリジリジリ”というアクセントが混じったサウンドスケープが拡がっています。

森の教室の奥の道を少し登って丘の上に出ると、おいしそうな林が出現。

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クヌギやコナラ、シラカシなどの疎林、しかも蹴飛ばし頃の太さときている。

これはカブクワ牧場かもしれない。

と俄かに湧いてきた気合を足に込めて、キッキングゲームの開始。





百本とはいいませんが、三十本は蹴ったでしょうか。

時々幹から飛び立つのはセミだけでした。

樹液の出ている木はなかったものの、周囲の環境は申し分なし。

もしここにカブクワがいるのだとすると、おそらくもう、先客に採りつくされたのだと思います。

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とぼとぼと来た道を戻り、ベニシジミ号を停めた森の入口で小休止。
(森の中はヤブ蚊が多くて休めません)

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水分補給しながら田んぼを眺めていると、どこからか何かが飛んできて、ひょいと胸に着地しました。

黄色と黒の縞模様。

ハチだと思って対処するのが普通だと思いますが、コンチューターの判断は違いました。

なので、そっと手でつかみました。

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トラカミキリですが見たことない子。

これはお連れしてから室内で放し飼いにして撮影したもの。

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ヨツスジトラカミキリ (カミキリムシ科)


体長は20mm弱。トラカミキリらしく胸が太くてカッコイイ。

つくづく今シーズンはカミキリムシとご縁がある。

この一匹でキックの敗北感から立ち直ることができ、ベニシジミ号で再出発しました。

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せっかくなので、近くの観光スポットに寄り道する気持ちのゆとりもできたというもの。

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旧増田家住宅


マイナースポットかもしれませんが、滞在中はずっと貸し切りでした。

かき氷かラムネでも売っていればゆっくりしたいところでしたが、あまりに暑くて早々に退散。

次の目的地へ向かう途中、印旛沼を通って行く道沿いには、川魚やウナギのお店が並んでいます。

バイクで走っていても甘くて香ばしい匂いが分かるほど。

実は、出発前からウナギを食べようと思っていたのですが。

まだ11時前で開店してないのに、どのお店の駐車場も混んでいて、待ち行列ができていました。

土用の丑の日も過ぎているのに、想定外の混雑具合に心が折れてしまい、方針変更したその時。

行列ができていないお店が。しかも、漁協直営じゃないか。

0.5秒考えて緊急停止。

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ちょうど開店したところだったようで、行列はなかったものの店内は満席。

入店待ちの紙に記名してベンチに座って待ちました。(その間にベニシジミ号を移動させて撮影)

結局、30分余り待って入店し、注文してからさらに30分余り待ちこがれてやっとウナギとご対面。

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きも吸いも付いて3千円(税込)。天然物ではないようでしたが、待たされただけあって焼き立て。

想定外に時間を費やしてしまったけれど、これで午後からもがんばれそう。

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目標地点をピンポイントでナビに設定していざ出発。

ベニシジミ号にも燃料補給をしなくてはと、GoogleMapでGSを探すと成田湯川駅の近くにありました。

ところが、R464北千葉道路をすいすいと走っていると、うっかり高架で通り過ぎてしまいました。

下道に引き返すのには、かなり大きく北側を回って行くことになり、ほぼ目的地付近を通過。

後から考えれば、先に目的地に行った方がよかった。

なかなかスムースに目的地に着かない旅でしたが、次のスタート地点はここ。

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坂田ケ池公園の端っこというか裏口のようなところ。

ここから林の中の渓流に沿って池へと向かいます。

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オニヤンマがパトロールしていましたが、トンボ網は持ってきてなかったので眺めるだけ。

池まではそう遠くありません。誰にも会うこともなく、たどり着きました。

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午後からはピーカンになって日向にはいられない暑さ。

池の奥の湿生植物園へ行ってみましたが、暑過ぎるのかトンボさえいない。

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カブトムシがいそうな木を探しつつ、日陰の散策路を選んで歩いていると地面に何かがいました。

暑さに耐えかねて土の中へ潜ろうというのか。

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マメコガネ (コガネムシ科)


しばらく掘っていましたが、土が硬すぎたのかその内あきらめて去っていきました。

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このエリアは旧家の住居跡も多いのですが、古墳もたくさんあり、その一つがこの公園内にも。

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龍角寺古墳群 101号墳


101号ということは、少なくとも古墳が百個はあるということでしょうね。

ただ、古墳見学に来たわけではないし、日向には出たくないので、すぐ森の中へ退散し散策を続けます。

しかし特筆すべき虫に逢うこともなく、タイムリミットを知らせるようにヒグラシが鳴き始めました。

でもヒグラシは声はすれども姿が見えないもの。

林の奥の方で鳴いているのはさておき、すぐ近くで声がするのに全然見つけられない。

ちょっと頑張って散策路から外れて林の中へ入って撮影したのが、扉の写真のヒグラシでした。

やっと見つけて、しかも逃げられずに接近できたのに、ゴーストが出てしまうという。

立ち位置を変えると逃げられそうだったので、フレーミングを変えるしかなかったのです。

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いよいよ時間切れになり、裏口へと戻っていると、渓流沿いでもヒグラシの大合唱が始まりました。

突然ですがここで問題です。

今度もゴーストが出ていますが、どこにいるか分かりますか?

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正解の前にやっと見つけた本命を。

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カブトムシ (コガネムシ科)


カブトやクワガタは昼間は落ち葉や土の下、または高い梢の上で休んでいるのが普通です。

でもたまにこうして低い場所で寝ている子もいるのです。(なのでカブクワ採集は夜の方がいい)

さて、正解はというと・・

ゴーストを避けるためにフレーミングを変えていますが同じ個体です。

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ヒグラシ (セミ科)


まるで海底の砂に潜ったヒラメのようなカモフラージュです。(ヒラメは鳴かないですが)

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さあ、いよいよトラップの設置に向かいます。

R464で西へ。印旛沼の西へ。

またもやバイパスを降りる場所を行き過ぎてしまいましたが、想定よりも早く着きました。

なのでまだ陽が高くて暑い。

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仕掛ける場所は日陰ではないので熱中症に注意しながらさっさと設置していきました。

ただし、今回はあえて少し範囲を狭めました。(奥の林の方は設置せず)

まだまだ陽は高かったのですが、前回のように寄り道はせず、とっとと帰路につきました。

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翌朝、採集会の装備を整え、カブクワのオミヤゲを携えて準備完了。

採集会のときは電車にするのですが、トラップ回収のためベニシジミ号で出発。

渋滞もなくスムースに到着。今日も天気が良くて暑くなりそう。

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今度は回収用のポリ袋を忘れずに持ってきたので野菜売り場へは寄らずにさっそく設置場所へ。

さて、いきなりですが、消え失せたトラップが。

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犯人はカップごと抜き去り、遺留品もないので全く手掛かりなし。

獣避けの忌避剤として、マスタードオイルをカップの縁に吹きかけていたのですが屈しなかったよう。

順にトラップを見て回りますが、ぽつぽつと入っているのはお馴染みのゴミムシたち。

一つだけちょっと見かけない子が。

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未同定


大きさと色合いは本命によく似ていますが、鞘翅の特徴的な紋がない(ように見える)。

何故あいまいな表現をしているかというと、実は帰宅してから確認しようとしたらロストしてたから。

逃げた魚(虫)は大きい(珍しい)。

さらに事件は続きます。

トラップの回収忘れがないように、目印の棒を刺すのですが・・何が起きているか分かりますか?

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番号を書いた旗の部分が食いちぎられていたのです。(黄色いテープ)

カップも少し浮いていたのですが忌避剤が効いたのか抜かれてはいませんでした。

でもそれで頭に来たのか、悔しかったのか、本当のことは分かりませんが、とにかく旗に噛みついた。

結局、リベンジは果たせなかったのですが、嬉しい収獲もありました。

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全部回収し終わってから、あらためて記念撮影。

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ヒメマイマイカブリ (オサムシ科)


その他に採れたのは、オオマルガタゴミムシ、アオゴミムシ、キボシアオ、アトワアオなど。

ナガヒョウタンゴミムシも採れたので、お連れして飼育しています。

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さて、採集会の集合場所へ向かおうと、ベニシジミ号に戻ると・・コンチューターがピコンと反応。

後ろのキャリアに積んだ荷物を物色しているアヤシイやつ。

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オミヤゲの虫たちが熱中症にならないようにキャリアのフタは開けっ放しにしていたのです。
(保冷剤も入れて)

職務質問をするまでもなく、誰かはすぐに分かりました。

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アカボシゴマダラ (タテハチョウ科)


オミヤゲが目当てだったのか、何かの匂いに引き寄せられたのか・・不明です。

採集会は(暑い中でしたが)無事終了し、オミヤゲも無事配付できました。

これで夏の採集会は一旦終了です。




オマケ


採集会終了後、スタッフたちと歩きながら探虫していて、たしかクヌギの幹にいたカモフラージュ虫。

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ツマキシャチホコ (シャチホコガ科)


近くで見ないと木の枝にしか見えません。




今日の湯加減

今日は立秋。
夏至の頃と比べると明らかに陽が短くなっていることが分かってしまう時節。
逆に暑さは本格化して、日中は虫たちの姿も少なくなり、複合的に寂しい気持ちになってくる。
それと日本列島付近には三つの台風(9、10、11号)が、まるで団子三兄弟のように連なってます。
水害や土砂崩れなどが発生しないことを願うばかり。
ところで、来週以降の夏休み標本教室は中止にすることになりました。
お盆休みが良い方向に影響するように、というか、早く事態が終息に向かいますように。


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コメント 3

高和です。

ヨツスジトラカミキリ様、いつの日かお目にかかりとうございます。さて、シフトの関係で5時には家を出る毎日、オオムラサキからキベリの季節に進んだと感じます。
ウナギは高和もいただきました。五輪の競技会場が近く物々しい警備を掻いくぐっての入店でしたが、メニューの「微アルコール飲料」が目を引き、白焼きで一杯も楽しめました。その昔「贅沢は敵だ」のスローガンにスを付け足した御仁には遠く及びませんが、なんかシテヤッタリ気分でした。

by 高和です。 (2021-08-09 16:02) 

リュカ

ヒグラシ、難しかったですー!(笑)
by リュカ (2021-08-10 10:18) 

ぜふ

>高和です。さん
時期を逃すと会えなくなるのが虫ですね。
ウナギは栄養価が高いので、時期に寄らず毎日でも会いたいです^^

>リュカさん
現地でもむずかしかったです^^;

by ぜふ (2021-08-10 21:43) 

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