"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
甲州街道おさくりげ [オサムシ]
昨年末の東海道中の後に話が出ていたのですが、先月、虫友からオサホリに行きたい旨の連絡があり。
さっそく他のメンバーともスケジュール調整し、先週行ってきました。
東海道の次は甲州街道。

オサホリしながら甲州街道を西へ進み、複数種のオサムシを串刺し採集しようという旅。
今回のメンバーは三人、個人ミッションはオオオサムシとテンリュウオサムシを採集すること。
長いですが全編一気にお届けします。
3月8日の朝、高尾駅に集合し、西へ向けていざ出発。
まず山梨県東部の大菩薩峠方面を目指す案もあったのですが、一気に西部まで行くことに。
韮崎や北杜市はエリアによっては土地勘もあるし、オオオサムシの分布域でもあるからです。
今回も探虫行のリーダーはTさん。(TJさんと呼称変更する案あり)
韮崎ICを降りてすぐ、「ちょっと入ってみましょう」と、いきなり右手の畑地に突入。
単なる野生の勘のようですが、入ってみると林縁に高さ3メートルを超える崖がありました。
速攻でオサホリの身支度を整えて試掘開始。(まだ9時を過ぎたところ)
あいにくの雨でしたが、オサホリは雷雨決行。(現場まで行ければ)
ところが、崖は土というよりも、さらさらの砂で見かけ倒しでした。
朽木が少し落ちていたので叩いてみたら、まったくの外道ですが、こんな子が登場。
本遠征での初の昆虫ということで記念に。

崖の上まで登って様子を見てきたTさんも不発だったようなので、さっさと諦めることに。
雨に濡れているバッタを三人で観察しつつ、一か所目を後にしました。

成虫越冬するバッタで、まだ生きていましたが、雨のせいか元気はありませんでした。
そのまま畑地を進みましたが、軽トラ専用のような細い道を辿り、朝から緊張感が高まる。
道なりに進んでいくと、今度は道幅は狭いまま、ヘアピン連続の下り坂に突入しました。
そこを降りていく途中、斜面林に土肌が見えているところがあり、試掘してみようと停車。
三人三方に散開して掘りました。
しばらく林の中を探索しつつ、数か所試掘しましたが結果が得られません。
すると、TさんとHくんの呼ぶ声がしたので駆けつけると・・初オサムシ。

Hくんが掘り出したのはとても大きくて赤い個体。Tさんのも赤かったけど写真なし。
ボウソウの通称アカオサもびっくりの赤さというか、濃いピンクという感じもする色。
本命ではないものの、珍しいタイプに俄然テンションが上がり、バチツルを持つ手に力が入ります。
しばらくうろうろしている内に、狭いながらもコンディションの良い小崖を見つけました。
そこを丹念に掘っているとやっと。

仲間はずれにならずに済んで、ほっとしました。
気持ちが楽になったからではないでしょうけど、すぐに追加も。
今度は色違い。

他の二人も追加を掘り出していましたが、青いのはこの個体だけでした。

Tさんが倒木からオオユミアシゴミダマの団体さんを掘り当てたので、記念に数頭確保してリリース。
もう周りに掘れそうな場所はなさそうと判断し、またポイント探しの放浪開始。

丘を上がり、K17七里岩ラインに出ましたが、この辺りで土地勘がある場所としては新府城址の周辺。
でも、昔トラップかけた時はクロナガオサムシ祭りだったことを思い出したのでスルー。
そのまま穴山方面へ向かいます。
七里岩ラインを流していると、左手に大きな崖が見えました。
一旦通り過ぎたものの、Uターンして行ってみることに。

この時点ではすっかり雨もあがっていて、崖に取り付くのも苦はなかったものの、乾燥して固い土。
それを端から見切ったTさんは崖の上の林の中へまっしぐら。
残る二人で土埃の舞うような壁を試掘しましたが何も出ず。
やっと出たのは意外な子でした。

そういえば昨夏の穴山での採集会の帰り道、ちょうどこの近くでコカブトを見つけたことを思い出す。
この辺りに分布していることは間違いないようです。

ゴミムシすら出ないので、さっさと諦めようと、崖を登ってTさんを呼んでみたものの返事がない。
多分、声が届かないくらいの奥まで行ってしまっているのだろうと思いつつ。
林の中にたくさん横たわっている松の倒木を崩しながら待っているとやっと姿が現れました。
マイマイカブリを探していたようですが成果なしとのこと。
(分布はしているし倒木もたくさんあるのに出ないというのはおかしい・・薬剤散布が疑われます)

再出発してほどなく、今度はまたTさんの野生の勘で右手の脇道に侵入。
集落を通り、中央本線の線路をくぐると、小さな丘に挟まれた狭い田んぼがありました。
その丘の斜面の一部が掘れそうだったので車を止めて突撃。
丘の裾に沿った用水路をまたいで斜面に取り付いてみると、掘りやすいコンディションではない。
斜面をよじ登って高い位置を攻めていましたが、用水路脇を掘っていたHくんが出しました。

関東以北、北海道の一部まで広く分布する種ですが、これは山梨長野亜種といわれる個体。
おかげでまた、やる気スイッチが入り、再び崖をよじ登り、掘れる場所をこつこつと。
まもなく出たのが扉の写真の個体でした。
同じ個体ですが、角度によっては青みがかって見えます。

一人一頭ずつ出せたところで場所を変えることにしました。

お昼も過ぎたのですが、この辺りは飲食店もないので、とりあえず日野春駅の方へと移動。
結局お店には入らず、コンビニに寄っておにぎりやお弁当を仕入れました。
脇道に入って西へ進むと左手に谷津田が伸びているのが見えたので、入ってみることに。

散開して試掘しましたが、適当な小崖は見当たらず、斜面林に土が露出している所があるも急過ぎ。
林の中の道は自然散策路のようだったこともあり、粘ることはせずに見切りをつけました。
食べかけのものを始末しながら作戦会議。
Tさんによると、諏訪エリアで目星をつけている場所が一か所あるとのこと。
ならばと、ヤマナシ自体に見切りをつけ、ナガノまでワープすることにしました。

長坂ICから中央道に乗り、諏訪ICまでジャンプ。
甲州街道に出て給油しつつ、再度相談し、ちょっと迂回しながら探虫しつつ目的地に向かうことに。
裏道で山を登り、霧ヶ峰を経由して目的地へ行くことを提案したのです。
久しぶりのK424。
道幅は狭く、路面状態がよくない箇所も多いので、バイクで通るときは周囲を見る余裕はない。
途中に城跡があることも知りませんでした。
アプローチの道はまさにガタゴトの山道で良さそうな気配がしたので入ってみることにしたのですが。
しばらく進むとこんな表示が。

地質にも詳しいTさんによると、辺りの土はいい真砂土のようで、無断採取する人がいるのでしょう。
土や砂を持って帰ることはしませんが、これは遠慮しないといけない。李下瓜田です。
すごすごとUターンし、標高を上げていきました。
しばらく登ると、カーブの頂点が空き地のように開けていて、赤い土壁があるのが見えました。
重機による整地かもしれませんが突撃。

一歩先に壁に対峙したTさんが鍬を振り下ろすと・・「あ、出た」

一撃必殺とはこのことですが、なんと、結局ここで出たのはこの一頭だけでした。
さすがに標高があるので土の中が凍っているところが多々ありました。

凍った固い土と格闘して腕が疲れたこともあり、テンションが下がったので目的地を目指すことに。
山道を一気に駆け上がり、踊り場湿原に出たところで記念撮影。

右手の富士山のような山容は蓼科山。左手の丘は霧ヶ峰。
ビーナスラインとの交差点を左折し、高原からK40で下ります。
霧ヶ峰スキー場に雪はありましたが、人影はまったくなく、リフトも止まっていました。

目的地に設定したのは中腹のエリア。大見山の麓の蓼ノ海公園を抜けてさらに山の中へ。
山道の左右に分岐する地点の右手に、かなり長くて高い崖が現れたので目的地到着としました。
両端と真ん中に分かれて崖に取り付きましたが、ここの土は固くて乾燥していました。
力一杯崩すと大きな土塊ごとはがれ、しかも崖が切り立っているので大崩落に。
そうならないようコツコツと掘るも指標虫も出ず、小さな黒いゴミムシがぽつぽつと出るくらい。
でも、並んで掘っていたHくんが「ちょっと面白いのが出た」という。
どれどれと逆シュワッチしないように横移動して近づいてみると・・
とても美麗な子でした。

全国に分布するようですが、樹上性の珍しいゴミムシ。フタツメゴミムシと同じ属です。
続けて2頭出たので1頭あげるよと言われましたが、強がってもらいませんでした。
が、なんとこの後は何も出ず。
Tさんでさえ何も出せなかったようで、道にまで転がり出た土塊を片付けて撤収。

これ以上山の中には入らず、そのまま道を先へ進みました。
まもなく分岐が現れたので下るルートを選んだのですが、どうも周囲の様子が気に入らない。
時刻は5時前、Tさんに提案し、分岐まで戻って中腹を辿る道へ入ることにしました。
するとまもなく、こういうものが現れてびっくり。

八島ケ原湿原の南端にも御射山神社があるのですが、もう一か所あったのです。
以前この麓のゲストハウスに泊まったときに近所のおじさんに聞いて存在を知ってはいたのですが。
どこにあるのかは知りませんでした。
残念ながら参拝はしませんでしたが、この前後の道沿いに掘れそうな所が散在していたので。
散開して試掘開始。
ガレていたり、サラサラだったり、フカフカだったりとコンディションは良くなかったのですが。
ぽつぽつとこの子たちは出ました。

しかし掘れども掘れども本命は出ない。
日没が迫り、手元が見えづらくなってきたので、やむなく打ち止めとしました。
さっきの道を一気に下り、諏訪湖の畔の宿へ。
一旦温泉で土と埃を落としてさっぱりしてから、食事に出かけて反省会。
宿に帰ってからも翌日の作戦会議をして早めに床に就きました。

まだ本命がまったく採れていない・・と夢の中でも掘っていた・・

翌日、朝風呂を浴びて美味しい朝食を摂り、危うくまったりしそうでしたが8時に出発。
前夜の作戦会議のとおり、当てもないポイント探しはせず、直接目的地へ向かいます。
諏訪ICまで戻るのですが、上川の土手の道は通勤車専用道路のような状況で超スムースに進行。
辰野を過ぎ、憧れの伊那谷エリアに入り、駒ケ根ICまであっという間でした。
向かうのは中川村。
まずはR153に出て、さらにバイパスに乗ってずんずん南へ。
もう余裕はなくなっているので、山へ入る前に行動食を買っておこうと、バイパス沿いのコンビニへ。
と、道を挟んだ隣に道の駅があるのが見え、せっかくなのでそっちへ行こうと提案しました。
ところが敷地に入ってみると、店内の電気が点いてなくて幟も出ていない。
でも人の気配がするので、正面入り口に突っ込むように車を止め、降りて確認することに。
自動ドアが開いておばちゃんが出てきたので、「やってますか?」と声を掛けました。
時刻はジャスト9時、ちょうど開店時間だったようで皮切り入店させてもらいました。
信州といえばのおやき、リンゴ、五平餅など、各自好きなものを買い込みました。
マイチョイスはこれ。

あと、おやきと、ついでに地酒も買いました。

さあ、いざ行かん伊那谷へ、テンリュウオサの里へ。
(もう一種の本命のオオオサムシの分布域でもあります)
さらに南下し、天竜川を渡り、いよいよ中川村へ入る。
ポイント探しは伊那谷で採集経験があるTさんに任せ、こちらは周辺の崖を見逃さないようにします。
谷を渡る橋を過ぎ、天竜川へ向けて降りてみようと、右折しましたが行き止まり。
もう少し先を降りてみましたが、途中にポイントはないまま集落に出てしまったので元のエリアへ。
しばらく同じエリア内をぐるぐる巡ったのは、Tさんがこの辺りに来たことがあるというから。
30分ほど彷徨ったでしょうか、畑地から丘へ上がる細い道の入口に来た時。
「あ、ここだ、ここ」
Tさんが昔来たことがあるポイントなのだそう。同じ場所に辿り着くとはと本人も感慨深げでした。

とにかく実績があるポイントというのは心強い。
この日初の試掘開始です。
しかし、しばらく掘っても出るのはハサミムシばかり。
さらにしばらくすると、遠くでTさんの「出た」という声が聞こえました。
が、もう確認しに行く余裕もなく、というか目の前の崖に全集中。
と、やっと何か出ました。

本命ではありませんが、これはこれで貴重な個体。
本種は主に近畿地方に分布しているのですが、飛び地的に南信と駿河に生息しています。
これは天竜川個体群という特殊なやつ。
続けて兄弟が出ました。

うれしいけれど満足はできない、けれどちょっとうれしい。

やる気スイッチが入ったのは確かで、ここからオサホリマシーンにモードチェンジしました。

倍速回転で掘っているとその結果はすぐ出ました。
モードが変わって頭もハイになっていたからか、無意識に
「テンリュウ! ゲンイチロウ!」
と叫んだとき。
ぼろっと出た。

裏返しでしたが、クロナガオサでないことは一目でわかる。
本命君です。

正確にはミカワオサムシの天竜川中流域亜種。
これで一気に気持ちは楽になり、報告がてらTさんのところへ歩いていると・・
「出ましたオオオサ」

どこかに仕込んでいたのではないかと疑いたくなる半面、モチベーションは上がりました。
テンリュウのメスも出していたので負けてられない。
しかし、三人で30分以上掘ったのでさすがにもう掘れる場所がなくなっていました。
それでも諦めずに、カニ歩きして掘り残した箇所をコツコツと崩していると。
10センチ幅ほどの掘り残し地点から・・メスでした。

さらに肩の荷が下りました。

しかしオオオサどころか何も追加は出ず、もう本当に掘りつくしたので場所を変えることにしました。

なおも里地エリアを彷徨い、集落へのアプローチのような小道に沿った小崖にもトライしました。
が、結果は出ず。
そこで、せっかく伊那谷に来たので、伊那谷らしいところへ行ってみましょうと提案。
GoogleMapで谷沿いの山道らしきルートを見つけてまっしぐら。
そこは入口から細いガタゴト道、さらに途中からはガッタンゴットン道になる”わくわく林道”でした。
しかし道沿いの斜面は崩れやすいのでしょう、ずっとネットが敷設されていました。
しばらく奥へ進み、やっとネットが途切れ、分岐地点のやや開けた場所で停車。
目の前に巨大な崖がありました。

全面白っぽくて粗い砂。花崗岩が砕けたのだということが分かりました。
これも真砂土なのでしょうけど、砂利に近いくらい粗くてザラザラしています。
さっそくTさんは崖の上端のオーバーハングした林床の土に、Hくんは下端の土混じり部分に挑む。
こちらは左右の分岐の先の様子を確認しに行きました。
まず左手は、ずっと同じ砂の崖が続き、どこにバチツルを振ってもサクッと入り手ごたえがない。

それが延々と続くようなので諦めて引き返しました。
今度は右手の車で登るのは厳しいと思われる細い山道へ。
こちらも途中から花崗岩の砂の高い壁が続き、左へ巻くカーブに向かって低くなり途切れました。
カーブの部分は岬のような形で土も混じっていたので、試掘してみましたがやはり柔らかい。
今回の探虫行で苦戦したのは、乾燥した土もそうですが、”ゆるふわ”状態の崖が多かったこと。
何度「ふっかふかだよ、おっかさん」と独り言を漏らしたことか。
カーブの先に崖は見えなかったので引き返していると、遠くからかすかにTさんの声が聞こえました。
「でましたー、ナカムライ」
ナカムライ(nakamurai)とはテンリュウオサのこと。
後で聞いてみたら、さっきの左手のザラザラ崖で出したとのこと。(イリュージョンに違いない)
戻りながらこちらのザラザラ崖の上端部分も探ってみましたが、ゴミムシすら出ませんでした。
広場まで戻り、崖のオーバーハングにも挑んでみたものの、出たのはこの子だけ。

朝から掘りっぱなしでさすがに疲れてきたし、お昼になったので休憩がてらランチタイム。
大きな花崗岩に腰かけて、道の駅で仕入れたソバ寿しとリンゴのおやきを食べました。
どちらも絶品でした。(また取り寄せてでも食べたいくらい)
やっぱり疲れたのか、まだ結果が出ないHくんも合流し、しばし伊那谷の陽だまりの空気を満喫。
しばらくすると左手の谷からTさんも帰ってきたので作戦会議。
もう一か所行く予定なので、これ以上山の中には入らず、戻りながら掘れる場所を探すことに。
しかし、崖はどこもサラサラかガチガチ。沢側に降りて段差になっているミニ崖もトライしました。
かなり粘りましたが、コンディションのよいポイントがなくて、テンションは下がる一方。
それでもTさんは出す。

マイマイカブリは朽木から出るものですが・・(イリュージョンに違いない)

(最初のポイントに置き忘れた鍬を取りに行ったあと)ひたすらK59を走り松川ICへ。
もう一度駒ケ根ICで降りて、木曽駒ケ岳を左前方に眺めながら北上します。
向かったのは西春近というエリア。
ここは誰も土地勘がないので、野生の勘で山へ突入しました。
未舗装の山道に入り、支線があってその先に崖があるような所があるといいよね、と話していると。
なんと、まさにそんな場所が左手に見え、一も二もなく停車。
適当な高さと長さの小崖で、土質もよく、ここで出なかったらどうしようという理想的なポイント。
期待に胸が膨らみ、バチツルを握る手にも力が戻ってきたのですが・・
あれ? 何も出ない。
そんなはずはないと焦りつつも、掘り続けますが、何もでない。
Tさんですら出せない。
と、Hくんが本日初の雄叫び。

ボウズ回避できてよかったと、ほっとした表情でした。
一方、Tさんはアキタクロナガを出していました。(絶対イリュージョンだ)
他に出たのはこのゴミムシだけ。体長は約8ミリ。

もっと登ればもっといい場所があると楽観的に想像して移動することに。

こんな山道を奥へ奥へと進んでいきます。

さっきのポイントを上回る見た目の崖はありませんが、小崖はぽつぽつとあり、都度試掘しました。
さすがTさんはぽつぽつとクロナガオサを出していましたが、本命のオオオサが出ない。
これは、このエリア自体、分布率が低いのではと判断し、深入りしないことにしました。
どうやら数キロ先が工事中のようだったので、そこまで行ってみて引き返そうということに。
走りながら、「最後にボーナスステージみたいな崖が現れないかなー」と話していると・・
おー、まさに。

気合を入れ直して突撃。
しかし、見た目とは違い、ガレていて土は乾燥していました。Tさんも何も出せない。
ボーナスどころか得点ゼロで先に進み、とうとう工事箇所と思しき場所へ到達。
夏に訪れたいような様子でした。

もう時刻は4時になろうとしていたので、急いで山を下りました。

想定外の展開に焦る三人。さて、どこへ行くか。
さっきの理想崖の先に支道があることが分かり、まずはそこへ入ってみることにしました。
しかし、道は荒れるばかりで崖がまったく現れなかったので、車を降りることもなくUターン。
さあ、いよいよ困った。
とりあえず伊那西部広域農道(農道なので番号なし)に戻り、北上してみました。
小黒川付近に適当な場所がないか、現地周辺を彷徨うも見つからず。
当てのある場所にしようと、Tさんの提案により、ニセアオオサムシを狙いに向かいました。
もう一度天竜川を渡り、北東方向へ。
30分ほどで目標エリアには入りましたが、以前訪れたときとは様子が変わっているらしく。
ピンポイントで場所を見つけることはできず、畑地の周囲の林の中を少し掘りましたが成果なし。
まだ明るいものの、さすがに皆へとへとになってきたこともあり、帰途に就くことにしました。
(疲れていた証拠にこの間の写真がまったくない)

伊北ICから中央道に乗ってバビューン。
八ヶ岳PAあたりで日没となり、双葉SAで休憩。
集合場所だった高尾からは電車で。八王子であずさに乗り換えて帰京しました。
なんだかんだと言っても、結果としては三人でオサムシ8種を採集できました。
オオオサは自分では採れませんでしたが、一応ミッションも達成したことになります。
ただやはり Unfinished business です。
電車の中でHくんと、リベンジするなら伊那谷のオオオサとも話しました。
ところで、クロナガオサムシとアキタクロナガオサムシを仮展足した写真を載せます。
(写真では違いが分からないかもしれませんが)

特にアキクロは、まるでマイマイカブリのように前胸が青くて美しい個体でした。

イリュージョンだろうと因縁をつけてTさんから巻きあげたのだけど。
今日の湯加減
さっそく他のメンバーともスケジュール調整し、先週行ってきました。
東海道の次は甲州街道。

オサホリしながら甲州街道を西へ進み、複数種のオサムシを串刺し採集しようという旅。
今回のメンバーは三人、個人ミッションはオオオサムシとテンリュウオサムシを採集すること。
長いですが全編一気にお届けします。
3月8日の朝、高尾駅に集合し、西へ向けていざ出発。
まず山梨県東部の大菩薩峠方面を目指す案もあったのですが、一気に西部まで行くことに。
韮崎や北杜市はエリアによっては土地勘もあるし、オオオサムシの分布域でもあるからです。
今回も探虫行のリーダーはTさん。(TJさんと呼称変更する案あり)
韮崎ICを降りてすぐ、「ちょっと入ってみましょう」と、いきなり右手の畑地に突入。
単なる野生の勘のようですが、入ってみると林縁に高さ3メートルを超える崖がありました。
速攻でオサホリの身支度を整えて試掘開始。(まだ9時を過ぎたところ)
あいにくの雨でしたが、オサホリは雷雨決行。(現場まで行ければ)
ところが、崖は土というよりも、さらさらの砂で見かけ倒しでした。
朽木が少し落ちていたので叩いてみたら、まったくの外道ですが、こんな子が登場。
本遠征での初の昆虫ということで記念に。

オオクチキムシ (クチキムシ科)
崖の上まで登って様子を見てきたTさんも不発だったようなので、さっさと諦めることに。
雨に濡れているバッタを三人で観察しつつ、一か所目を後にしました。

クビキリギス (キリギリス科)
成虫越冬するバッタで、まだ生きていましたが、雨のせいか元気はありませんでした。

そのまま畑地を進みましたが、軽トラ専用のような細い道を辿り、朝から緊張感が高まる。
道なりに進んでいくと、今度は道幅は狭いまま、ヘアピン連続の下り坂に突入しました。
そこを降りていく途中、斜面林に土肌が見えているところがあり、試掘してみようと停車。
三人三方に散開して掘りました。
しばらく林の中を探索しつつ、数か所試掘しましたが結果が得られません。
すると、TさんとHくんの呼ぶ声がしたので駆けつけると・・初オサムシ。

アオオサムシ (オサムシ科)
Hくんが掘り出したのはとても大きくて赤い個体。Tさんのも赤かったけど写真なし。
ボウソウの通称アカオサもびっくりの赤さというか、濃いピンクという感じもする色。
本命ではないものの、珍しいタイプに俄然テンションが上がり、バチツルを持つ手に力が入ります。
しばらくうろうろしている内に、狭いながらもコンディションの良い小崖を見つけました。
そこを丹念に掘っているとやっと。

同上
仲間はずれにならずに済んで、ほっとしました。
気持ちが楽になったからではないでしょうけど、すぐに追加も。
今度は色違い。

同上
他の二人も追加を掘り出していましたが、青いのはこの個体だけでした。

同上
Tさんが倒木からオオユミアシゴミダマの団体さんを掘り当てたので、記念に数頭確保してリリース。
もう周りに掘れそうな場所はなさそうと判断し、またポイント探しの放浪開始。

丘を上がり、K17七里岩ラインに出ましたが、この辺りで土地勘がある場所としては新府城址の周辺。
でも、昔トラップかけた時はクロナガオサムシ祭りだったことを思い出したのでスルー。
そのまま穴山方面へ向かいます。
七里岩ラインを流していると、左手に大きな崖が見えました。
一旦通り過ぎたものの、Uターンして行ってみることに。

この時点ではすっかり雨もあがっていて、崖に取り付くのも苦はなかったものの、乾燥して固い土。
それを端から見切ったTさんは崖の上の林の中へまっしぐら。
残る二人で土埃の舞うような壁を試掘しましたが何も出ず。
やっと出たのは意外な子でした。

コカブト (コガネムシ科)
そういえば昨夏の穴山での採集会の帰り道、ちょうどこの近くでコカブトを見つけたことを思い出す。
この辺りに分布していることは間違いないようです。

同上
ゴミムシすら出ないので、さっさと諦めようと、崖を登ってTさんを呼んでみたものの返事がない。
多分、声が届かないくらいの奥まで行ってしまっているのだろうと思いつつ。
林の中にたくさん横たわっている松の倒木を崩しながら待っているとやっと姿が現れました。
マイマイカブリを探していたようですが成果なしとのこと。
(分布はしているし倒木もたくさんあるのに出ないというのはおかしい・・薬剤散布が疑われます)

再出発してほどなく、今度はまたTさんの野生の勘で右手の脇道に侵入。
集落を通り、中央本線の線路をくぐると、小さな丘に挟まれた狭い田んぼがありました。
その丘の斜面の一部が掘れそうだったので車を止めて突撃。
丘の裾に沿った用水路をまたいで斜面に取り付いてみると、掘りやすいコンディションではない。
斜面をよじ登って高い位置を攻めていましたが、用水路脇を掘っていたHくんが出しました。

クロオサムシ (オサムシ科)
関東以北、北海道の一部まで広く分布する種ですが、これは山梨長野亜種といわれる個体。
おかげでまた、やる気スイッチが入り、再び崖をよじ登り、掘れる場所をこつこつと。
まもなく出たのが扉の写真の個体でした。
同じ個体ですが、角度によっては青みがかって見えます。

同上
一人一頭ずつ出せたところで場所を変えることにしました。

お昼も過ぎたのですが、この辺りは飲食店もないので、とりあえず日野春駅の方へと移動。
結局お店には入らず、コンビニに寄っておにぎりやお弁当を仕入れました。
脇道に入って西へ進むと左手に谷津田が伸びているのが見えたので、入ってみることに。

散開して試掘しましたが、適当な小崖は見当たらず、斜面林に土が露出している所があるも急過ぎ。
林の中の道は自然散策路のようだったこともあり、粘ることはせずに見切りをつけました。
食べかけのものを始末しながら作戦会議。
Tさんによると、諏訪エリアで目星をつけている場所が一か所あるとのこと。
ならばと、ヤマナシ自体に見切りをつけ、ナガノまでワープすることにしました。

長坂ICから中央道に乗り、諏訪ICまでジャンプ。
甲州街道に出て給油しつつ、再度相談し、ちょっと迂回しながら探虫しつつ目的地に向かうことに。
裏道で山を登り、霧ヶ峰を経由して目的地へ行くことを提案したのです。
久しぶりのK424。
道幅は狭く、路面状態がよくない箇所も多いので、バイクで通るときは周囲を見る余裕はない。
途中に城跡があることも知りませんでした。
アプローチの道はまさにガタゴトの山道で良さそうな気配がしたので入ってみることにしたのですが。
しばらく進むとこんな表示が。

地質にも詳しいTさんによると、辺りの土はいい真砂土のようで、無断採取する人がいるのでしょう。
土や砂を持って帰ることはしませんが、これは遠慮しないといけない。李下瓜田です。
すごすごとUターンし、標高を上げていきました。
しばらく登ると、カーブの頂点が空き地のように開けていて、赤い土壁があるのが見えました。
重機による整地かもしれませんが突撃。

一歩先に壁に対峙したTさんが鍬を振り下ろすと・・「あ、出た」

クロナガオサムシ (オサムシ科)
一撃必殺とはこのことですが、なんと、結局ここで出たのはこの一頭だけでした。
さすがに標高があるので土の中が凍っているところが多々ありました。

凍った固い土と格闘して腕が疲れたこともあり、テンションが下がったので目的地を目指すことに。
山道を一気に駆け上がり、踊り場湿原に出たところで記念撮影。

右手の富士山のような山容は蓼科山。左手の丘は霧ヶ峰。
ビーナスラインとの交差点を左折し、高原からK40で下ります。
霧ヶ峰スキー場に雪はありましたが、人影はまったくなく、リフトも止まっていました。

目的地に設定したのは中腹のエリア。大見山の麓の蓼ノ海公園を抜けてさらに山の中へ。
山道の左右に分岐する地点の右手に、かなり長くて高い崖が現れたので目的地到着としました。
両端と真ん中に分かれて崖に取り付きましたが、ここの土は固くて乾燥していました。
力一杯崩すと大きな土塊ごとはがれ、しかも崖が切り立っているので大崩落に。
そうならないようコツコツと掘るも指標虫も出ず、小さな黒いゴミムシがぽつぽつと出るくらい。
でも、並んで掘っていたHくんが「ちょっと面白いのが出た」という。
どれどれと逆シュワッチしないように横移動して近づいてみると・・
とても美麗な子でした。

ヤホシゴミムシ (オサムシ科)
全国に分布するようですが、樹上性の珍しいゴミムシ。フタツメゴミムシと同じ属です。
続けて2頭出たので1頭あげるよと言われましたが、強がってもらいませんでした。
が、なんとこの後は何も出ず。
Tさんでさえ何も出せなかったようで、道にまで転がり出た土塊を片付けて撤収。

これ以上山の中には入らず、そのまま道を先へ進みました。
まもなく分岐が現れたので下るルートを選んだのですが、どうも周囲の様子が気に入らない。
時刻は5時前、Tさんに提案し、分岐まで戻って中腹を辿る道へ入ることにしました。
するとまもなく、こういうものが現れてびっくり。

御射山神社
八島ケ原湿原の南端にも御射山神社があるのですが、もう一か所あったのです。
以前この麓のゲストハウスに泊まったときに近所のおじさんに聞いて存在を知ってはいたのですが。
どこにあるのかは知りませんでした。
残念ながら参拝はしませんでしたが、この前後の道沿いに掘れそうな所が散在していたので。
散開して試掘開始。
ガレていたり、サラサラだったり、フカフカだったりとコンディションは良くなかったのですが。
ぽつぽつとこの子たちは出ました。

クロナガオサムシ (オサムシ科)
しかし掘れども掘れども本命は出ない。
日没が迫り、手元が見えづらくなってきたので、やむなく打ち止めとしました。
さっきの道を一気に下り、諏訪湖の畔の宿へ。
一旦温泉で土と埃を落としてさっぱりしてから、食事に出かけて反省会。
宿に帰ってからも翌日の作戦会議をして早めに床に就きました。

我らがバイブル「日本オサムシ図説」
まだ本命がまったく採れていない・・と夢の中でも掘っていた・・

翌日、朝風呂を浴びて美味しい朝食を摂り、危うくまったりしそうでしたが8時に出発。
前夜の作戦会議のとおり、当てもないポイント探しはせず、直接目的地へ向かいます。
諏訪ICまで戻るのですが、上川の土手の道は通勤車専用道路のような状況で超スムースに進行。
辰野を過ぎ、憧れの伊那谷エリアに入り、駒ケ根ICまであっという間でした。
向かうのは中川村。
まずはR153に出て、さらにバイパスに乗ってずんずん南へ。
もう余裕はなくなっているので、山へ入る前に行動食を買っておこうと、バイパス沿いのコンビニへ。
と、道を挟んだ隣に道の駅があるのが見え、せっかくなのでそっちへ行こうと提案しました。
ところが敷地に入ってみると、店内の電気が点いてなくて幟も出ていない。
でも人の気配がするので、正面入り口に突っ込むように車を止め、降りて確認することに。
自動ドアが開いておばちゃんが出てきたので、「やってますか?」と声を掛けました。
時刻はジャスト9時、ちょうど開店時間だったようで皮切り入店させてもらいました。
信州といえばのおやき、リンゴ、五平餅など、各自好きなものを買い込みました。
マイチョイスはこれ。

ソバ寿し
あと、おやきと、ついでに地酒も買いました。

さあ、いざ行かん伊那谷へ、テンリュウオサの里へ。
(もう一種の本命のオオオサムシの分布域でもあります)
さらに南下し、天竜川を渡り、いよいよ中川村へ入る。
ポイント探しは伊那谷で採集経験があるTさんに任せ、こちらは周辺の崖を見逃さないようにします。
谷を渡る橋を過ぎ、天竜川へ向けて降りてみようと、右折しましたが行き止まり。
もう少し先を降りてみましたが、途中にポイントはないまま集落に出てしまったので元のエリアへ。
しばらく同じエリア内をぐるぐる巡ったのは、Tさんがこの辺りに来たことがあるというから。
30分ほど彷徨ったでしょうか、畑地から丘へ上がる細い道の入口に来た時。
「あ、ここだ、ここ」
Tさんが昔来たことがあるポイントなのだそう。同じ場所に辿り着くとはと本人も感慨深げでした。

とにかく実績があるポイントというのは心強い。
この日初の試掘開始です。
しかし、しばらく掘っても出るのはハサミムシばかり。
さらにしばらくすると、遠くでTさんの「出た」という声が聞こえました。
が、もう確認しに行く余裕もなく、というか目の前の崖に全集中。
と、やっと何か出ました。

オオクロナガオサムシ (オサムシ科)
本命ではありませんが、これはこれで貴重な個体。
本種は主に近畿地方に分布しているのですが、飛び地的に南信と駿河に生息しています。
これは天竜川個体群という特殊なやつ。
続けて兄弟が出ました。

同上
うれしいけれど満足はできない、けれどちょっとうれしい。

同上
やる気スイッチが入ったのは確かで、ここからオサホリマシーンにモードチェンジしました。

倍速回転で掘っているとその結果はすぐ出ました。
モードが変わって頭もハイになっていたからか、無意識に
「テンリュウ! ゲンイチロウ!」
と叫んだとき。
ぼろっと出た。

裏返しでしたが、クロナガオサでないことは一目でわかる。
本命君です。

テンリュウオサムシ ♂ (オサムシ科)
正確にはミカワオサムシの天竜川中流域亜種。
これで一気に気持ちは楽になり、報告がてらTさんのところへ歩いていると・・
「出ましたオオオサ」

オオオサムシ (オサムシ科)
どこかに仕込んでいたのではないかと疑いたくなる半面、モチベーションは上がりました。
テンリュウのメスも出していたので負けてられない。
しかし、三人で30分以上掘ったのでさすがにもう掘れる場所がなくなっていました。
それでも諦めずに、カニ歩きして掘り残した箇所をコツコツと崩していると。
10センチ幅ほどの掘り残し地点から・・メスでした。

テンリュウオサムシ ♀ (オサムシ科)
さらに肩の荷が下りました。

同上
しかしオオオサどころか何も追加は出ず、もう本当に掘りつくしたので場所を変えることにしました。

なおも里地エリアを彷徨い、集落へのアプローチのような小道に沿った小崖にもトライしました。
が、結果は出ず。
そこで、せっかく伊那谷に来たので、伊那谷らしいところへ行ってみましょうと提案。
GoogleMapで谷沿いの山道らしきルートを見つけてまっしぐら。
そこは入口から細いガタゴト道、さらに途中からはガッタンゴットン道になる”わくわく林道”でした。
しかし道沿いの斜面は崩れやすいのでしょう、ずっとネットが敷設されていました。
しばらく奥へ進み、やっとネットが途切れ、分岐地点のやや開けた場所で停車。
目の前に巨大な崖がありました。

全面白っぽくて粗い砂。花崗岩が砕けたのだということが分かりました。
これも真砂土なのでしょうけど、砂利に近いくらい粗くてザラザラしています。
さっそくTさんは崖の上端のオーバーハングした林床の土に、Hくんは下端の土混じり部分に挑む。
こちらは左右の分岐の先の様子を確認しに行きました。
まず左手は、ずっと同じ砂の崖が続き、どこにバチツルを振ってもサクッと入り手ごたえがない。

それが延々と続くようなので諦めて引き返しました。
今度は右手の車で登るのは厳しいと思われる細い山道へ。
こちらも途中から花崗岩の砂の高い壁が続き、左へ巻くカーブに向かって低くなり途切れました。
カーブの部分は岬のような形で土も混じっていたので、試掘してみましたがやはり柔らかい。
今回の探虫行で苦戦したのは、乾燥した土もそうですが、”ゆるふわ”状態の崖が多かったこと。
何度「ふっかふかだよ、おっかさん」と独り言を漏らしたことか。
カーブの先に崖は見えなかったので引き返していると、遠くからかすかにTさんの声が聞こえました。
「でましたー、ナカムライ」
ナカムライ(nakamurai)とはテンリュウオサのこと。
後で聞いてみたら、さっきの左手のザラザラ崖で出したとのこと。(イリュージョンに違いない)
戻りながらこちらのザラザラ崖の上端部分も探ってみましたが、ゴミムシすら出ませんでした。
広場まで戻り、崖のオーバーハングにも挑んでみたものの、出たのはこの子だけ。

カナヘビ
朝から掘りっぱなしでさすがに疲れてきたし、お昼になったので休憩がてらランチタイム。
大きな花崗岩に腰かけて、道の駅で仕入れたソバ寿しとリンゴのおやきを食べました。
どちらも絶品でした。(また取り寄せてでも食べたいくらい)
やっぱり疲れたのか、まだ結果が出ないHくんも合流し、しばし伊那谷の陽だまりの空気を満喫。
しばらくすると左手の谷からTさんも帰ってきたので作戦会議。
もう一か所行く予定なので、これ以上山の中には入らず、戻りながら掘れる場所を探すことに。
しかし、崖はどこもサラサラかガチガチ。沢側に降りて段差になっているミニ崖もトライしました。
かなり粘りましたが、コンディションのよいポイントがなくて、テンションは下がる一方。
それでもTさんは出す。

マイマイカブリ (オサムシ科)
マイマイカブリは朽木から出るものですが・・(イリュージョンに違いない)

(最初のポイントに置き忘れた鍬を取りに行ったあと)ひたすらK59を走り松川ICへ。
もう一度駒ケ根ICで降りて、木曽駒ケ岳を左前方に眺めながら北上します。
向かったのは西春近というエリア。
ここは誰も土地勘がないので、野生の勘で山へ突入しました。
未舗装の山道に入り、支線があってその先に崖があるような所があるといいよね、と話していると。
なんと、まさにそんな場所が左手に見え、一も二もなく停車。
適当な高さと長さの小崖で、土質もよく、ここで出なかったらどうしようという理想的なポイント。
期待に胸が膨らみ、バチツルを握る手にも力が戻ってきたのですが・・
あれ? 何も出ない。
そんなはずはないと焦りつつも、掘り続けますが、何もでない。
Tさんですら出せない。
と、Hくんが本日初の雄叫び。

クロナガオサムシ (オサムシ科)
ボウズ回避できてよかったと、ほっとした表情でした。
一方、Tさんはアキタクロナガを出していました。(絶対イリュージョンだ)
他に出たのはこのゴミムシだけ。体長は約8ミリ。

アオアトキリゴミムシ (オサムシ科)
もっと登ればもっといい場所があると楽観的に想像して移動することに。

こんな山道を奥へ奥へと進んでいきます。

さっきのポイントを上回る見た目の崖はありませんが、小崖はぽつぽつとあり、都度試掘しました。
さすがTさんはぽつぽつとクロナガオサを出していましたが、本命のオオオサが出ない。
これは、このエリア自体、分布率が低いのではと判断し、深入りしないことにしました。
どうやら数キロ先が工事中のようだったので、そこまで行ってみて引き返そうということに。
走りながら、「最後にボーナスステージみたいな崖が現れないかなー」と話していると・・
おー、まさに。

気合を入れ直して突撃。
しかし、見た目とは違い、ガレていて土は乾燥していました。Tさんも何も出せない。
ボーナスどころか得点ゼロで先に進み、とうとう工事箇所と思しき場所へ到達。
夏に訪れたいような様子でした。

もう時刻は4時になろうとしていたので、急いで山を下りました。

想定外の展開に焦る三人。さて、どこへ行くか。
さっきの理想崖の先に支道があることが分かり、まずはそこへ入ってみることにしました。
しかし、道は荒れるばかりで崖がまったく現れなかったので、車を降りることもなくUターン。
さあ、いよいよ困った。
とりあえず伊那西部広域農道(農道なので番号なし)に戻り、北上してみました。
小黒川付近に適当な場所がないか、現地周辺を彷徨うも見つからず。
当てのある場所にしようと、Tさんの提案により、ニセアオオサムシを狙いに向かいました。
もう一度天竜川を渡り、北東方向へ。
30分ほどで目標エリアには入りましたが、以前訪れたときとは様子が変わっているらしく。
ピンポイントで場所を見つけることはできず、畑地の周囲の林の中を少し掘りましたが成果なし。
まだ明るいものの、さすがに皆へとへとになってきたこともあり、帰途に就くことにしました。
(疲れていた証拠にこの間の写真がまったくない)

伊北ICから中央道に乗ってバビューン。
八ヶ岳PAあたりで日没となり、双葉SAで休憩。
集合場所だった高尾からは電車で。八王子であずさに乗り換えて帰京しました。
オマケ
なんだかんだと言っても、結果としては三人でオサムシ8種を採集できました。
オオオサは自分では採れませんでしたが、一応ミッションも達成したことになります。
ただやはり Unfinished business です。
電車の中でHくんと、リベンジするなら伊那谷のオオオサとも話しました。
ところで、クロナガオサムシとアキタクロナガオサムシを仮展足した写真を載せます。
(写真では違いが分からないかもしれませんが)

左 アキタクロナガオサムシ ♀、右 クロナガオサムシ ♂
特にアキクロは、まるでマイマイカブリのように前胸が青くて美しい個体でした。

イリュージョンだろうと因縁をつけてTさんから巻きあげたのだけど。
今日の湯加減
桜の開花とともにやってきましたブルーマーチ。
花粉症ではありませんが、きっと同じように分かりやすく症状が現れます。
唯一の対処方法は虫採りに行くことですが、今週末はそれもできず。
そこへもってきて気圧が低いのが困ります。
でも宣言が解除されることもあり、明日は久しぶりのイベント開催。
子供たちの顔を見たら元気が出ると信じて…
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
テンリュウオサ、おめでとうございます。よいですね。日本海側も大きな川たくさんありますが、それぞれ名前は別なんでしょうか?
by 高和です。 (2021-03-21 00:46)
一泊二日、春の遠征お疲れ様でした♪
それにしてもみなさまの虫屋魂を感じさせていただきました。
いやー移動も含めてみなさまタフですね!
とても真似できません^^;
御射山神社、わたしも「あれ?ここにもある」確認はしてけど未参拝^^;地元民として今度参拝してきます。
上川の土手の道は通称「通勤バイパス」と呼ばれています。
水量が増えるともちろん通行禁止になりますがノンストップの便利な道です^^v
先日里山を歩くとヒメアカタテハ?やオツネントンボ?がわらわらと目覚めはじめていました♪
またいらしてくださいませ~^^
by よしころん (2021-03-21 08:10)
>高和です。さん
日本海側の亜種分化は比較的少ないと思います。
調査が進めば新亜種の存在が判明するかもしれませんが・・
>よしころんさん
どうやら八島ケ原の方が本家のようですね。参拝お願いします^^;
やっぱり通勤パイパスですか・・普通ならサイクリングロードですよね^^
夏にまた行ければと思っていますのでその際はまたよろしくです~♪
by ぜふ (2021-03-21 09:34)
雪山が見えるところまで遠征お疲れ様です。
一人じゃないと釣りと同じく自分だけ坊主が怖い(≧▽≦)
でも大漁でしたね。
by 響 (2021-03-22 17:36)
わたしも地質に詳しくなりたいです。
そっかー、私有地の土を持って帰ってしまう人も居るのですね。
by リュカ (2021-03-24 10:09)
>響さん
さすがに1000mを越えると下界との差が明らかでしたね^^;
チームではあるものの、チーム内でのコンペも楽しいゲーム。
でも今回は大漁とはいえない成果でした・・必リベンジ!
>リュカさん
固い花崗岩も時間が経過すると、あるとき突然崩壊するそうです。
なので、この砂利のような砂はよく見ると三色なんです。
ただ、土や砂自体には興味がないので引き返しました^^
by ぜふ (2021-03-24 22:33)
あら、カナヘビ。このクニッとした曲線が何ともいい感じでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2021-03-25 22:19)
オサホリの「旅」っていうところがいいですねぇ。
コクワガタというのは知っていましたがコカブトというのは
知りませんでした。しかも土の中に。
アオアトキリゴミムシが、とても美しいです。
by sakamono (2021-03-26 21:34)
>ぼんぼちぼちぼちさん
ハチュ好きなんですね♪
カナヘビやトカゲは副産物として多々発掘してしまいます^^;
>sakamonoさん
旅して土を掘るのは土木関係者くらいでしょうね・・
コカブトは木の洞の中に溜まった腐植土の中にもいますね。
アオアトキリゴミムシはこのエリアでの唯一の収獲でした♪
by ぜふ (2021-03-27 00:01)