"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
トンガラシ虫 [虫屋]
先日、ある虫屋さんからメールが届きました。
今シーズンも例の虫が採れたので、お送りしてよいでしょうか。という主旨でした。
前回と同様、先生への献上品ということですが、たくさん採れたので仲良く分けてくださいとのこと。
うわ、それはうれしい!ということで楽しみに待っていたわけですが・・
採れたてホヤホヤというか、なんと、生きたまま届きました。
昨年の7月のおわりに先生と高知を訪れた(ついでに帰省した)ことは記事にしましたが、
そのときにわざわざ香川から講演を聞きに来られていた虫屋の方が何人かおられました。
その方々と先生としばし虫談義をしているとき、土佐といえばということだったと思いますが、
ヒラズゲンセイの話になりました。
そこでU氏という方が、後日標本をお送りしますよとおっしゃって、本当に送って下さったのでした。
というわけで今年も送ってきてくれたということです。
ゲンセイは「莞菁」と書きます。薬草となる植物の名前が由来だと思います。
薬草ですが成分は毒なのでしょう。ゲンセイの仲間は体にカンタリジンという毒を持っています。
(ヒメツチハンミョウやマメハンミョウも同様です)
だからでしょうか、オスもメスもトンガラシのような真っ赤な体。目と触覚とアゴと脚は真っ黒。
デビルチックに強烈なツートーンカラー。
ところがよく観察すると、オスは特に名前のとおり頭でっかちでコミカルな小さい黒目。
キバ(アゴ)は立派ですが、マンガチックで憎めない顔をしています。(個人的な感想です)
大きさもオスは30ミリくらいあるのでとても目立つはず。でも見たことがある人は少ないですよね。
このトンガラシ虫、生態がよく分かっていないのです。
以前は”トサヒラズゲンセイ”という和名で通っていたとおり、最初に発見されたのは高知。(戦前)
主に四国に分布しているようですが、近年は近畿地方に分布を拡げ、和歌山、兵庫、大阪、奈良、京都、そして滋賀まで北上しているとのこと。
先生いわく、元々は東南アジアの虫ではないかとのことで、彼の地にも似た虫がいるそうです。
ところがなぜか九州や沖縄での記録は少ない。
クマバチに依存していて、メスはクマバチの巣の中に侵入して産卵するのですが、なぜクマバチなのかは不明。(沖縄だとオキナワクマバチ)
孵化した幼虫は大家さんのクマバチの体にしがみついて巣の外に出るのだそうです。
そして1年後にまたクマバチにしがみついてクマバチの巣に戻ってくるという・・
その間、どこでどうして生きているのか分かっていないようです。何故わざわざ、何のために・・
とまあ、見た目といい、分布といい、生態といい、ニンゲンの理解の域をはるかに超えている虫です。
理解を超えているついでに、こんなイタズラをしました。
昆虫館に持って行ったショウナイ土産のサクランボをフィーチャーしてみました。
おんなじ色でしょ。(個人的な感覚です)
サクランボ虫というタイトルにしようと思ったのですが、やはり毒虫なので唐辛子にしました。
噛んだり刺したりはしませんが、体液は皮膚についただけで炎症を起こしますのでご注意ください。
(オス同士はアゴで噛みあってケンカします)
さて、今週は飛行機に乗って一緒に移住してきたアゲハたちもデビューしました。
先週末上京して帰ってきたら壱号が羽化していたのですが、この子としばらく遊びました。
オリゴ糖を薄めたドリンクを綿棒につけて飲ませていたのですが、毎回それでは面倒なので、さらに薄めてティッシュに浸し、それをある場所に固定して水飲み場にしてみました。
正確には、この子はどういうわけかいつも同じ場所にとまるので、その場所をバーカウンターにしたのです。
そしたら、ぐんぐん飲むわ飲むわ。
飲みすぎておなか壊して死ぬんじゃないかと思ったら、なんと自然ではよく見る吸水行動をしていたのです。
そう、特にオスのチョウが湿った土や砂利の上で水分を吸収し続ける生態です。
吸水しながら、お尻からリズミカルに排水します。
写真では分かりづらいですが、床に直径5センチほどの水たまりができました。
この行動は上がった体温を下げるためと言われることがありますが、じゃあ何故メスには見られないのかと思っていました。(ときにメスもするようですが)
そう、室内はエアコンをつけていたので体温を下げるためとは思えません。
じゃあ、もうひとつの理由、精巣を発達させるためにミネラルを採り込むためなのか。
特製ドリンクに使ったのはオリゴ糖を含んだ甘味料と水道水のみ。
甘味料の成分をみると、フラクトオリゴ糖、酸味料(内容不明)、保存料(ソルビン酸K)、甘味料(各種アミノ酸)でしたので、いわゆる鉱物系のミネラル成分は入っていないよう。
水道水には少し含まれているのでしょうかね。
純水が手元にあればさらに実験をしてみたいところでしたが、もうこの子は十分でしょうから・・
そしてそれから数日後に他のサナギ、弐号~四号が一斉に羽化しました。
オスももう一頭でたのですが、早めにでてしまった壱号が☆になってしまいましたので、この子たちは元気なうちに逃がすことにしました。
この子たちは元々青森県人ですが、もちろんショウナイにも分布していますので問題ありません。
問題なのは、どこに食草(カラスザンショウやコクサギなど)があるか、つまり産卵場所があるか。
実は前記事のフィールドでも食草を探していたのですが、見当たらなかったのです。
(植物の選定眼がないので見逃した可能性もあるが黒いアゲハも見かけない)
なので、今日は別の山へ向かってみたのです。
ところが前記事のフィールドと同じ山塊だということもあるのか、見当たりません。
探すのは本人たちに任せた方がむしろ良いかもしれないとも思いましたが、最善の努力はしようと、別の山塊を目指しました。
その中腹の神社の境内で、偶然黒いアゲハを観察したので、これは大丈夫と判断しました。
ということで・・まずは女子ふたりを。
自然ではこんな様子はまず観察できません。
彼女たちには低温麻酔をしてお連れしたので、まだちゃんと目が覚めていないというか動けません。
男子も三角紙から出しました・・元気に腕に登ってきましたが、まだ飛べはしませんでした。
それでも間もなく、体温が十分高くなったのでしょう、全員元気に離陸していきました。
今年も東京スカイツリータウンにて「大昆虫展」が7月15日(土)から開催されます。
今回もファーブル会が全面協力しています。
こんな標本箱も作りました。
会場で見つけてください。
今日の湯加減
今シーズンも例の虫が採れたので、お送りしてよいでしょうか。という主旨でした。
前回と同様、先生への献上品ということですが、たくさん採れたので仲良く分けてくださいとのこと。
うわ、それはうれしい!ということで楽しみに待っていたわけですが・・
採れたてホヤホヤというか、なんと、生きたまま届きました。
昨年の7月のおわりに先生と高知を訪れた(ついでに帰省した)ことは記事にしましたが、
そのときにわざわざ香川から講演を聞きに来られていた虫屋の方が何人かおられました。
その方々と先生としばし虫談義をしているとき、土佐といえばということだったと思いますが、
ヒラズゲンセイの話になりました。
そこでU氏という方が、後日標本をお送りしますよとおっしゃって、本当に送って下さったのでした。
というわけで今年も送ってきてくれたということです。
ヒラズゲンセイ ペア (ツチハンミョウ科)
ゲンセイは「莞菁」と書きます。薬草となる植物の名前が由来だと思います。
薬草ですが成分は毒なのでしょう。ゲンセイの仲間は体にカンタリジンという毒を持っています。
(ヒメツチハンミョウやマメハンミョウも同様です)
だからでしょうか、オスもメスもトンガラシのような真っ赤な体。目と触覚とアゴと脚は真っ黒。
デビルチックに強烈なツートーンカラー。
ところがよく観察すると、オスは特に名前のとおり頭でっかちでコミカルな小さい黒目。
キバ(アゴ)は立派ですが、マンガチックで憎めない顔をしています。(個人的な感想です)
ヒラズゲンセイ ♂ (ツチハンミョウ科)
大きさもオスは30ミリくらいあるのでとても目立つはず。でも見たことがある人は少ないですよね。
このトンガラシ虫、生態がよく分かっていないのです。
以前は”トサヒラズゲンセイ”という和名で通っていたとおり、最初に発見されたのは高知。(戦前)
主に四国に分布しているようですが、近年は近畿地方に分布を拡げ、和歌山、兵庫、大阪、奈良、京都、そして滋賀まで北上しているとのこと。
先生いわく、元々は東南アジアの虫ではないかとのことで、彼の地にも似た虫がいるそうです。
ところがなぜか九州や沖縄での記録は少ない。
クマバチに依存していて、メスはクマバチの巣の中に侵入して産卵するのですが、なぜクマバチなのかは不明。(沖縄だとオキナワクマバチ)
孵化した幼虫は大家さんのクマバチの体にしがみついて巣の外に出るのだそうです。
そして1年後にまたクマバチにしがみついてクマバチの巣に戻ってくるという・・
その間、どこでどうして生きているのか分かっていないようです。何故わざわざ、何のために・・
とまあ、見た目といい、分布といい、生態といい、ニンゲンの理解の域をはるかに超えている虫です。
理解を超えているついでに、こんなイタズラをしました。
昆虫館に持って行ったショウナイ土産のサクランボをフィーチャーしてみました。
おんなじ色でしょ。(個人的な感覚です)
サクランボ虫というタイトルにしようと思ったのですが、やはり毒虫なので唐辛子にしました。
噛んだり刺したりはしませんが、体液は皮膚についただけで炎症を起こしますのでご注意ください。
(オス同士はアゴで噛みあってケンカします)
さて、今週は飛行機に乗って一緒に移住してきたアゲハたちもデビューしました。
オナガアゲハ ♂ (アゲハチョウ科)
先週末上京して帰ってきたら壱号が羽化していたのですが、この子としばらく遊びました。
オリゴ糖を薄めたドリンクを綿棒につけて飲ませていたのですが、毎回それでは面倒なので、さらに薄めてティッシュに浸し、それをある場所に固定して水飲み場にしてみました。
正確には、この子はどういうわけかいつも同じ場所にとまるので、その場所をバーカウンターにしたのです。
そしたら、ぐんぐん飲むわ飲むわ。
同上
飲みすぎておなか壊して死ぬんじゃないかと思ったら、なんと自然ではよく見る吸水行動をしていたのです。
そう、特にオスのチョウが湿った土や砂利の上で水分を吸収し続ける生態です。
同上
吸水しながら、お尻からリズミカルに排水します。
写真では分かりづらいですが、床に直径5センチほどの水たまりができました。
この行動は上がった体温を下げるためと言われることがありますが、じゃあ何故メスには見られないのかと思っていました。(ときにメスもするようですが)
そう、室内はエアコンをつけていたので体温を下げるためとは思えません。
じゃあ、もうひとつの理由、精巣を発達させるためにミネラルを採り込むためなのか。
特製ドリンクに使ったのはオリゴ糖を含んだ甘味料と水道水のみ。
甘味料の成分をみると、フラクトオリゴ糖、酸味料(内容不明)、保存料(ソルビン酸K)、甘味料(各種アミノ酸)でしたので、いわゆる鉱物系のミネラル成分は入っていないよう。
水道水には少し含まれているのでしょうかね。
純水が手元にあればさらに実験をしてみたいところでしたが、もうこの子は十分でしょうから・・
そしてそれから数日後に他のサナギ、弐号~四号が一斉に羽化しました。
オスももう一頭でたのですが、早めにでてしまった壱号が☆になってしまいましたので、この子たちは元気なうちに逃がすことにしました。
この子たちは元々青森県人ですが、もちろんショウナイにも分布していますので問題ありません。
問題なのは、どこに食草(カラスザンショウやコクサギなど)があるか、つまり産卵場所があるか。
実は前記事のフィールドでも食草を探していたのですが、見当たらなかったのです。
(植物の選定眼がないので見逃した可能性もあるが黒いアゲハも見かけない)
なので、今日は別の山へ向かってみたのです。
ベニシジミ(春型)号 見参!
ところが前記事のフィールドと同じ山塊だということもあるのか、見当たりません。
探すのは本人たちに任せた方がむしろ良いかもしれないとも思いましたが、最善の努力はしようと、別の山塊を目指しました。
その中腹の神社の境内で、偶然黒いアゲハを観察したので、これは大丈夫と判断しました。
ということで・・まずは女子ふたりを。
オナガアゲハ ♀ (アゲハチョウ科)
自然ではこんな様子はまず観察できません。
彼女たちには低温麻酔をしてお連れしたので、まだちゃんと目が覚めていないというか動けません。
男子も三角紙から出しました・・元気に腕に登ってきましたが、まだ飛べはしませんでした。
オナガアゲハ ♂ (アゲハチョウ科)
それでも間もなく、体温が十分高くなったのでしょう、全員元気に離陸していきました。
オマケ
今年も東京スカイツリータウンにて「大昆虫展」が7月15日(土)から開催されます。
今回もファーブル会が全面協力しています。
こんな標本箱も作りました。
アフリカのシジミチョウたち
会場で見つけてください。
今日の湯加減
今日オナガたちをリリースしたあと・・というかリリースしている最中。
うれしい出会いがありました。
オナガたちが出会わせてくれたような気がします。
そのことについてはまた次回。
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
おはようございます^^
虫もいろいろありますね~トンガラシ虫、毒虫はやはり綺麗?
お花も綺麗なものって毒がある^^
昨日蝶を写しました。何蝶かまだよく見ていないです。蝶もいろいろ種類がいるのですね。
by mimimomo (2017-07-10 07:52)
とんがら、は とうがらし、の赤
刺激的な色目、存在感がすごい
最初から、ビックリです
ご同伴?した子も無事羽化、、飛びた地ましたのね
オナガアゲハ、姿いいですね
離陸、、元気でね
by engrid (2017-07-12 00:53)
ヒラズゲンセイ、面白いムシですねぇ。
姿かたちも生態も^^
by よしころん (2017-07-12 18:31)
サクランボより本当に唐辛子と同じ色艶ですね。
毒と言うより辛そう。
しかも強そうだし最強の部類に入るのでは?
by 響 (2017-07-13 18:10)
私は一瞬梅干しかと思いました。このキバを見ると、ちょっと
コワイ感じもします^^;。
オナガアゲハ、美しい形ですねぇ~。
by sakamono (2017-07-14 00:38)
>mimimomoさん
植物も昆虫も派手なものはそんな感じですよね~
チョウチョ、ぜひアップしてください^^
>engridさん
こんな配色は本邦らしくないですが、ほんと存在感特大です^^
オナガたちはきっと新天地で気持ちよく舞っていると思います。
>よしころんさん
この子だけで研究ネタになると思うくらい、
こんな突っ込みところの多い虫もめずらしいです^^;
>響さん
辛いというより、天国に行けますよ^^;
でも強そうにみえて、実は・・・書ききれないのですみません。
>sakamonoさん
梅干し! ^^
オナガは飛び方も優雅なんですよ~♪
by ぜふ (2017-07-14 21:24)
ヒラズゲンセイ、大きくて色も形もかっこいいですね!
一度は見てみたい虫の一つです。
そのためには四国遠征しなければなりませんが、奇跡の出会いを期待するしかなさそうですね。
by hirokou (2017-07-26 11:25)
宮崎でヒラズゲンセイを発見しました。
成虫が何を食べているのか、調べても情報が出てこないのですが、何かご存知のことがあれば教えていただけないでしょうか?
by 森崎一志 (2019-07-21 08:50)
>森崎さん
ヒラズゲンセイの飼育情報は寡聞にして知りえていないです。
成虫は後食しない(何も食べない)というウワサもあります。
by ぜふ (2019-07-23 15:40)