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"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。

気絶するほど悩ましい [探虫行]

9月20日から22日にかけての静岡~神奈川遠征の報告です。

東名のIC近くでT師匠をピックアップして高速道路に乗った時点からすでに大渋滞でした。

それから2時間以上も渋滞は続き、目的地近くに着いたときにはもう疲れ切っていたのですが、
前入りしていた偵察隊から朗報メールを受け取り、俄然気分が盛り上がってきました。

そう、前日仕掛けたトラップに獲物がかかったとの連絡だったのです。

前記事で書いた”ターゲット”というのはこの子でした。

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ポイントはM市のとある砂浜でした。

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この写真は宿の近くの浜


さっそく支度を整えて、師匠と周辺の環境を見て廻り、めぼしい場所にトラップをセットしていきました。

エリアを二つに分け、第1ポイントは砂浜南側の林に近いエリア、第2ポイントは砂浜北側の草むらの縁周辺。

1時間ほどで仕掛け終わり、みんなで記念写真などを撮って浜を後にしました。

一旦宿に向かい荷をほどき、偵察隊とそのお父上(地元民)にご案内していただき、地元の寿司屋で夕食。

それからご自宅にもお呼ばれしてしまい、歓待を受けることに。(大変ごちそうさまでした)

さらにわざわざ宿まで送ってもらい(大変お世話になりました)、一息ついた後、せっかくの遠征ですから、
師匠と海岸まで歩いて夜の探虫に出かけました。

防波堤の上につくられたサイクリングロード沿いの草むらの縁をライトで照らしながら見ていくと・・

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ヒメカクスナゴミムシダマシ? (ゴミムシダマシ科)


気を付けないと踏んづけてしまうくらい大量にいて、あちこちでこんな集団を観察することができました。

あとで気が付いたのですが、一種類ではなくて二種類が混じっているようでした。

とてもよく似ていて手元の図鑑では判別できないので、後日昆虫館の詳しい図鑑で調べてみようと思います。

もう一種類、オサムシの仲間をたくさん観察することができました。

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オサムシモドキ (オサムシ科)


師匠によると、今ではめずらしい種類だとのことでしたが、大量にいたのでピンと来ませんでした。

しかし後でレッドデータブックで調べてみたら、茨城県を除く関東では絶滅危惧種(I・II)に指定されていました。

それから河口まで歩き、橋を渡って漁港の周辺も探しましたが、これらの他にめぼしい昆虫はいませんでした。

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翌朝、盛り沢山の朝ごはんを食べて。(フルーツの盛り合わせも付く豪華さ)

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さあ、いよいよ虫屋試験の採点の時間です。

心配ではありますが、ドキドキの緊張感よりも、ワクワクの期待感の方が圧倒的に勝っていました。

最初に仕掛けた第1ポイント、林に近い砂浜はほぼ収穫ゼロでした。

どうやら夜半にざっと雨が降ったらしく、小さなゴミムシ類はトラップの底でおぼれてしまっていました。

雨が降るという予想をしていなかったという意味では虫屋試験不合格。

成果としては、昨夜見飽きたオサムシモドキが少々入っていただけ。(師匠はザンネンながら収穫なし)

次は第2ポイント。こちらは偵察隊が1匹採れた付近なので、第1ポイントよりは有望でしたが・・・

先にトラップの確認をはじめていた師匠から 「入ってました~!」 という歓声が上がりました。

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久しぶりに登場のT師匠


このあと続けてゲットした2匹目は生きていたのであげるよと気前良くくれました。(さすが師匠、太っ腹)

しかしこちらも、ゴミムシ、ゴミムシダマシ、ハサミムシばかりのトラップを何個か回収したのち、ついに。

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夢に出てくるほど憧れ、この夏の間プチ熱中症になりながら房総の砂浜をあちこち探し回った昆虫がやっと採集できて、気絶するほどのうれしさでした。

トラップ(コップ)の中ほどにカゴをセットしているため、多少水が溜まっても溺れてしまうことなく無事。

さらに別のトラップにも。

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結局、本命を2匹採集することができました。
(師匠は計4匹でしたが1匹くれたのでちょうど半分こということに)

地元の偵察隊もちゃんと1匹採集していて、全員大満足。 虫屋(オサ屋)試験合格といったところ。

さて、興奮がさめたところで少しこの虫について説明をします。

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オオヒョウタンゴミムシ (オサムシ科)


一見クワガタムシかとも思うような姿をしていますが、名前の通り、ゴミムシ(オサムシ)の仲間です。

国内に棲むオサムシ類では、マイマイカブリに次ぐ大型種で、大きい個体は40ミリを越えます。
(今回採れた子もそれくらいでした)

ちなみにコクワガタの大きいオスやノコギリクワガタの小さいオスと同じくらいの大きさ。

ただ、クワガタと違ってオスメスともに大きいアゴを持っています。

なのでこのアゴはクワガタのオスのアゴとは違う目的があるということです。(※これは追記で訂正します)

アゴの先端は鋭利ではなく、指を挟まれても刺さることはありません。(ただ力は相当強い)

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良い子は真似しないように


捕食する(エサとなる獲物を解体する)ために発達しているのだと思います。

ちなみにオオヒョウタンゴミムシは、富山、山梨、福井、奈良県を除く近畿・中部地方で絶滅危惧種(I・II)に指定されています。
(当然東京都でも絶滅危惧種)

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ということで、遠征の前半は大成功ということになりました。

ポイントは過去の文献などを参考にしたものの詳細な場所は分からなかったので、地図とにらめっこした末、最後は虫屋としての勘で決めましたが、それが運良く当たってくれました。

ただ、第1ポイントでは1匹も採れなかったように、生息域は局所的ということがいえそうです。

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オマケ


オオヒョウタンゴミムシの愛すべき特徴も紹介します。

それはこれ。(扉の写真は真正面から撮影したもの)

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アゴを大きく広げてカラダを反り返し、肢もそれぞれ力強く開いたポーズ。

これは一瞬の姿ではなく、このままずっと固まっているのです。

その証拠に。

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ひっくり返してもそのまま。

また、この子は擬死もします。

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この生態はファーブルも昆虫記の中で『オオヒョウタンゴミムシの”死んだ真似”』と題してとりあげています。

なぜ死んだふりをするのか、ファーブルは色々と条件を変えて観察しているのですが、結論としては、
これは”擬死”ではなく、キケンを感じたり、ショックを受けたことによって”気絶”しているのだそうです。

考えてみれば”擬死”でないことは自明ですね。

だって、ニンゲンと違って動物は”死ぬ”ということを知っているとは思えないから、その真似はできないわけです。

ところが、昨日、こんなことがありました。

朝起きて様子を見に飼育ケースを覗くと、オオヒョウタンが1匹、仰向けになって動かなくなっていたのです。

手に取ってみても固まったままなので、あぁ☆になってしまったと思い、昆虫館で展肢しようと持って行ったのです。

ところが・・

昆虫館に着いて、オオヒョウタンを入れた小さなケースをカバンから出してみてビックリ。

元気に動いていたのです。

もしそのまま気絶したままだったら針を刺してしまうところでした。

というわけで、死んだ真似をしたからといってキケンから遠ざかるとは限らない一例を実体験したのでした。
(体験したのはオオヒョウタン本人ですけどね)

どうして気絶していたのかは・・・悩ましい限りです。




(追記)

さらに観察していてわかったこと。

オオヒョウタンはケンカをします。そのときにアゴで相手のカラダを挟んで投げ飛ばします。

これはクワガタのオスの行動と似ていますので、前述の”違う目的”というのは正しくありませんでした。

さらに、投げ飛ばされた方は仰向けになってしまうことがあります。

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その際、気絶してしまうこともあるのです。(観察できたのは短い時間でしたが)

つまり、前述の死んだと勘違いした事例はケンカで負けた方だったと考えることが妥当ではないかと思います。

これはファーブル昆虫記にも書かれていないことですが、一考察として記載しておきます。




今日の湯加減

遠征から帰ってきた翌日は毎年恒例の「インセクトフェア」の開催日でした。
今年も会場は満員電車状態の大盛況でした。
いったいどこからこんなに虫屋が湧いてくるのかと思うほど。(実際全国から集まってくるのですが)
女性も結構いて若い方もちらほらと見かけました。
近い将来『虫ガール』という言葉が流行るといいなとひそかに願っています。
遠征の後半、山ステージについてはまた次回のお楽しみということにいたします。


↓昆虫館の在庫が少なくなりました

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リュカ

博物館実習のとき、黄色いケースを
トラップに仕掛けたんです。
黄色は関係なかったのかな(笑)
by リュカ (2015-09-26 23:00) 

ぐす

私もときどき死んだふりしてます(^^;)

松本では虫見かけた記憶が・・・というか眼を向ける暇ありませんでした。
by ぐす (2015-09-27 22:11) 

ぜふ

>リュカさん
黄色いケースには何が入っていたのでしょうか?
トラップとケースの関係も気になります^^;

>ぐすさん
松本市は広いので山、森、川もたくさんあります。
お越しの際はたまには町を離れてみてください^^
by ぜふ (2015-09-27 22:22) 

馬爺

我が家は東名高速の近くの山の麓ですが夏には毎晩カブトやクワガタを撮りに来る人が沢山来ておりますが地元の小学生が先に持って行ってしまいます。
by 馬爺 (2015-09-28 11:28) 

ねこじたん

たのしい遠征だったのですね♪
死んだフリできるって
なかなかやるな〜
by ねこじたん (2015-09-28 11:46) 

響

本当に知らないとクワガタムシと
勘違いしそうです。
指を挟ませるなんてドMですね(笑)
by (2015-09-28 15:16) 

mimimomo

おはようございます^^
カッコいい虫ですね^^ 最初はクワガタかと思いました。
気絶するなんて・・・何だか虫らしくない?^^
by mimimomo (2015-09-29 06:51) 

g_g

アッ、送信したつもりがしていなかったようです、時々これをやってしまう(-.-) オオヒョウタンゴミムシの生態面白いと思い乍ら読ませて貰いました、一枚目の写真を見てなんじゃこの虫は、と思ったが最後まで読んで納得、まだ出会ったことがないようです。
by g_g (2015-09-29 07:55) 

ぜふ

>馬爺さん
地元の小学生が先に採る。それでいいと思います。

>ねこじたんさん
大成功の遠征だったけど、少々疲れたのでしばらく死んだフリしようかな^^

>響さん
この指は自分の指ではないので、ドSです^^

>mimimomoさん
ゾウムシやエンマコガネなど、同様のことをする虫は他にもいます。
ニンゲンもたまには?^^

>g_gさん
昼間、目に見える場所にいることはまずないので、出会うことはないでしょう。
ヤマイモの本体と同じです。掘らないと見つけられません^^

by ぜふ (2015-09-29 23:04) 

sakamono

冒頭の写真が、オオヒョウタンゴミムシですか。このポーズで正面から
見ると、何がしかの怪獣のような迫力がありますね。
9/20、私も東名にのりましたが、ボチボチの渋滞でした^^;。
by sakamono (2015-10-03 09:08) 

ぜふ

>sakamonoさん
インパクトありますよね^^
東名はゲキ混みでした・・時間帯が違ったのでしょうね^^;
by ぜふ (2015-10-03 11:55) 

アヨアン・イゴカー

>アゴを大きく広げてカラダを反り返し、脚もそれぞれ力強く開いたポーズ。
クワガタではこのようなポーズ見たことがないですから、やはりクワガタではないのですね。
by アヨアン・イゴカー (2015-10-03 18:47) 

barbie

見かけもクワガタみたいだし、死んだ真似するなんてひょうきんですね。私なら間違いなくクワガタと騙されそうです(笑)
by barbie (2015-10-06 07:51) 

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