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カワトンボ 2014 後編 [トンボ]
諸説あった日本におけるカワトンボ科カワトンボ属は、2004年にDNA解析により分類が2種に改められました。
その後、この分類における学名と和名が整理され、種名はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボとされました。
(日本蜻蛉学会和名検討委員会, 2007)
2004年以前とはどのように変わったか興味のある方は、昨年の記事を参照してください。
ちなみに前記事で紹介した、ミヤマカワトンボはカワトンボ科ではありますが、アオハダトンボ属です。
(オスの胴体の色が属名に表されているということですね)
この2種(ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボ)の分布についても昨年の記事に書きましたが、
ニホンカワトンボは主に関東以北、アサヒナカワトンボは主に関東以西に生息しており、
つまり、関東では2種類が混生している場所もあるということ。
ただし、それは限定された地域であり、チバでは南房総エリアで混生しているという話がありますが、
千葉県中部で混生しているという話にはまだ接していないのです。
でも、HFでは混生しているのではないかと一昨年あたりから疑っています。
ところでそもそも、この2種を見分けるのは簡単ではありません。
手元の図鑑やトンボ関連書籍に書いてあることを概括すると、見分けるポイントは、
胸の高さ・・・N:頭の幅より大きい、A:頭の幅とほぼ同じ
翅の先端・・・N:やや流線型、A:丸い
縁紋の形・・・N:比較的細長い、A:比較的太短い
(N:ニホンカワ、A:アサヒナカワ)
ということです。
また、標本で比較されているHPがありました。 「日本産トンボ標本箱」
このHPの図3、図4を見ると縁紋の違いがよく分かります。
さあ、では扉の写真の子にもう一度登場してもらいましょう。
N/Aのどちらだと思いますか? (ちなみにこれはメスです)
縁紋の部分を拡大してみましょう。
縁紋はやや丸っこく、翅の先端の形も丸っこいですね。
頭と胸は・・
真横からではないのでわかりにくいですが、ほぼ同じくらいのように見えます。
では、同じ日に同じ場所で撮影した別の個体(メス)を見てください。
体色は無視してください。翅と縁紋、頭と胸の大きさを見てくださいね。
拡大してみましょう。 (上の写真と比較しやすいように左右反転させて比べます)
明らかに形が違い、位置も違うことが分かると思います。
頭と胸は・・
頭の大きさが同じだとすると、個体(ア)と(イ)は胸の高さが違うように見えますね。
ところで、最近、こういうレポートを見つけました。
- 以下引用 -
静岡県伊豆半島から神奈川県および山梨県南東部にかけて、この地域に固有の塩基配列をもつ個体群(伊豆個体群)が見いだされた。
伊豆半島を中心とするこの地域では、調査したITS1領域223塩基対のうち132番目と156番目に変異があり、そこがTAとなっているものがニホンカワトンボ、CAとなっているものがアサヒナカワトンボ、TGとなっているものが伊豆個体群であった。
(中略)一方、オス成虫の外部形態(頭幅、前翅長、縁紋長、縁紋幅)に関しては、伊豆個体群はニホンカワトンボとは異なるが、アサヒナカワトンボとは区別できないとされている。
(中略)幼虫の側尾鰓の形態に関しては、伊豆個体群はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボの中間的形態を示し、かつ変異幅が大きい傾向がある。そのため、伊豆個体群は、2種の交雑個体に由来する個体群である可能性が指摘されている。(後略)
~ 「神奈川県を中心としたカワトンボ属の分布」 (苅部治紀・守屋博文・林文男 ,2010) ~
- 引用おわり -
種としてはまだ認められていないようですが、カワトンボ属には、伊豆個体群というものがいるようです。
また、NとAは交雑する可能性が高いようです。
混生していないと自然交雑はできないので、個人的な見解として、このフィールドでは混生している。
つまり個体(ア)はアサヒナカワトンボ(もしくはニホンカワトンボとの交雑個体)なのではないかと考えます。
カタイ話はこれくらいにして、カワトンボたちをゆっくりご覧ください。
↑このオスは前縁部に明るい色の細長い斑紋があるタイプで、以前はオオカワトンボと呼ばれていました。
フィールドをあとにしようと、用水路で長靴の泥を落としていると、目の前にもう一種のカワトンボの仲間が。
いつかアオハダトンボ属の特集もできたらいいなと思います。
今日の湯加減
その後、この分類における学名と和名が整理され、種名はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボとされました。
(日本蜻蛉学会和名検討委員会, 2007)
2004年以前とはどのように変わったか興味のある方は、昨年の記事を参照してください。
見つめる先は・・
ちなみに前記事で紹介した、ミヤマカワトンボはカワトンボ科ではありますが、アオハダトンボ属です。
(オスの胴体の色が属名に表されているということですね)
この2種(ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボ)の分布についても昨年の記事に書きましたが、
ニホンカワトンボは主に関東以北、アサヒナカワトンボは主に関東以西に生息しており、
つまり、関東では2種類が混生している場所もあるということ。
ただし、それは限定された地域であり、チバでは南房総エリアで混生しているという話がありますが、
千葉県中部で混生しているという話にはまだ接していないのです。
でも、HFでは混生しているのではないかと一昨年あたりから疑っています。
ところでそもそも、この2種を見分けるのは簡単ではありません。
手元の図鑑やトンボ関連書籍に書いてあることを概括すると、見分けるポイントは、
胸の高さ・・・N:頭の幅より大きい、A:頭の幅とほぼ同じ
翅の先端・・・N:やや流線型、A:丸い
縁紋の形・・・N:比較的細長い、A:比較的太短い
(N:ニホンカワ、A:アサヒナカワ)
ということです。
また、標本で比較されているHPがありました。 「日本産トンボ標本箱」
このHPの図3、図4を見ると縁紋の違いがよく分かります。
さあ、では扉の写真の子にもう一度登場してもらいましょう。
N/Aのどちらだと思いますか? (ちなみにこれはメスです)
縁紋の部分を拡大してみましょう。
個体(ア)
縁紋はやや丸っこく、翅の先端の形も丸っこいですね。
頭と胸は・・
真横からではないのでわかりにくいですが、ほぼ同じくらいのように見えます。
では、同じ日に同じ場所で撮影した別の個体(メス)を見てください。
個体(イ)
体色は無視してください。翅と縁紋、頭と胸の大きさを見てくださいね。
拡大してみましょう。 (上の写真と比較しやすいように左右反転させて比べます)
明らかに形が違い、位置も違うことが分かると思います。
頭と胸は・・
頭の大きさが同じだとすると、個体(ア)と(イ)は胸の高さが違うように見えますね。
ところで、最近、こういうレポートを見つけました。
- 以下引用 -
静岡県伊豆半島から神奈川県および山梨県南東部にかけて、この地域に固有の塩基配列をもつ個体群(伊豆個体群)が見いだされた。
伊豆半島を中心とするこの地域では、調査したITS1領域223塩基対のうち132番目と156番目に変異があり、そこがTAとなっているものがニホンカワトンボ、CAとなっているものがアサヒナカワトンボ、TGとなっているものが伊豆個体群であった。
(中略)一方、オス成虫の外部形態(頭幅、前翅長、縁紋長、縁紋幅)に関しては、伊豆個体群はニホンカワトンボとは異なるが、アサヒナカワトンボとは区別できないとされている。
(中略)幼虫の側尾鰓の形態に関しては、伊豆個体群はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボの中間的形態を示し、かつ変異幅が大きい傾向がある。そのため、伊豆個体群は、2種の交雑個体に由来する個体群である可能性が指摘されている。(後略)
~ 「神奈川県を中心としたカワトンボ属の分布」 (苅部治紀・守屋博文・林文男 ,2010) ~
- 引用おわり -
種としてはまだ認められていないようですが、カワトンボ属には、伊豆個体群というものがいるようです。
また、NとAは交雑する可能性が高いようです。
混生していないと自然交雑はできないので、個人的な見解として、このフィールドでは混生している。
つまり個体(ア)はアサヒナカワトンボ(もしくはニホンカワトンボとの交雑個体)なのではないかと考えます。
カタイ話はこれくらいにして、カワトンボたちをゆっくりご覧ください。
ニホンカワトンボ ♂ 透明翅型 (カワトンボ科)
ニホンカワトンボ ♂ 橙色翅型 (カワトンボ科)
ニホンカワトンボ ペア (カワトンボ科)
↑このオスは前縁部に明るい色の細長い斑紋があるタイプで、以前はオオカワトンボと呼ばれていました。
オマケ
フィールドをあとにしようと、用水路で長靴の泥を落としていると、目の前にもう一種のカワトンボの仲間が。
ハグロトンボ ♂ (カワトンボ科)
いつかアオハダトンボ属の特集もできたらいいなと思います。
今日の湯加減
チバのゼフシーズンが通り過ぎようとしています。
今日も天気予報がはずれれば出かけるつもりだったのですが、あいにく予報通りとなってしまいました。
ブログ日和につき、一日引きこもってこれを書いているのですが、久しぶりにゆっくり寛げています。
どうやら今シーズンは不完全燃焼のままで終わりそうです。
ところでブログを書いていたら、棚の上で”ブーン”という羽音がしました。
オオクワははばたかないし、オサムシマンションの住人たちはそもそも翅がありません。
何かなと思って各コーナーをチェックしていると、新人たちがデビューしていました。
3月の記事で紹介した幼虫たちが羽化したのです。
ということは、甲虫シーズンの到来ということです。
忙しくなります。。
シロテンハナムグリ (コガネムシ科)
"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。
おはようございます^^
やはり細かい違いを見分けるのは難しいし、第一わたくしのは覚えられないわ(><;
細いのは何でも糸トンボだと思っているわたくし(--ゞ
by mimimomo (2014-06-29 06:57)
むむむ。。。難しい(笑)
胸の高さが違うっていうのは、何となく分かりました!
ハグロトンボは、羽が真っ黒なのですか?
迫力ありますね(@@
by リュカ (2014-06-29 10:34)
やはりトンボの見分けは難しい(>_<)
by sasasa (2014-06-29 18:36)
本日から復帰しました。宜しく。
by Silvermac (2014-06-30 06:02)
とまっているところを見て、見分けるには相当な年季がいる感じがします ^^;
学問的にはとても興味深い研究対象なんですね。
交配したものとか、別種? 伊豆にも固有種がいるのかもしれないし・・・。
でも、カワトンボ、姿、美しいですよね。見ているだけでもいいかな? ^^
by moz (2014-06-30 06:02)
>mimimomoさん
イトトンボを見つけられるだけでもすばらしいことだと思いますよ♪^^
>リュカさん
そこがわかっていただけるととてもうれしい^^
ハグロトンボは”羽黒蜻蛉”・・名前のまんまです^^;
接写してますから(ノートリミング)大きく見えるだけです。
>さささん
捕まえないとむずかしいですが、捕まえても分からないものもいますね^^;
>Silvermacさん
ムリされないように。ご自愛ください。
>mozさん
どんな昆虫でも調べ始めると奥が深くて気が遠くなりますが面白いです^^
そちらの地域にも地域変異種がいる可能性ありますよ♪
by ぜふ (2014-07-02 07:16)
DNA解析の技術が進んで、植物も昆虫も、分類が大きく変化して行きますね。
家のフヨウも葉が茂って来ましたが、例年通りフタトガリアオイガの幼虫にに食い荒らされ始めました。この蛾もまた、一昨年くらい前までは、フタトガリコヤガだった訳ですが。
尤も、これはDNA解析なのかどうか分かりませんが…
by albireo (2014-07-03 22:21)